日本造船は汎用船の量産競争を避け、アンモニア燃料船をはじめとするゼロエミッション船の建造技術で世界を主導し、2035年に建造能力を倍増させて造船業の役割を再確立すべきである。
アンモニア燃料船をはじめとしたゼロエミッション船等の次世代船舶建造技術で世界を主導。次世代船舶に係る技術を梃子に、我が国において造船業の役割を確立。主な課題はゼロエミッション化による大幅なコスト上昇・複雑で工数増・高技能設計者技能者・長期間多額の設備投資。講じるべき施策は生産体制整備支援、IMOにおける国際ルール策定の主導、技術開発実証支援、導入支援、AI活用の次世代型造船ロボット研究開発支援。
政府の目標・KPI
- 2035年に建造需要の6割程度に拡大すると見込まれるゼロエミッション船等の次世代船舶
- 我が国において1,800万総トン(市場規模約5兆円)を建造(2035年)※2024年比倍増
注目の投資機会(可能性 高)
- ゼロエミッション船の建造
- 次世代燃料エンジン・舶用機器
- 造船DX・建造ロボット
見落としやすいリスク・盲点
ゼロエミッション船と船舶修繕が、次世代造船の投資テーマとして浮上する。
本分野でいま開かれている投資機会を、機会の大きさ(可能性)と実証の確からしさ(確度)の2軸で位置づける。右上=大きく確実なほど優先度が高い。下図に代表テーマを配置し、続けて要点と全テーマを示す。
- 1ゼロエミッション船の建造近
- 2次世代燃料エンジン・舶用機器近
- 3造船DX・建造ロボット近
- 4自律運航船(MASS)遠
- 5風力アシスト推進・省エネ装置近
- ゼロエミッション船の建造(H1-H2(2025-2035)):高付加価値船の設計・建造。代替燃料対応のドック・タンク・燃料供給システム。日本は省エネ設計で優位の余地。
- 次世代燃料エンジン・舶用機器(H1-H2):舶用エンジン(二元燃料)・燃料供給装置・排ガス処理・安全システム。日本のエンジン・機器メーカーに強み。
- 造船DX・建造ロボット(H1-H2):溶接・塗装ロボット・自動化ライン・3D設計/生産管理システム・デジタルツイン。技能者不足を補う中核。
全テーマの根拠・確度・射程・学術接地を開く代表5件+全10件
投資機会テーマの全体(10件・一覧)
本一覧はC章の技術ロードマップ(ゼロエミ船・次世代燃料・自律運航・造船DX・風力推進)と日本の海事クラスタの強み(設計・舶用エンジン・機器)に接地して導出。代表例は射程・確度で抜粋。
世界建造量の約95%を中韓日が占めるなか、日本は受注シェア約13%への低下を次世代船舶で巻き返そうとする。
造船は実在する大きな市場を持ち、新造船の建造は中国・韓国・日本に約95%が集中する。2024年の世界建造量約7,169万総トンのうち中国が54.6%を占め、日本は受注ベースで約13%とシェアを大きく落としている。量産で劣勢に立つ日本は、どこで収益を確保しシェアを回復できるのか。代替燃料船の受注が2025年上半期に約1,980万総トンへ伸びるなか、日本は2035年に1,800万総トン・市場規模約5兆円の次世代船舶建造で巻き返しを図る。
市場データ・図表の詳細を開くSECTION F
造船は実在する大きな市場を持つが、新造船の建造は中国・韓国・日本に約95%が集中する。2024年の世界建造量は約7,169万総トンで、中国が約3,910万総トン(54.6%)・韓国が約2,010万総トン・日本は受注ベースで約838万CGT(約13%)。日本のシェアは大きく低下しており、政府は次世代船舶で巻き返しを図る。ここでは①世界の建造量シェア ②次世代(代替燃料)船の受注の伸び ③日本の政府目標(2035年 1,800万総トン・市場5兆円)と支援 を分けて示す。市場・シェアは二次情報、日本の目標・基金は一次情報(国土交通省)。
世界の新造船 建造量・シェア ※一次情報(UNCTAD 建造量・総トン)
日本の政府目標・公的支援(造船再生)※一次情報
産業インテリジェンス — 20カテゴリの実データIIDB 識別子接続
産業インテリジェンスDB の「造船・船舶修繕」・「低排出船舶推進・代替燃料船」から、市場規模・産業構造・Porter 5 Forces・利益プール・人材・規制など 20 カテゴリの実データを引いた。全 659 件のうち出典の生存が確認できているのは 593 件。★接続は1業種が産業IDによる識別子照合、1業種はこちらで中身を読んで割り当てたもの(識別子照合ではない)。★検証状態は接続元の値をそのまま表示している(こちらで格上げしていない)。
M&A・資本提携・再編23件
PESTLE マクロ環境34件
Porter 5 Forces25件
エコシステム指標46件
バリューチェーン構造45件
人材・労働市場・スキル29件
価値移行・BMの変化36件
利益プール分析22件
市場規模・成長39件
技術ロードマップ・破壊的脅威19件
政策・予算・産業戦略28件
未来洞察・シナリオ28件
注目シグナル・弱信号37件
産業構造・集中度32件
産業連関・経済波及37件
研究・知識基盤39件
競合プレイヤー・シェア34件
規制・法制度30件
財務・収益性ベンチマーク38件
顧客セグメント・需要ドライバー38件
産業テーマ 深掘り — 有識者・現状診断・各国動向ITT 統制語彙接続
産業テーマDB から、この分野の有識者・現状診断・産業議論・事例・各国動向・未来洞察と、国際機関や省庁の権威レポートを引いた。★この接続は統制された語彙(産業のL1名・レポート系統コード)によるもので、産業IDでは結べない(接続先のIDは別の産業を指す)。
事例10件
各国動向9件
有識者10件
未来洞察10件
現状診断10件
産業議論11件
権威レポート20件
★20 件のうち所見を抽出済みなのは 1 件。残りは題名と出典のみで、本文の所見はまだ取り出していない。★「所見が無い」ではなく「未抽出」である。
掲載企業の研究領域 — 全社ベースCLR 法人番号接続
上の企業一覧に載る上場企業について、有価証券報告書の研究開発活動から抽出した全社の研究領域を引いた。★これは会社全体の研究であって、本分野に限った研究ではない。(例: 造船の企業でも、水素ガスタービンや原子炉が並ぶ。本分野の研究と読み替えないこと。)★法人番号での接続だが、その法人番号自体は社名の一致で当てたものであり、同定の強さは社名一致に留まる。
三菱重工業6件
2026年から2055年の三期を通じて、基金立ち上げから次世代船舶市場の獲得、海事産業群の自律性確立へと段階的に進む。RMP 技術ロードマップDB 接地
中長期的に海上輸送量が増加し、アンモニア・水素燃料で走るゼロエミッション船など次世代船舶の建造需要が拡大する見込みである。一方で大幅なコスト上昇・工数増・高技能設計者の不足・長期間多額の設備投資が立ちはだかる。この機会を、いつ・どの順序で日本は捉えられるのか。2026年から2029年の基金立ち上げと体制整備、2030年から2036年の次世代船舶市場の獲得、2037年から2055年の海事産業群の自律性確立へと段階的に進む射程が描かれる。
- 12026造船施設等の拡充・刷新 フェーズ1 着手(自動化・省力化設備が中心)
- 22026AI・ヒューマノイドロボット技術開発およびグループ体制の検討に着手
- 32026LNG運搬船のサプライチェーンにおける将来のコミットメントの在り方に
- 42026LNG燃料船のメタンスリップ削減率 60%以上を実現
- 52027育成就労制度の運用開始(造船分野の外国人材受入れ)
- 62028アンモニア燃料船の商業運航をできるだけ早期に実現
- 72028フェーズ1 完了(2026〜2028)
- 82029造船施設等の拡充・刷新 フェーズ2 着手(施設の新設・拡大)
- 92030水素燃料船の実証運航を完了
- 102030AIを活用した次世代型造船ロボットの研究開発(150億円)
- 112030国際海運の CO2 排出原単位を 2008年比で少なくとも 40%
- 122030ゼロ/ニアゼロ GHG 技術・燃料が国際海運のエネルギーの少なくとも
- 132031フェーズ2 完了(2029〜2031)
- 142032造船施設等の拡充・刷新 フェーズ3 着手(増強したドック・クレーンの
- 152034フェーズ3 完了(2032〜2034)
- 162035建造量 1,800万総トン(日本船主の船舶建造需要予測量)に対応する
- 172040国際海運の総 GHG 排出量を 2008年比で少なくとも 70%(s
- 182050国際海運の GHG 排出を 2050年頃までにネットゼロへ
全マイルストーンの一覧(TRL遷移・反証条件・一次出典)を開く22件
| 射程 | 実現年 | TRL | マイルストーン |
|---|---|---|---|
| 近(〜3年) | 2026 | 造船施設等の拡充・刷新 フェーズ1 着手(自動化・省力化設備が中心)。造船業再生基金 1,200億円 出典 | |
| 近(〜3年) | 2026 | AI・ヒューマノイドロボット技術開発およびグループ体制の検討に着手 出典 | |
| 近(〜3年) | 2026 | LNG運搬船のサプライチェーンにおける将来のコミットメントの在り方について結論(令和8年春頃目途) 出典 | |
| 近(〜3年) | 2026 | LNG燃料船のメタンスリップ削減率 60%以上を実現 出典 | |
| 近(〜3年) | 2027 | 育成就労制度の運用開始(造船分野の外国人材受入れ) 出典 | |
| 近(〜3年) | 2028 | アンモニア燃料船の商業運航をできるだけ早期に実現 出典 | |
| 近(〜3年) | 2028 | フェーズ1 完了(2026〜2028) 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2029 | 造船施設等の拡充・刷新 フェーズ2 着手(施設の新設・拡大) 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2030 | 水素燃料船の実証運航を完了 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2030 | AIを活用した次世代型造船ロボットの研究開発(150億円) 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2030 | 国際海運の CO2 排出原単位を 2008年比で少なくとも 40% 削減反証条件: IMO の指標的チェックポイント。総排出量ベースでは 2008年比 少なくとも20%(striving for 30%)削減 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2030 | ゼロ/ニアゼロ GHG 技術・燃料が国際海運のエネルギーの少なくとも 5%(striving for 10%)を占める 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2031 | フェーズ2 完了(2029〜2031) 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2032 | 造船施設等の拡充・刷新 フェーズ3 着手(増強したドック・クレーンの稼働) 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2034 | フェーズ3 完了(2032〜2034) 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2035 | 建造量 1,800万総トン(日本船主の船舶建造需要予測量)に対応する国内建造能力を確保反証条件: 2024年の建造量は900万総トン・建造能力は907万総トン。約2倍への到達可否が反証点 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2035 | ゼロエミッション船など次世代船舶の建造技術で世界を主導し、国際社会における我が国造船業の役割を確立 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2035 | 官民で1兆円規模の投資を実現 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2035 | 国内建造を主要1〜3グループ体制へ集約し、次世代船舶の設計体制を集約化 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2035 | 建造能力 約50%向上・生産性 約25%向上・コスト 10%削減 出典 | |
| 遠(10〜30年) | 2040 | 国際海運の総 GHG 排出量を 2008年比で少なくとも 70%(striving for 80%)削減反証条件: IMO の指標的チェックポイントであり義務ではない 出典 | |
| 遠(10〜30年) | 2050 | 国際海運の GHG 排出を 2050年頃までにネットゼロへ反証条件: 原文は by or around, i.e. close to, 2050 であり期限を断定していない 出典 |
予測の本文一覧(機関・目標年・出典)を開く14件
- MIT Technology Review〔2026年〕 1.0ranking:MIT Technology Review identifies additive manufacturing in top 10 breakthrough technologies by 2026 出典
- IEEE〔2026年〕 95.0%:Hydrogen safety standards (ISO/IEC) will achieve 95%+ compliance by 2026 出典
- EU European Commission〔2026年〕 100.0%:EU will ban single-use plastics in maritime operations by 2026 per directive 出典
- Gartner Hype Cycle〔2027年〕 62.0%:Adoption of in-situ quality monitoring in AM reaches 62% of industrial facilities by 2027 出典
- Gartner Hype Cycle〔2027年〕 18.0vendors:Gartner Magic Quadrant positions 18 vendors as Leaders in AM/3D printing by 2027 出典
- Forrester〔2027年〕 68.0%:Industry 4.0 MES (Manufacturing Execution System) adoption in developed markets reaches 68% by 2027 出典
- 文部科学省 (MEXT)〔2027年〕 180.0$B:Japan's MEXT allocates 180 billion yen annually for advanced manufacturing R&D by 2027 出典
- DARPA / DOE (US)〔2027年〕 1200.0$M:US DARPA and DOE funding for additive manufacturing reaches $1.2 billion annually by 2027 出典
- EU European Commission〔2027年〕 1.0%:EU regulations requiring traceability and sustainability reporting in manufacturing finalized by 2027 出典
- NEDO〔2027年〕 35.0$B:NEDO (Japan) advances nano-manufacturing capabilities with 35 billion yen investment by 2027 出典
- EU European Commission〔2027年〕 90.0%:International submarine cable installations will require environmental impact assessments by law in 90% of cases by 2027 出典
- IMO〔2027年〕 100.0%:Noise pollution standards for maritime shipping will be mandated internationally by 2027 出典
各盲点の根拠・反証基準・出典を開く12件
- 重大ロボット協働化で労働安全性が未検証:協働ロボットは『安全』と謳うが、実装現場では不具合時の予期しない動作で軽傷事故が多発。ISO/TS 15066の速度制限が守られない工場が40%超。反証基準: 協働ロボット導入後12ヶ月の労働災害件数が導入前同期比で増加しないことを統計実証 出典
- 重大粉末AM環境汚染:吸入粒子の長期健康影響未評価:EOS粉末工場では作業者が微粉を吸入。5~10μm粒子の肺沈着メカニズム未解明。労働環境基準が各国でばらばらで、WHO/ILO勧告なし。反証基準: AM粉末作業者の10年追跡調査で肺機能低下が非曝露者と同等であることを統計実証 出典
- 重大AM造形品の内部欠陥検査技術が検出率不十分:X線CT、超音波検査は2mm以下の孔隙検出が困難。金属AM部品で1mm未満欠陥見逃しが多発。100%品質保証は現技術では不可能。反証基準: AM造形品内部の0.5mm以下欠陥を検査技術で90%以上検出することを実装例で実証 出典
- 重大バイオプリント(バイオインク)の市販製品が治療効果未実証:Organovo, L&W Biotech等のバイオプリント製品は動物実験段階。ヒト臨床試験での安全性・有効性データなし。FDA認可パス不明確。反証基準: バイオプリント医療製品がFDA/PMDA承認を取得し、市販されること 出典
- 重大医療用骨AM製品の生体適合性が単体試験のみ:Zimmer Biomet, Stratasys Medical の骨代替物は材料単体でのBiocompatibility試験実施。実装後の感染・拒絶反応リスク評価が不十分。反証基準: AM骨製品の臨床試験で10年以上の長期安全性データが公開されること 出典
- 重大金属AM信頼性未成熟:航空宇宙部品での金属3D印刷品は内部欠陥(気孔、層状分離)が多く、疲労寿命予測が困難。NDT検査技術も確立されていない。量産化の信頼性基準が未達成。反証基準: 金属AM部品が従来鋳造品と同一の疲労寿命を持つことを統計的に証明可能か 出典
- 重大デジタルファクトリーセキュリティ脆弱:IoT/クラウド接続されたAM装置はサイバー攻撃に脆弱。設計データ盗難、無許可改造、生産停止のリスク。セキュリティ標準が産業ごとに異なり、統一基準なし。反証基準: AM装置のセキュリティ侵害が報告される確率が年1%未満になるか 出典
- 重大在家AM装置の品質管理破綻:医療(人工関節、歯科補綴物)や銃部品など、規制が緩い領域での在宅3D印刷。品質保証なしに身体埋植物や武器が製造され、医療事故と犯罪のリスク増加。反証基準: 無許可3D印刷医療機器の感染症・不具合報告がゼロに達するか 出典
- 重大サプライチェーン分散化の脅威:AM により製造分散化進行時、品質管理・知財保護が困難化。DfAM設計ファイルの盗難、無許可複製、偽造品流通のリスク増。国家規制の空白地帯形成。反証基準: 3D印刷製品の偽造品・不正複製を法執行で0%に削減できるか 出典
- 重大軍事転用・デュアルユース懸念:民間AM技術の軍事兵器化(無人機、小型爆発物、銃部品)への転用が容易。エクスポートコントロール・検査体制が整備途上で、規制回避がほぼ可能。反証基準: AM 設計ファイルの軍事転用を技術的・法的に完全に阻止できるか 出典
造船は大企業と中小が結ぶ海事産業群が主役であり、単独企業でなく産業クラスター全体での技術革新が問われる。JPS 国内スタートアップDB 接地
国内スタートアップ正本(法人番号主キー)から、大学発・具体技術・資金調達をシグナルに非自明性スコアで選別した(著名な大手は減点し、見落とされがちな深い技術を前面に)。各社の中核技術・大学/研究室・直近調達(額・リード投資家)・上場状況を実データで示す。
IMOとEUの脱炭素規制が次世代船舶の需要を前倒しし、規制対応とルール策定の主導が投資判断の起点となる。
国際海運の脱炭素は、IMOの2023年GHG削減戦略で2050年頃のネットゼロが掲げられた。IMOのネットゼロ・フレームワークやEEXI・CII、EUのEU ETS・FuelEU Maritimeが相次いで運用され、脱炭素船への切り替え圧力が強まっている。これらの規制は日本造船にとって脅威なのか機会なのか。規制が次世代船舶の需要を前倒しするため、IMOでの国際ルール策定を主導できるかが投資判断の分かれ目となる。
規制ロードマップの全項目を開く7件
海上技術安全研究所を中核に、阪大・東大などの船舶海洋工学が脱炭素と自律運航の技術基盤を支える。RID 研究者DB(正規)接地
研究者正本(RID / 31.1万人版・本体23.5万人はKAKEN照合)から本分野の研究テーマに語の一致で抽出した日本人研究者を h-index 順に掲載する(国際研究者は除外)。★抽出は語の一致であって、この分野の研究者であることの同定ではない。★件数は全17領域で300名に固定されており、適合の閾値ではなく定員である。 ★無作為標本 30 名(乱数種 20260831・判定基準を抽出前に固定)で構成を実測した。判定基準は「ゼロエミッション船建造に直接資する研究か(海事全般と区別する)」。広義(造船・海事・海運・海洋工学・舶用・操船・海事法制)では無関係 0/30。狭義(ゼロエミ船建造)で明確に遠いものが 3/30 = 10%(95%CI 3.5-25.6%)。ゼロエミ系の語を持つのは 300 件中 11 件(3.7%)。判定は Claude(単独判定・二重判定なし)。
- 宮田 秀明h-index 5研究者詳細ページ ▸研究テーマ:船舶燃費最適化と海上物流の効率化宮田秀明氏の研究は、海上物流の変化に対応し効率的に貨物を運ぶ方法を探るものです。コンテナの動きを細かくシミュレーションし物流の流れを合理的に見直す技術を開発しています。また、船の燃料消費を実際の波や風の影響も考慮して最適化し、船の寿命全体での燃費を良くする設計方法を研究しています。さらに、海の環境問題にも取り組み、海に溶ける二酸化炭素の動きを詳しく調べて環境
- 梅田 直哉h-index 4研究者詳細ページ ▸研究テーマ:船舶転覆リスク評価と自動運航安全の革新梅田直哉氏の研究は、船が波の中で転覆するリスクを数学モデルと実験で科学的に計算し、安全な航行基準の策定を目指しています。自動運航技術と人の操船の違いも調べ、省エネルギーと安全性を両立させる船の性能評価法も開発。さらに、船の騒音が海の動物に与える影響も調査し、船の安全性向上と環境保護を両立させる研究です。
- 大久保 雅章h-index 3研究者詳細ページ ▸研究テーマ:プラズマ技術で実現する船舶排ガスの完全浄化大久保雅章教授の研究は、船舶のディーゼルエンジンから出る有害なガス(窒素酸化物や硫黄酸化物、微粒子)を、特殊なプラズマを使って効率よく取り除く技術の開発に取り組んでいます。従来の方法では、硫黄が触媒を壊してしまう問題がありましたが、この研究では触媒を使わずにプラズマの力で複数の有害物質を同時に処理します。また、排出される二酸化炭素を燃料に変える技術も研究して
- 北原 辰巳h-index 3研究者詳細ページ ▸研究テーマ:船舶用燃料電池の耐久性向上と異常診断技術の開発北原辰巳准教授の研究は、船で使う燃料電池の性能を高め、安全に長く使えるようにすることに焦点を当てています。燃料電池は水素を燃料にして発電し、排出物は水だけなので環境に優しいですが、船の運転環境では水の管理や塩水の混入で性能が落ちやすい問題があります。そこで、水の流れを調整する材料設計や故障を早く見つける技術を開発しています。さらに、別のタイプの燃料電池の新し
- 谷口 智之h-index 2研究者詳細ページ ▸研究テーマ:機械学習で造船組立手順の効率化を目指す谷口智之氏の研究は、造船業での製品の組み立て方をコンピューターの学習技術(機械学習)で自動的に決める方法の開発に取り組んでいます。これにより、今まで人の経験に頼っていた作業を効率化し、製品の作り方を早く正確に決められるようにします。また、船の中で起こる振動や騒音を減らすために、周りのエネルギーを使って自分で電気を作りながら振動を抑える装置(自己給電型動吸振器
- 小林 寛h-index 2研究者詳細ページ ▸研究テーマ:港湾内の船舶運動を予測する安全航行技術小林寛氏の研究は、港湾や水路内での船舶の動きを、風や波、潮の流れなどの自然の影響を正確に再現するコンピューターシミュレーション技術の開発に取り組んでいます。特に、水中の流れと空気の流れを別々に計算し、それらの力を合わせて船の動きを予測する方法を確立しました。また、船の推進に使われるプロペラ周りの複雑な流れも高精度に解析し、効率や安全性の向上を目指しています。
- 西川 栄一h-index 2研究者詳細ページ ▸研究テーマ:船舶工学で挑む安全と振動制御の革新西川栄一氏の研究は、船のエンジンから出る熱を再利用する装置で起こる「スートファイア」という事故の原因を調べ、安全に使う方法を見つけることに力を入れています。また、船の後ろにあるプロペラの周りで起こる気泡(キャビテーション)や空気が混ざる現象(空気吸込み)が船の振動や騒音にどう影響するかを実際の船で調べています。これらの研究は、船をより安全で環境にやさしく動か
- 林田 和宏h-index 2研究者詳細ページ ▸研究テーマ:ナノ構造解析で挑む船舶排ガス浄化林田和宏教授は、船舶のディーゼルエンジンから出るすす粒子(小さな黒い粒)が環境や健康に与える影響を減らすため、その粒子の性質やでき方を詳しく調べています。特に、水素を混ぜて燃やす方法や燃料に含まれる硫黄の量が、すす粒子の大きさや内部の細かい構造(ナノ構造)にどう影響するかを研究しています。レーザーを使った特殊な測定方法で、火の中でのすす粒子の成長や変化を観察
- 福地 信義h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:金属ヒューム解析で造船労働環境の安全改善福地信義氏の研究は、造船工場で発生する微細な金属粒子(ヒューム)が工場内の空気を汚染し、労働者の健康に悪影響を与える問題に取り組んでいます。粒子の動きを実験と計算で調べ、効率的な換気システムの設計を目指します。暑い環境での作業による熱中症リスクも評価し、対策を検討しています。さらに、船舶の運航中に起こる人のミスを防ぐため、心理や行動を分析し安全なシステム設計
- 柿野 欽吾研究者詳細ページ ▸研究テーマ:中小企業経営と造船業の再生戦略柿野欽吾氏の研究は、日本の造船業の中でも特に小さな会社がどのように変わってきたかを調べています。戦後、日本の造船業は世界一になりましたが、1970年代の石油ショックや海外の競争で苦しくなりました。大きな会社は合併や新しい事業で生き残りましたが、小さな会社はお金が足りなかったり、漁船の注文が減ったりして経営が難しくなりました。この研究は、そうした小さな造船会社
- 加藤 寛之研究者詳細ページ ▸研究テーマ:造船産業の競争戦略で伝統産業再生を目指す加藤寛之教授は、長い歴史を持つ造船産業を研究し、これまでの産業の成長や衰退を説明する理論が今の状況に合わなくなっている問題に取り組んでいます。特に、日本、韓国、中国の造船会社がどのように競争し、成長しているかを調べています。教授は、会社の戦い方や人の使い方、部品を作る仕組みの変化などを詳しく分析し、伝統的な産業が新しい時代でも強く生き残る方法を探しています。
- 大和 裕幸研究者詳細ページ ▸研究テーマ:情報技術で支える造船設計と歴史資料活用大和裕幸氏の研究は、歴史資料や造船設計に関する情報をコンピューターで整理し、誰でも使いやすい形にすることを目指しています。特に「意味を持つウェブ技術」を使い、資料や設計の情報に意味を持たせて、複数の人が同時に調べたり比べたりできるようにしています。造船設計では、設計の手順や知識をコンピューターに記録し、新人でもベテランと同じように設計できるように支援していま
- 田中 太氏研究者詳細ページ ▸研究テーマ:AI技術で造船作業の安全と効率を改善田中太氏の研究は、造船所の作業を安全かつ効率的にするために、AIの一種であるディープラーニングを使い、作業の様子を自動で認識する技術を開発しています。これにより、経験に頼っていた作業の進み具合や安全状態をカメラ映像から正確に数字で把握できます。また、作業者が歩く場所の床の形や間隔が安全に歩けるかを調べ、転倒事故を減らす方法も研究しています。これらの技術は造船
- 出口 晶子研究者詳細ページ ▸研究テーマ:木造船文化と伝統技術継承で地域活性化を目指す出口晶子氏の研究は、日本の伝統的な木で作られた船(木造船)と、それを作る職人(船大工)の技術を守りながら、地域の祭りや船の遊覧を通じて地域を元気にすることを目指しています。全国の船祭りや船遊覧の情報を集めて整理し、地域の文化を詳しく調べています。特に、職人の高齢化で技術が失われそうな問題に注目し、どうすれば伝統を続けられるかを考えています。地域の人たちが参加
- 奥本 泰久研究者詳細ページ ▸研究テーマ:造船のデジタル化で安全と効率を実現奥本泰久氏の研究は、船を作る工場の仕事をコンピューターで管理し、効率よく安全に進める方法を探るものです。3Dの設計図や身につけるコンピューター、タグを使った情報管理などを使い、作業の流れをシミュレーションします。溶接で起こる金属の変形を予測し、正確に組み立てる技術も研究しています。さらに、作業者の体にかかる負担を調べて、働きやすい環境づくりも目指しています。
- 山田 綾乃研究者詳細ページ ▸研究テーマ:古代エジプトの木造船技術と葬祭儀礼の復元研究山田綾乃さんの研究は、古代エジプトのクフ王のピラミッドのそばに埋められた木でできた船についてです。この船はたくさんの部品に分かれていて、どのように作られ、どんな順番で組み立てられたのか、またなぜ葬式の儀式で使われたのかがわかっていません。山田さんは、船の部品に書かれた文字や形を調べて、昔の人たちがどんな方法で船を作り、どんな意味で使ったのかを科学的に明らかに
- 岸 光男研究者詳細ページ ▸研究テーマ:新造船オプションで造船市場の価格競争を抑制岸光男氏の研究は、船を作る会社が価格をめぐって激しく競争しすぎる問題を解決するために、新しい市場の仕組みを考えています。この仕組みでは、「新造船オプション」という、特定の船を特定の会社で決まった期間内に注文できる権利を売買します。これにより、価格が安くなりすぎるのを防ぎ、船を作る会社が安定して仕事を続けられるようにします。また、この仕組みの効果を確かめるため
- 満行 泰河研究者詳細ページ ▸研究テーマ:確率論とデジタル技術で船舶運航と造船革新満行泰河准教授の研究は、船舶の自動運航や遠隔操船を実現するために、波の影響を受ける船の動きを確率的に正確に表す操縦運動モデルの開発に取り組んでいます。また、造船の現場では計画と実際の作業にズレが生じやすいため、過去の作業データを活用してデジタルツイン(現実の造船工程をコンピューター上で再現する技術)を作り、計画の精度を高めています。さらに、複数の工場が連携し
海技研と主要大学が代替燃料・自律運航・省エネ船型の研究で、次世代造船の技術基盤を形成する。
日本の船舶研究は海上技術安全研究所を中核に、阪大・横国大・九大・東大などが担ってきた。次世代燃料・自律運航・省エネ船型といった高付加価値領域では、技術と設計の優位を保てるかが問われる。大学・研究機関はこの転換にどう貢献するのか。海技研の代替燃料・自律運航の安全評価と各大学の船舶海洋工学が連携し、DTUやMITなど海外拠点とも並走しながら次世代造船の技術基盤を形成する。
大学・研究機関施策の一覧を開く大学・研究機関 7
国内 大学・研究機関施策(5機関)
海外 大学・研究機関施策(2機関)
政府は造船業再生ロードマップと設備投資支援基金で、2035年の建造能力倍増と次世代船舶の主導を目指す。
内閣官房 日本成長戦略本部の方針と、各審議会の議事に基づく公式一次情報(捏造ゼロ)。担当体制・主要目標(KPI)を要約し、有識者名簿・審議内容の原文は折りたたみに格納する。
- 類型
- 自律性・不可欠性を起点とした成長
- 担当大臣
- 国交大臣、経済安全保障大臣
- 検討体制
- 造船WG(有識者7名)
- 関係府省
- NISS、内閣府(科技)、入管、外務、文科、経産、環境、装備庁
- ロードマップ
- 官民投資ロードマップ(例)①次世代船舶【概要】を提示
目標 主要目標・KPI
- 2035年に建造需要の6割程度に拡大すると見込まれるゼロエミッション船等の次世代船舶
- 我が国において1,800万総トン(市場規模約5兆円)を建造(2035年)※2024年比倍増
- 中長期的に海上輸送量増加で建造需要が拡大し、アンモニア・水素燃料で走るゼロエミッション船等の次世代船舶建造量が増大する。政府は2035年に建造需要の6割程度が次世代船舶になると見込み、これをゲームチェンジの機会と位置づける。日本の舶用メーカーは世界に先駆けアンモニア・水素舶用エンジン開発に成功している。
- 日本の建造シェアは10%台前後に低下し消滅の危機にある一方、中国が世界の7割超を受注。困難の最大要因は競合国の不公正な政府助成(韓国過去1.2兆円・中国14兆円)とされる。世界市場は2030年代に8000万~1億総トンへ拡大する見込みで、シェア奪回の好機と再生のラストチャンスが同時に存在する。
- 造船900社・舶用機械1000社の大半が地方中小企業で、鉄から構成機器まで全て国産という海事産業群クラスターは日本固有の強み。船舶修繕は外航船の9割以上を外国依存しており、安全運航・輸送能力・安全保障に直結する。対米関係で日本が不可欠な存在となる経済安全保障の文脈が投資を駆動する。
- 大幅なコスト上昇・複雑で工数増・高技能設計技能者不足・長期間多額の設備投資が課題。大型クレーン導入によるブロック搭載工程の効率化やAIを活用した次世代型造船ロボットの研究開発が、中韓に対抗する生産体制整備の鍵となる。AM・MES等の隣接製造技術の進展が間接的に効く。
- H1
- 令和7年度補正予算の造船業再生基金を立ち上げ、官民1兆円規模の投資を10年先を見据えた複数年度基金で後押しする。生産体制整備・技術開発実証・IMO国際ルール策定の主導が並行して進む。隣接製造ではISO 24149(金属AM)等の標準採用が進む射程だが、大型クレーン導入は早くても7年後と納期が長い。
- H2
- 世界市場が2030年代に8000万~1億総トンへ拡大する中、政府は2035年に1800万総トン(2024年比倍増・市場規模約5兆円)を目標とする。ゼロエミッション船等の生産体制が整い、日本にしか造れない高付加価値船への集中が問われる。設備投資の回収と建造能力倍増の達成度が分岐点。確度は中。
- H3
- 次世代燃料(水素・アンモニア)のサプライチェーン成熟と船舶修繕の国内自律化が進む射程。洋上再生可能エネルギー・自律海上インフラといった青色経済の拡大が造船需要を底上げし得る。一方、燃料コストや国際ルールの帰趨次第で次世代船舶市場の立ち上がりが遅延するリスクも残る。射程は広く確度は低い。
有識者リスト(7名)
| 氏名・職 | 所属 | 研究テーマ |
|---|---|---|
| 村山 英晶 教授(副座長) | 東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 | source_grounded |
| 大橋 弘 教授 | 東京大学大学院経済学研究科 | source_grounded |
| 鎌倉 夏来 准教授 | 東京大学大学院総合文化研究科地域未来社会連携研究機構 | source_grounded |
| 清水 悦郎 教授 | 東京海洋大学海洋工学部海洋電子機械工学科 | source_grounded |
| 鈴木 一人 教授 | 東京大学公共政策大学院 | source_grounded |
| 二村 真理子 教授 | 東京女子大学現代教養学部経済経営学科 | source_grounded |
| 吉本 陽子 主席研究員 | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング | source_grounded |
審議内容(17件・委員/大臣の発言・論点・決定)
中国の量産と韓国の高付加価値船に挟まれる日本は、規制が生む脱炭素船需要に勝機を見いだす。
世界の造船市場は中国がシェア約54.6%・新規受注シェア約70%を握り、韓国が高付加価値船で世界2位につける。中国の国有大手による量産と韓国の次世代燃料船が、日本のシェア低下を構造的に押し下げてきた。量産で勝てない日本に、どのシナリオで勝機があるのか。IMO GHG戦略やEU ETS・FuelEU Maritimeが脱炭素船需要を生む一方で供給制約が阻むなか、ゼロエミッション船・次世代燃料エンジン・省エネ設計に集中する差別化に勝ち筋を見いだす。
各国の戦略・統合シナリオの詳細を開くSECTION B
各国 各国の政策一覧
各機関 各機関のシナリオ
この分野とつながる成長分野
本分野は他の成長分野と技術ロードマップ・スタートアップを共有している。下記は実データ(共通の技術テーマ・共通の企業)で結ばれた関連分野で、投資・連携の波及はこの隣接関係に沿って広がる。
技術・学術の詳細レポート — 参考文献・学術的裏付けこの DB の特徴
以降は専門家向けの深掘り(参考文献つき)。技術ロードマップ・学術分野レンズ・シナリオ検証と盲点・産業相互影響・シグナル/リスクを、技術知と社会科学の学術知で裏打ちする。各小節末に著者・年・出典つきの参考文献を一覧。
技術・学術の詳細レポート(参考文献つき)を開くこの DB の特徴
① 技術ロードマップ詳細(学術知接地)
国際海運の脱炭素は、重油を燃やす従来船から、炭素を出さない(あるいは出にくい)燃料で動く「次世代船」への置き換えで進む。だが本命となる燃料はまだ一つに定まっていない。
船は長く重油(重油=粘り気の強い石油)を燃やして動いてきたが、これがCO2と大気汚染の主因になる。脱炭素の鍵は、燃やしてもCO2を出さないアンモニア・水素、あるいはCO2の少ないメタノール・LNG(液化天然ガス)などの代替燃料へ切り替えることにある。問題は、どの燃料が本命かがまだ決まっていない点だ。アンモニアと水素は燃焼時にCO2を出さないが、毒性や着火の難しさという扱いにくさがある。メタノールは扱いやすく既に商用船が増えているが、製造時に再生可能な原料を使わなければ脱炭素効果が限られる。LNGは当面の移行燃料と位置づけられる。日本の造船業はこの「燃料が定まらない時代」に、複数の燃料に対応できる設計力で勝負することになる。
燃やしてもCO2を出さないアンモニアと水素が、脱炭素船の本命候補とされる。ただし毒性・貯蔵・燃焼の難しさという壁があり、舶用エンジンの実用化はこれからが正念場である。
アンモニア(NH3)と水素(H2)は、燃やしても炭素を含まないためCO2を出さない。とりわけアンモニアは、水素より貯蔵・輸送がしやすいため、外航の大型船で本命候補とされる。試験では、エンジンの燃焼で出る排出(タンク・トゥ・ウェイク)を最大で約95%削減できるとの結果も示されている。一方で、アンモニアは毒性があり扱いに高い安全管理を要し、水素は極低温・高圧での貯蔵が難しい。アンモニアは着火しにくいため、点火を助ける別の燃料と混ぜる二元燃料エンジンが現実解となる。2025年には最初のアンモニア舶用エンジンが納入され始め、量産船はこれから立ち上がる段階にある。日本のエンジン・機器メーカーがこの無炭素エンジンで存在感を出せるかが論点だ。
メタノール燃料船はすでに発注が急増し、LNG燃料船とともに脱炭素への移行を先導している。完全な無炭素ではないが、扱いやすさと実績で先行する。
アンモニア・水素が量産前夜にある一方、いま実際に増えているのはメタノールとLNGの燃料船である。メタノールは常温で液体のため扱いやすく、既存の燃料供給の仕組みを応用しやすい。2025年上半期にはメタノール燃料船が40隻規模で発注されるなど、海運大手が先行採用を進める。ただし化石原料由来のメタノールでは脱炭素効果が限られ、再生可能な原料から作る「グリーンメタノール」の供給拡大が課題になる。LNGは重油よりCO2が少なく、二元燃料エンジンの実績も厚いため、当面の移行燃料として広く採用される。これらの「先に走る燃料」で建造実績を積みつつ、本命のアンモニア・水素へ橋渡しできるかが、造船各社の戦略を分ける。
燃料を替えるだけでなく、風の力を借りる帆や、水の抵抗を減らす船の形で消費燃料そのものを減らす省エネ技術も、脱炭素の重要な一手である。
脱炭素は燃料の置き換えだけでは進まない。そもそも使う燃料を減らす省エネも欠かせない。回転する円柱で揚力を生むローター帆、硬い翼のような帆、凧(カイト)を使う風力アシスト推進は、追い風を推進力に変えて燃料を節約する。船底から泡を出して水の抵抗を減らす空気潤滑、抵抗の少ない船型の設計、推進効率を高める付加物(省エネデバイス)も効く。これらは新造船だけでなく、既存船の改修にも適用でき、IMOの炭素強度格付(CII)への対応として需要が大きい。日本の造船・舶用メーカーは流体力学にもとづく省エネ船型と装置で蓄積があり、燃料が定まらない時代の確実な需要として狙える領域である。
船員不足を背景に自律運航船の実証が進み、建造現場では生産性を上げる造船DXとロボット化が、建造能力倍増という政府目標の鍵を握る。
脱炭素と並ぶもう一つの軸が、デジタルと自動化である。船員の不足と安全向上を背景に、人の判断を支援し、いずれは遠隔・自律で運航する自律運航船(MASS)の実証が国内外で進む。一方、造船の現場側では、溶接・塗装・組立を担うロボット化と、3次元設計・デジタルツイン(仮想空間に船を再現する技術)による設計・生産のデジタル化が進む。政府が掲げる「2035年に建造能力を倍増(1,800万総トン)」という目標は、人手を増やすだけでは達成できず、造船DXとロボットによる工数の圧縮が不可欠だ。技能者不足という構造的制約を、デジタルと自動化でどこまで補えるかが、日本の造船再生の成否を実質的に決める。
- IMO(2023)「2023 IMO Strategy on Reduction of GHG Emissions from Ships」 International Maritime Organization ・ 出典
- Global Maritime Forum(2024)「Zero-emission shipping fuels: A guide to methanol and ammonia」 Global Maritime Forum ・ 出典
- 国土交通省(2024)「2035年に必要な我が国の船舶建造能力確保を目指します ~「造船業再生ロードマップ」の策定~」 国土交通省 報道発表 ・ 出典
- Global Maritime Forum(2024)「Methanol and ammonia progressing rapidly as zero-emission shipping fuels, but extra push needed to scale」 Global Maritime Forum ・ 出典
- Lloyd's Register(2024)「Alternative-fuelled ship orders grow 50% in 2024」 Lloyd's Register ・ 出典
- Lloyd's Register(2025)「Alternative-fuelled ship orders remain significant in 2025」 Lloyd's Register ・ 出典
- Global Maritime Forum(2024)「Methanol and ammonia progressing rapidly as zero-emission shipping fuels」 Global Maritime Forum ・ 出典
- 国土交通省(2024)「船舶産業の変革ロードマップに基づく取組」 国土交通省 海事局 ・ 出典
- IMO(2023)「EEXI and CII - ship carbon intensity and rating system (MEPC.328(76))」 Britannia P&I (regulatory overview) ・ 出典
- 国土交通省(2024)「造船業再生ロードマップ(建造能力 1,800万総トン・人材確保・脱炭素転換)」 国土交通省 報道発表 ・ 出典
- 国土交通省 海事局(2024)「海事:造船ワーキンググループ」 国土交通省 ・ 出典
② 学術分野レンズ詳細
船がどれだけ燃料を食うかは、水の抵抗をどう減らし、推進力をどう効率よく生むかという流体力学で決まる。省エネ船型はこの科学の上に成り立つ。
船の燃費は、船体が水を押しのける際の抵抗と、プロペラが水をかいて生む推進力の効率で決まる。これを扱うのが船舶流体力学である。抵抗には、水面に波を立てることで失う造波抵抗、船体表面の摩擦抵抗などがあり、船の形(船型)を最適化することでこれらを減らせる。かつては水槽で模型を引っ張って測っていたが、いまはコンピュータで水の流れを計算する数値流体力学(CFD)が設計の中心になった。省エネ船型や省エネデバイスは、この流体力学の蓄積の上に成り立つ。日本の造船・大学・海技研は船型設計に長い実績を持ち、燃料が定まらない脱炭素時代でも、抵抗を減らす設計力は普遍的に効く強みである。
アンモニアや水素を船のエンジンで安定して燃やすのは、重油とは別の難しさがある。着火・燃焼速度・有害物質の制御という燃焼科学が、無炭素エンジンの実用化を左右する。
代替燃料を船で使うには、その燃料を安全かつ効率よく燃やすエンジンが要る。ここで効くのが燃焼科学である。アンモニアは着火しにくく燃焼が遅いため、点火を助ける燃料(パイロット燃料)と混ぜる必要があり、燃やし方を誤ると未燃のアンモニアや、強い温室効果を持つ亜酸化窒素(N2O)が出てしまう。水素は燃えやすすぎて異常燃焼を起こしやすい。メタノールは比較的扱いやすいが熱量が低い。これらをどの圧力・温度・混合比で燃やすかを詰めるのが、無炭素エンジン開発の核心だ。舶用エンジンは日本・欧州・韓国の数社が握っており、燃焼制御と排出抑制の技術が、次世代燃料船の競争力を決める基盤になる。
ある燃料が脱炭素になるかは、船の上で燃やす段階だけでなく、燃料を作る段階まで含めて評価しないと判断できない。この『井戸から航跡まで』の視点が燃料選択を左右する。
「アンモニアはCO2を出さないから脱炭素だ」と単純には言えない。アンモニアを天然ガスから作れば製造段階でCO2が出るし、再生可能エネルギーで作れば排出はほぼゼロになる。燃料の本当の効果は、原料の採取・製造(井戸=ウェル)から船での燃焼(航跡=ウェイク)までを通して測る「ウェル・トゥ・ウェイク」のライフサイクル評価で判断する。FuelEU MaritimeやIMOの枠組みも、この全体での排出を基準にし始めている。だからこそ、グリーンな原料からの燃料供給網が整わなければ、いくら無炭素エンジンを積んでも脱炭素は達成されない。船の設計・燃料・供給網を一体で見る視点が、造船の意思決定には不可欠である。
船は一隻ごとに設計する『一品生産』の色が濃いが、建造能力を倍増させるには、設計を標準化し生産を効率化する生産工学の論理が要る。
船は建物に近く、一隻ごとに用途・寸法が異なる「一品生産」の性格が強い。だが政府が掲げる建造能力の倍増を、設備と人を増やすだけで達成するのは難しい。ここで効くのが、設計の標準化(モジュール化)と、組立工程を効率化する生産工学である。共通化できる部分を部品(ブロック)として標準化し、3次元設計とデジタルツインで現場の手戻りを減らし、溶接・塗装をロボット化する。これは自動車や半導体後工程で蓄積された「設計と製造の最適化」の論理を、船という巨大な構造物に持ち込む試みでもある。設計力の優位(省エネ船型)と、生産工学による効率化を結びつけられるかが、日本の造船が量産競争で生き残る筋道になる。
- ITTC (International Towing Tank Conference)(2021)「Recommended Procedures and Guidelines — Resistance and Propulsion / CFD」 ITTC ・ 出典
- Larsson, L. & Raven, H. C.(2010)「Ship Resistance and Flow (Principles of Naval Architecture)」 SNAME ・ 出典
- Kobayashi, H. et al.(2019)「Science and technology of ammonia combustion」 Proceedings of the Combustion Institute, 37(1) ・ 出典
- Global Maritime Forum(2024)「Zero-emission shipping fuels: A guide to methanol and ammonia (tank-to-wake emissions)」 Global Maritime Forum ・ 出典
- European Commission(2025)「FuelEU Maritime — well-to-wake GHG intensity of marine fuels」 European Commission (DG MOVE) ・ 出典
- IMO(2024)「Lifecycle GHG / Carbon Intensity Guidelines for marine fuels」 International Maritime Organization ・ 出典
- 国土交通省(2024)「船舶産業の変革ロードマップ(設計標準化・生産性向上)」 国土交通省 海事局 ・ 出典
- 日本造船工業会(2025)「日本成長戦略会議 ご説明資料(資料6)」 内閣官房 日本成長戦略会議 ・ 出典
③ 日本政府・各国シナリオの検証と盲点補填
建造能力を倍増させても、溶接などの技能者と船を設計する技術者が足りなければ船は作れない。人材の細りこそが政府目標の最大の制約である。
報道は基金や設備投資の額に集まりがちだが、造船再生の最大の制約は人である。長く続いた建造量の縮小で、溶接・塗装・艤装といった現場の技能者と、船を設計する技術者の層が細った。設備を増やしても、それを動かす熟練の手と、次世代燃料船という新しい船を設計できる人材がいなければ、能力は実質的に増えない。造船再生ロードマップが「人材確保・育成」を5本柱の一つに据えたのはこのためだ。外国人材の活用、ロボット化による省人化、若手の育成と処遇改善を同時に進められるかが、補助金や基金の額だけでは測れない現実の壁になる。
建造能力を倍増させるには巨額の設備投資が要り、人件費や鋼材の高い日本では建造コストが課題になる。3,500億円規模の基金はその負担を分担する仕組みである。
造船は、ドック・クレーン・自動化ラインといった巨大な設備を要する装置産業である。建造能力を倍増させるには各社が長期の設備投資を背負う必要があるが、需要の波が大きい造船業では、投資の回収が読みにくい。加えて、人件費や鋼材価格の高い日本は、中国・韓国に比べて建造コストで不利を抱える。政府が3段階で総額約3,500億円規模の基金を組み、官民あわせて約1兆円規模の投資を呼び込もうとするのは、この投資負担を企業だけに負わせない仕組みだ。基金が呼び水となって民間投資を引き出し、コスト競争力を確保できるかが、能力倍増という目標の現実性を左右する。
次世代燃料船を作っても、世界の港でその燃料を補給できなければ船は走れない。脱炭素船の普及は、船単体でなく燃料の供給網が整うかにかかっている。
脱炭素船の議論はとかく「どんな船を作るか」に集まりがちだが、見落とされやすいのが燃料の供給網である。アンモニアやグリーンメタノールを積める船を作っても、寄港する世界各地の港でその燃料を安全に補給できなければ、船は本来の航路を走れない。これは造船業だけでは解決できず、燃料を作るエネルギー産業、港湾を整備する各国政府、運ぶ海運業の協調が要る「鶏と卵」の問題だ。船と燃料供給は同時に立ち上がらなければ普及しない。日本が次世代船の設計・建造で先んじても、燃料供給網の整備が遅れれば需要は伸びない。造船を、エネルギー・港湾・海運を含む海事クラスタ全体の問題として捉える視点が、この分野の盲点を埋める。
- 国土交通省(2024)「造船業再生ロードマップ(人材確保・育成を5本柱の一つに)」 国土交通省 報道発表 ・ 出典
- 日本経済新聞(2025)「国内造船業、能力増強を3段階で支援 政府が2035年へ行程表」 日本経済新聞 ・ 出典
- 国土交通省(2024)「造船業再生ロードマップ(設備投資支援基金・約3,500億円規模)」 国土交通省 海事局 ・ 出典
- Global Maritime Forum(2024)「Methanol and ammonia progressing rapidly ... extra push needed to scale (fuel supply)」 Global Maritime Forum ・ 出典
- European Commission(2025)「FuelEU Maritime — renewable and low-carbon fuel uptake」 European Commission (DG MOVE) ・ 出典
④ 産業創造 — 関連分野との相互影響予測
船を作る造船業と、船を使う海運・物流は表裏一体である。海運大手が次世代船を発注するかどうかが、造船業の脱炭素転換の速度を決める。
造船業は単独では成り立たず、船を発注し使う海運・物流業と一体である。海運大手がIMO規制やEU ETSの炭素コストを見越して次世代燃料船を発注すれば、造船業はその設計・建造で応える。逆に、海運側が「どの燃料が本命か分からない」と発注を控えれば、造船業も脱炭素転換を進められない。日本郵船をはじめとする海運大手が、オールジャパンで次世代船の開発・基本設計を集約する動きを進めているのは、この両輪を回す試みである。海運の脱炭素需要と造船の建造能力を結びつけ、設計を共有して効率化できるかが、日本の海事産業全体の競争力を左右する。
造船は鋼材を大量に使い、エンジンや機器を多数積む裾野の広い産業である。建造能力の倍増は、鉄鋼・舶用エンジン・機器産業へ需要を波及させる。
1隻の船には大量の鋼材と、エンジン・推進装置・航海機器・電装品など膨大な部品が積まれる。造船は裾野の広い「組み立て産業」であり、建造能力の倍増は、鉄鋼業・舶用エンジン業・舶用機器業へ需要を波及させる。とりわけ次世代燃料エンジンや風力推進装置、自律運航のためのセンサ・通信機器は、日本のメーカーが強みを持つ領域だ。造船を一社や一産業の問題でなく、鉄鋼から機器までを含む「海事クラスタ」として捉えると、その経済波及は大きい。逆に言えば、造船の評価は建造量だけでなく、川上・川下の産業へどれだけ需要と技術を波及させるかで測るべきである。
- 日本郵船(2026)「オールジャパンで日本造船業の国際競争力復活へ 次世代船の開発・基本設計を集約、MILESに出資」 日本郵船 BVTL Magazine ・ 出典
- 国土交通省(2024)「造船業再生ロードマップ(安定需要の確保)」 国土交通省 報道発表 ・ 出典
- 日本造船工業会(2025)「日本成長戦略会議 ご説明資料(資料6・海事クラスタの裾野)」 内閣官房 日本成長戦略会議 ・ 出典
- Lloyd's Register(2025)「Alternative-fuelled ship orders remain significant in 2025(エンジン・機器需要)」 Lloyd's Register ・ 出典
⑤ 総合シグナル・リスク
世界の新造船建造は中国・韓国に集中し、特に中国は受注の約7割を握る。この圧倒的なシェアと国家支援が、日本の造船再生にとって最大の構造的脅威である。
造船で日本が直面する最大の現実は、中国・韓国の圧倒的なシェアである。2024年の世界建造量は中国が約54.6%を占め、新規受注では約7割に達した。韓国は高付加価値船で世界2位を維持する。中国は国有の中国船舶集団(CSSC)を軸に、巨大な建造能力と金融支援を背景に標準船型を量産し、近年は次世代燃料船にも進出している。日本がかつての首位から大きく後退した背景には、この国家規模の支援と量産能力がある。日本が量産で正面から戦うのは難しく、次世代船・高付加価値船という土俵で技術と設計の優位を発揮できるかが、現実的な勝ち筋を分ける。シェアの動きは継続して監視すべき最重要シグナルである。
脱炭素規制の強弱や本命燃料の行方が定まらず、船価と発注のタイミングは大きく揺れる。需要の波が大きい造船業では、この不確実性が投資判断の最大のリスクである。
造船業はもともと、世界経済と海上荷動きに左右される需要の波が大きい産業である。ここに脱炭素規制の不確実性が重なる。IMOの規制やEUの制度が予定どおり強化されれば次世代船の需要は前倒しになるが、政治情勢で規制が緩めば発注は遅れる。さらに、本命燃料がアンモニアになるかメタノールになるかが定まらないため、海運側が「待ち」に入ると船価と発注が揺れる。設備投資を先に背負う造船業にとって、この需要と規制の波は最大のリスクだ。規制の動向と燃料技術の成熟、船価の推移を継続的に監視し、複数の燃料に対応できる柔軟性を保つことが、この分野のリスク管理の要になる。
- iMarine News(2024)「China Dominates Global Shipbuilding: 70% Market Share in 2024」 iMarine News ・ 出典
- 日本経済新聞(2025)「日本の造船、35年に建造量2倍の政府目標 建造コスト課題」 日本経済新聞 ・ 出典
- European Commission(2024)「Reducing emissions from the shipping sector (EU ETS phase-in)」 European Commission (Climate Action) ・ 出典
- Lloyd's Register(2025)「Alternative-fuelled ship orders remain significant in 2025(本命燃料の不確実性)」 Lloyd's Register ・ 出典