本DBの審議・洞察は、汎用AIの基盤モデルで米国と正面から張り合うのでなく、産業用ロボット世界シェア7割弱というフィジカルAIの強みと半導体の国内回帰に投資を集中すべきと示している。
国内の設備投資・研究開発投資は実質で横ばい(量)、資本の生産性も低い(質)で主要産業の国際競争力が低下。すべての分野のカギとなるAX(AIトランスフォーメーション)で日本は供給・需要の両面で出遅れ、最優先課題。(分野横断的課題①新技術立国・競争力強化の現状と課題ページ)
政府の目標・KPI
- 2nm量産の立ち上げとHBM/後工程の内製化(H1(2025-2027))
- AIアクセラレータとデータセンター電力(H2(2028-2032))
- ポストムーアの計算基盤(H3(2033-2040))
注目の投資機会(可能性 高)
- 先端ロジックの量産(2nm GAA)
- HBM・先端メモリ
- 先端パッケージング(後工程・チップレット)
見落としやすいリスク・盲点
有望なのは産業用ロボットを基盤とするフィジカルAIと、HBM・後工程・パワー半導体の各テーマである。
本分野でいま開かれている投資機会を、機会の大きさ(可能性)と実証の確からしさ(確度)の2軸で位置づける。右上=大きく確実なほど優先度が高い。下図に代表テーマを配置し、続けて要点と全テーマを示す。
- 1先端ロジックの量産(2nm GAA)近
- 2HBM・先端メモリ近
- 3先端パッケージング(後工程・チップレット)近
- 4AIアクセラレータ(省電力推論)中
- 5製造装置・素材近
- 先端ロジックの量産(2nm GAA)(H1(2025-2027)が立ち上げの山):量産歩留まり・短TAT・設計連携。装置・素材の国内サプライヤーに需要が波及。
- HBM・先端メモリ(H1-H2):HBMの製造・実装・検査。日本は素材・後工程装置で参入余地。
- 先端パッケージング(後工程・チップレット)(H1-H2):先端パッケージング装置・材料・検査。チップレット標準(UCIe)への対応。
- 製造装置・素材(H1-H3):露光周辺・エッチング・洗浄・CMP・フォトレジスト・シリコンウェハ。
全テーマの根拠・確度・射程・学術接地を開く代表5件+全10件
投資機会テーマの全体(10件・一覧)
本一覧はC章の技術ロードマップ(微細化・HBM・先端パッケージング・AIアクセラレータ)と日本の強み(装置・素材・後工程)に接地して導出。代表例は射程・確度で抜粋。
世界半導体市場は約6,305億ドル(2024)と巨大だが、日本のシェアは10%未満まで低下している。
世界半導体市場は約6,305億ドル(2024年・WSTS)と巨大で、2026年には約7,386億ドルへの成長が予測される。しかしAI半導体は定義差が大きく、推計は約530億〜1,180億ドルと開き、見出しの数字は出典の定義に依存する。この巨大市場で日本はどの位置にいるのか。日本の半導体シェアは10%未満まで低下したが、製造装置・素材・後工程に強みを残し、ラピダス向け累計1兆円規模の国費支援で国内生産の回復を図っている。
市場データ・図表の詳細を開くSECTION F
半導体は巨大な実市場を持つ(世界 約6,305億ドル・2024 / WSTS)。うちAI半導体(GPU・AIアクセラレータ)は定義により約530億〜1,180億ドルと推計が開き、見出しの数字は出典の定義差に注意が要る。ここでは①世界半導体市場の推移 ②AI半導体市場予測のレンジ(定義差)③各国の公的投資 を分けて示す。市場予測(WSTS/Gartner/IDC/Precedence 等)は二次情報、各国予算(米CHIPS・欧州Chips Act・日本のラピダス支援)は一次情報。
世界半導体・AI半導体市場 ※二次情報
各国の公的投資(半導体)※一次情報
産業インテリジェンス — 20カテゴリの実データIIDB 識別子接続
産業インテリジェンスDB の「送配電網・スマートグリッド」・「半導体」・「道路・橋梁建設」・「公益インフラ建設」から、市場規模・産業構造・Porter 5 Forces・利益プール・人材・規制など 20 カテゴリの実データを引いた。全 1353 件のうち出典の生存が確認できているのは 1202 件。★この接続は産業IDによる識別子照合であり、語の一致で寄せたものではない。★検証状態は接続元の値をそのまま表示している(こちらで格上げしていない)。
M&A・資本提携・再編68件
PESTLE マクロ環境41件
Porter 5 Forces98件
エコシステム指標100件
バリューチェーン構造76件
人材・労働市場・スキル68件
価値移行・BMの変化75件
利益プール分析41件
市場規模・成長45件
技術ロードマップ・破壊的脅威47件
政策・予算・産業戦略46件
未来洞察・シナリオ35件
注目シグナル・弱信号90件
産業構造・集中度102件
産業連関・経済波及66件
研究・知識基盤76件
競合プレイヤー・シェア73件
規制・法制度67件
財務・収益性ベンチマーク57件
顧客セグメント・需要ドライバー82件
微細化とHBM・先端パッケージングが量産期に入る一方、Agentやマルチモーダルの安全性は未検証のまま残る。RMP 技術ロードマップDB 接地
ロードマップではN2/1.6nm初号機・HBM4量産・ハイブリッドボンディング量産化が2025年に、High-NA EUV量産とCFET初号機が2026年に並ぶ。一方で基盤モデルの訓練計算量は6〜9ヶ月ごとに倍増し、CoTの虚偽推論やAgent自動化の安全性未検証といった批判的論点が残る。技術の進展と未解決リスクのどちらを軸に投資判断するのか。量産期に入る微細化・HBM・パッケージングに足場を置きつつ、マルチモーダル幻覚やデータ品質の無視という反証条件を併記して判断する。
- 12025Humanoid assembly line deployment TRL5→7
- 22025Real-time sim-to-real transfer benTRL6→8
- 32025Dexterous manipulation of 20+ objeTRL6→7
- 42025Autonomous long-horizon task plannTRL5→7
- 52025N2/1.6nm プロセス初号機TRL7→8
- 62025ASML EXE:5200 納入開始TRL7→9
- 72025CoWoS後継パッケージング技術TRL6→8
- 82025HBM4 量産開始TRL7→9
- 92025ハイブリッドボンディング量産化TRL7→9
- 102026CFET チップ初号機製造TRL7→8
- 112026High-NA EUV量産プロセスTRL7→9
- 1220263D NAND 232層達成TRL6→8
- 132026次世代メモリ HBM5 仕様策定TRL6→8
- 142026オールシリコンフォトニクスAI チップTRL6→8
- 152026ダイアモンド熱伝導デバイスTRL6→7
- 162026超高速シリアライザー・デシリアライザーTRL6→8
- 172026Ga2O3 パワーIC製品化TRL6→8
- 182031バイオハイブリッド半導体TRL3→5
- 192032量子ドット単一電子トランジスタTRL4→6
- 202035Embodied AI general reasoning capaTRL5→7
- 212035超伝導ロジック商用化TRL4→7
- 222038Trillion-parameter embodied foundaTRL6→8
- 232038トポロジカル保護デバイスTRL3→6
全マイルストーンの一覧(TRL遷移・反証条件・一次出典)を開く24件
| 射程 | 実現年 | TRL | マイルストーン |
|---|---|---|---|
| 近(〜3年) | 2025 | TRL5→7 | Humanoid assembly line deployment target期日経過反証条件: Humanoid robot performing assembly tasks in production line for >100 hours by Q4 2025 出典 |
| 近(〜3年) | 2025 | TRL6→8 | Real-time sim-to-real transfer benchmark期日経過反証条件: Benchmark showing sim-to-real transfer in <1 hour for 5+ robot morphologies 出典 |
| 近(〜3年) | 2025 | TRL6→7 | Dexterous manipulation of 20+ object categories期日経過反証条件: Dexterous hand successfully manipulating 20+ diverse objects with >70% success 出典 |
| 近(〜3年) | 2025 | TRL5→7 | Autonomous long-horizon task planning (>10 steps)期日経過反証条件: Robot planning and executing 10+ step task chains without human intervention 出典 |
| 近(〜3年) | 2025 | TRL7→8 | N2/1.6nm プロセス初号機期日経過反証条件: TSMC N2チップが2025年末までに製造・動作確認されず、または仕様がノード寸法1.6nm相当を達成しない場合 出典 |
| 近(〜3年) | 2025 | TRL7→9 | ASML EXE:5200 納入開始期日経過反証条件: ASML EXE:5200 が複数顧客に2025年中に納入されず、または180W出力に達しない場合 出典 |
| 近(〜3年) | 2025 | TRL6→8 | CoWoS後継パッケージング技術期日経過反証条件: TSMC ultra-fine pitch Co-WoS がマイクロバンプ 30μm以上で展開された場合、または2025年中に商用化されなかった場合 出典 |
| 近(〜3年) | 2025 | TRL7→9 | HBM4 量産開始期日経過反証条件: HBM4 チップが2025年中に複数顧客への量産出荷に至らず、または帯域幅832GB/s未満の場合 出典 |
| 近(〜3年) | 2025 | TRL7→9 | ハイブリッドボンディング量産化期日経過反証条件: Cu-Cu ハイブリッドボンディングが3nm世代で量産出荷されず、または欠陥率が許容値を超える場合 出典 |
| 近(〜3年) | 2025 | TRL8→9 | GaN 電力変換効率 99%期日経過反証条件: GaN 650V/30A モジュールの総効率が99%未満に留まった場合、または2025年中に達成されなかった場合 出典 |
| 中(3〜10年) | 2026 | TRL7→8 | CFET チップ初号機製造反証条件: CFET チップが2026年末までに製造・テストされず、または性能向上が10%未満の場合 出典 |
| 中(3〜10年) | 2026 | TRL7→9 | High-NA EUV量産プロセス反証条件: TSMC が High-NA EUV量産チップを2026年末までに出荷せず、または NA 0.50以上を達成しない場合 出典 |
| 中(3〜10年) | 2026 | TRL6→8 | 3D NAND 232層達成反証条件: 3D NAND が232層未満に留まった場合、または2026年中にサンプル供給されなかった場合 出典 |
| 中(3〜10年) | 2026 | TRL6→8 | 次世代メモリ HBM5 仕様策定反証条件: JEDEC HBM5 仕様が2026年末までに公開されず、または帯域幅 1.6Tbps未満の場合 出典 |
| 中(3〜10年) | 2026 | TRL6→8 | オールシリコンフォトニクスAI チップ反証条件: Si フォトニクス AI チップが10Petaflops未満の性能に留まった場合、または2026年中に実装されなかった場合 出典 |
| 中(3〜10年) | 2026 | TRL6→7 | ダイアモンド熱伝導デバイス反証条件: ダイアモンドデバイスが10W/mm²未満の熱放散に留まった場合、または2026年中に実装実証されなかった場合 出典 |
| 中(3〜10年) | 2026 | TRL6→8 | 超高速シリアライザー・デシリアライザー反証条件: Chiplet SerDes が320Gbps未満に留まった場合、または遅延が100ps以上の場合 出典 |
| 中(3〜10年) | 2026 | TRL6→8 | Ga2O3 パワーIC製品化反証条件: Ga2O3 パワーIC が市販されず、または耐圧が10kV未満の場合 出典 |
| 遠(10〜30年) | 2031 | TRL3→5 | バイオハイブリッド半導体反証条件: バイオハイブリッド素子が論理演算実行(AND/OR等)を実証しない場合、または2031年中に成功しない場合 出典 |
| 遠(10〜30年) | 2032 | TRL4→6 | 量子ドット単一電子トランジスタ反証条件: QD-SET が室温(>250K)で安定した on/off スイッチング動作を達成しない場合 出典 |
| 遠(10〜30年) | 2035 | TRL5→7 | Embodied AI general reasoning capability反証条件: Robot solving novel physical problems with 70%+ success without training 出典 |
| 遠(10〜30年) | 2035 | TRL4→7 | 超伝導ロジック商用化反証条件: 超伝導ロジックが100K以上で動作せず、またはクライオステット不要が実現しない場合 出典 |
| 遠(10〜30年) | 2038 | TRL6→8 | Trillion-parameter embodied foundation model反証条件: Trillion-parameter model training on 1M robot datasets and deploying in production 出典 |
| 遠(10〜30年) | 2038 | TRL3→6 | トポロジカル保護デバイス反証条件: トポロジカルデバイスが製造誤差(±10%)耐性を達成しないか、2038年中に実装されない場合 出典 |
予測の本文一覧(機関・目標年・出典)を開く14件
- MIT Technology Review〔2026年〕:Foundation model training compute doubles approximately every 6-9 months through 2026 before leveling off 出典
- IDC〔2026年〕 40.0%:Multi-modal foundation models (vision-language) capture 40% of new enterprise AI implementations by 2026 出典
- Morgan Stanley〔2026年〕 30.0$M:AI foundation model training costs stabilize at $10M-$50M per flagship model by 2026 due to efficiency gains 出典
- Nature Forecasts〔2026年〕 70.0%:Long-context window models (100K+ tokens) become production-ready standard by 2026, enabling document-scale reasoning 出典
- Crunchbase〔2026年〕 3000.0$:Foundation model fine-tuning costs drop to $1,000-$5,000 per custom model by 2026 出典
- MIT Technology Review〔2026年〕 7.5%_teacher_size:Knowledge distillation reduces student model size to 5-10% of teacher while maintaining 95% performance by 2026 出典
- Goldman Sachs Research〔2026年〕 0.1latency_index:LLM inference latency improves by 10x through FlashAttention and hardware optimization by 2026 出典
- Gartner Hype Cycle〔2026年〕 35.0%:Mixture of Experts (MoE) architectures gain 35% market share of new foundation models by 2026 出典
- OECD〔2026年〕 70.0%_harmonization:Regulatory frameworks for foundation models harmonize across G7 countries by 2026 出典
- Crunchbase〔2026年〕 8.0%:RAG-augmented LLMs reduce hallucination rates from 25% to 8% by 2026 出典
- Nature Forecasts〔2026年〕:Scaling law research identifies performance plateaus before 10^27 FLOPS of compute by 2026 出典
- McKinsey Global Institute〔2026年〕 150000.0professionals:Prompt engineering becomes specialized industry role for 150,000+ professionals by 2026 出典
各盲点の根拠・反証基準・出典を開く12件
- 重大Chain-of-Thoughtの虚偽推論:CoTプロンプティングは見かけ上の推論を生成するが、数学的正確性や論理的一貫性の保証がない。内部計算過程が透明化されておらず、説得力のある虚偽推論を生成するリスクが高い。反証基準: CoT出力の中間ステップが実際の内部attention重みと85%以上相関しなければ、CoTは後付けの無根拠な説明である 出典
- 重大マルチモーダル幻覚の増幅:CLIP, GPT-4V, Gemini Vision等のマルチモーダルモデルは、画像内の物体存在を虚偽報告する。医療画像解析、自動運転システムの視覚入力など高リスク領域で幻覚が増幅されるリスク。反証基準: 医療画像データセット(ChexPert等)でマルチモーダルモデルの病理検出精度がテキストのみモデルより5%以上低下すれば、幻覚増幅が実証 出典
- 重大Agent自動化の安全性未検証:Agentic AI (AutoGPT, LangChain agents)は人間の監督なしにツール呼び出しを実行する。データベース削除、financial transactions等で取返しのつかない害が発生するリスク。フェイルセーフメカニズムが未装備。反証基準: Agentが制限されたサンドボックス環境で意図されたタスク外の行動を試みる成功率が1%以上であれば、安全性が不十分 出典
- 重大Scaling lawsデータセット品質の無視:Chinchilla, Grokking論文は計算量とパラメータの最適配分を論じるが、データセット品質(重複率、ノイズ、バイアス)を固定と仮定。現実のWebデータは品質が急速に低下している。反証基準: 大規模言語モデルの訓練に使用可能な高品質テキストが、現在のスケーリング率で2030年までに枯渇しなければ、データ品質制約は無関係 出典
- 重大Alignment problemの根本的解決策なし:RLHF, DPOは報酬信号に基づくが、報酬関数自体の正当性が証明されていない。Specification gaming, reward hacking等の問題は理論的には未解決。Alignmentは技術的問題というより哲学的問題。反証基準: 報酬関数が改竄されない形式的証明が提示されなければ、Alignmentは信頼に依存している 出典
- 重大医療AIの規制回避疑惑:医療現場に導入されるLLMベース診断補助AIの多くが、FDA規制を回避するため『参考情報』として位置付けられている。実際には患者の医学的判断に影響するが、規制対象外として扱われている。反証基準: 医療AIが定期的な臨床検証試験を受けずに100以上の医療機関で使用されている場合、規制回避の証拠 出典
- 重大Prompt injectionへの根本的対策なし:Prompt injection攻撃に対して、LLMプロバイダーは応急処置的な対策(フィルタリング等)を施しているが、根本的防御は不可能。言語モデルの性質上、任意の入力を処理する設計になっており、分別不可能な問題。反証基準: プロンプトインジェクション防御が形式的に完全であることが証明されなければ、脆弱性は本質的 出典
- 重大Emergent abilities論文の再現不可能性:Google Brain 'Emergent abilities' (2022)の結果が後続研究で再現されず、threshold effectは計測アーティファクト(metric 選択依存)であることが判明。数百億ドルの投資判断の根拠が虚偽だった。反証基準: emergent ability threshold が実験的にモデル依存でなく、計測metrics独立に再現されなければ、artifact 出典
- 重大Jailbreak攻撃への継続的脆弱性:ChatGPT, Claude等の『安全』を謳うLLMが定期的にjailbreak攻撃で安全防御を破られている。防御のcat-and-mouse game に終わりがなく、根本的な解決策は存在しない。安全性主張は不誠実。反証基準: 新しいjailbreak手法が月1回以上報告される場合、LLMの本質的な安全性は疑わしい 出典
- 重大データ処理コンプライアンス違反の常態化:Meta(LLaMA), Google(Bard), Microsoft(Copilot)等のLLM訓練に無断著作権データ、個人情報等が使用されている。GDPR等の規制に違反している可能性が高いが、企業は訴訟リスクを容認している。反証基準: LLM訓練データセットが著作権所有者の同意を明示的に取得していることが法廷で証明されなければ、違反の可能性大 出典
大学発ディープテックの所在は本DBに個別収録されていないが、論点は2nm世代の設計・後工程の技術移転にある。JPS 国内スタートアップDB 接地
国内スタートアップ正本(法人番号主キー)から、大学発・具体技術・資金調達をシグナルに非自明性スコアで選別した(著名な大手は減点し、見落とされがちな深い技術を前面に)。各社の中核技術・大学/研究室・直近調達(額・リード投資家)・上場状況を実データで示す。
対中輸出規制と日米蘭協調が事業環境を左右し、経済安全保障推進法が半導体を特定重要物資として支える。
米商務省BISは対中の先端半導体・製造装置の輸出規制を運用し段階的に強化し、日本・オランダも経済産業省を通じ先端製造装置の輸出管理で協調する。EUはEuropean Chips ActをFirst-of-a-kind認定・補助とともに2030年まで実施し、各国が制度で競い合う。この規制環境下で日本は何を制度的支柱とするのか。日本は経済安全保障推進法で半導体を特定重要物資に位置づけ、ラピダス・JASM補助の枠組みで国内製造を支える。
規制ロードマップの全項目を開く4件
組むべきはAIアクセラレータ・低消費電力設計やスピントロニクス・新メモリを担う国内研究機関の研究知である。RID 研究者DB(正規)接地
研究者正本(RID / 31.1万人版・本体23.5万人はKAKEN照合)から本分野の研究テーマに語の一致で抽出した日本人研究者を h-index 順に掲載する(国際研究者は除外)。★抽出は語の一致であって、この分野の研究者であることの同定ではない。★件数は全17領域で300名に固定されており、適合の閾値ではなく定員である。 ★無作為標本 30 名(乱数種 20260831・判定基準を抽出前に固定)で構成を実測した。判定基準は「半導体・AI基盤そのものの研究か(応用としてAIを使う研究と区別する)」。この領域の中核に当たるのは 13/30(95%信頼区間 27〜61%)。広義(AI・半導体に一切関わらない)は 0/30。狭義では半数が医療・農業・防災など他分野へのAI応用で、この領域の中核(半導体・AI基盤)は 43%(95%CI 27-61%)。判定は Claude(単独判定・二重判定なし)。
- 長藤 かおりh-index 3研究者詳細ページ ▸研究テーマ:計算誤差を保証する数値解析で流体と半導体の安定性を調査長藤かおり氏の研究は、計算結果の誤差範囲を明確に示す「精度保証付き数値計算」を開発し、半導体の電子状態や流体の安定性といった工学的に重要な問題の解析に応用しています。特に、流体の動きの安定性を調べる難しい計算や、半導体の性質を決める電子の振る舞いを正確に解析する方法を提案し、高い精度での検証を可能にしました。今後は、より複雑な問題にも対応できるよう手法を拡張
- 張 文馨h-index 3研究者詳細ページ ▸研究テーマ:ゲルマニウム薄膜で進める次世代半導体開発張文馨氏の研究は、非常に薄いゲルマニウム(Ge)のシートを使い、次世代の高性能半導体を作ることを目指しています。原子のレベルで形を正確に整える技術や、特殊な接触方法(van der Waals接触)を使って電子の流れを詳しく調べ、より速くて省エネなトランジスタの設計を進めています。また、三次元に積み重ねる半導体のために、表面を平らにする新しい低温の薄い層を削
- 宮尾 正信h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:非熱平衡成長で拓く次世代半導体技術宮尾正信氏の研究は、シリコンを基盤とした半導体材料の新しい作り方(非熱平衡結晶成長)を開発し、これまでの限界を超えた高性能な材料(GeSnやSiGe)を作り出すことにあります。これにより、電子の流れを制御するだけでなく、光や電子のスピン(磁気の性質)も利用できる多機能な集積回路の実現を目指しています。また、曲げられる基板上で動く半導体の開発も進めており、将来
- 上山 隆大h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:半導体産業政策で技術革新を再興する上山隆大教授の研究は、日本の半導体(コンピューターの部品を作る技術)産業が過去にどのように発展し、なぜ国際競争で遅れをとったのかを調べています。特に、基礎研究(新しい技術のもとになる研究)と実際に商品を作ることの間に政策がうまく働かなかった問題に注目しています。また、LSI(たくさんの電子回路を一つにまとめたもの)とMEMS(小さな機械と電子回路を組み合わせ
- 生嶋 明h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:真空紫外光学ガラスで拓く次世代半導体技術生嶋明氏の研究は、コンピュータやスマホの中で使われる半導体を作るための特別なガラス(真空紫外光学ガラス)を開発しています。このガラスは非常に短い紫外線を通し、半導体の細かい回路を作るのに役立ちます。また、ガラスの中の小さなゆらぎや不純物の動きを調べて、光が通るときの邪魔を減らす方法を見つけています。これにより、インターネットの通信に使われる光ファイバの損失を
- 山岸 正和h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:有機半導体の二次元伝導で未来の柔軟電子創出山岸正和准教授は、有機化合物からなる半導体(有機半導体)の電気の流れ方を均一にし、性能を高める研究を進めています。特に、どの方向にも同じように電気が流れる「等方的な二次元伝導(平面上で均一に電気が流れる性質)」を持つ材料の設計と評価を行っています。また、柔らかくて体に装着できる放射線検出器の性能向上のため、放射線を感知しやすい有機半導体の分子を作り出し、その
- 大野 秀樹h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:環境にやさしい半導体材料で未来を創る技術大野秀樹教授の研究は、環境にやさしい半導体材料(β-FsSi₂)を使い、直接接触法という新しい方法で薄い膜(薄膜)を作る技術の開発に取り組んでいます。これは、従来の半導体製造で問題となっていた環境への負担を減らしながら、高性能な電子部品を作ることを目指しています。こうした技術は、スマートフォンや太陽電池などの電子機器の性能向上と、地球環境の保護を両立させるた
- 遠藤 勝義h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:半導体表面制御で拓く次世代高性能デバイス遠藤勝義氏の研究は、半導体や光学機器の性能を決める材料の表面を、原子というとても小さな単位で詳しく調べて、きれいに整える技術の開発に取り組んでいます。例えば、GaNという材料の表面を特別な方法で掃除して、光を出す力を大きく高めました。また、ミラーやレンズの形をナノメートル(とても小さな長さ)単位で正確に測る新しい方法を作り、より良い光学機器の製造に役立ててい
- 大見 忠弘h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:高速動作と低消費電力を実現する半導体技術大見忠弘氏の研究は、シリコン表面を原子レベルで平らにする技術や低温で高品質の膜を作る技術を開発し、超高速で動きながらも電力をあまり使わない半導体回路の実現を目指しています。特に、シリコンの特定の面を使った新しい回路構造や、プラズマという特殊なガスの状態を利用した製造方法で、回路の性能と信頼性を大きく向上させています。これにより、スマートフォンやAI機器など、
- 山本 恵太郎研究者詳細ページ ▸研究テーマ:バンドギャップ制御による高性能有機半導体開発山本恵太郎助教の研究は、電子のエネルギー差(バンドギャップ)を小さくすることで、光をより効率的に吸収し、電気の流れやすさを高める新しい有機半導体材料の開発に取り組んでいます。従来の設計方法では難しかった非常に狭いバンドギャップを実現するために、特別な分子構造(開殻性分子)を使った新しい設計指針を提案。また、電子が分子内を自由に動きやすくするための分子設計も行
- 中村 友謙研究者詳細ページ ▸研究テーマ:薄い半導体の電子特性解明と新型デバイス開発中村友謙氏の研究は、薄くて新しい半導体材料「アンチモネン(2次元半導体)」の作り方を確立し、その中の電子の動きや性質を詳しく調べることに取り組んでいます。特に、電子の種類や数をコントロールする技術を開発し、超低温の特殊な顕微鏡を使って材料の細かい構造や電子の状態を観察しています。これにより、より速くて省エネな次世代の電子機器を作るための基礎を築くことを目指し
- 徳山 順也研究者詳細ページ ▸研究テーマ:放射線に強いSiGe半導体の信頼性向上徳山順也氏の研究は、宇宙や原子力など放射線が強い環境でも壊れにくい半導体(SiGe半導体)を作ることを目指しています。SiGe半導体は高速で動く特長がありますが、放射線を浴びると性能が落ちる問題がありました。研究では、ゲルマニウム(Ge)の割合を増やすことで放射線による損傷を減らせることを見つけ、簡単で安い方法で高Ge濃度のSiGeデバイスを作る技術も開発し
- 伊東 芳子研究者詳細ページ ▸研究テーマ:特殊粒子で調べる半導体の欠陥制御伊東芳子氏の研究は、半導体の中にあるとても小さな欠陥を特殊な粒子を使った測定方法で詳しく調べています。特にGaAsという材料の中の欠陥がどのように集まったり消えたりするかを明らかにしました。また、光を出す材料として注目される多孔質シリコンの構造も調べています。さらに、半導体の表面を詳しく調べるために必要な粒子を出す装置の開発も進めています。これらの研究は、ス
- 斎藤 順雄研究者詳細ページ ▸研究テーマ:ナノ構造で実現する高性能アモルファス半導体斎藤順雄氏の研究は、シリコンやゲルマニウムを使った結晶ではない薄い半導体材料(アモルファス半導体)を、ナノメートル単位で何層も重ねた多層薄膜を高速かつ効率的に作る技術の開発に取り組んでいます。特殊な方法で薄膜の厚さや構造を精密に制御し、光の吸収やエネルギーの通り道を調べることで、ナノサイズの効果を確認しました。これにより、高性能で新しい機能を持つ半導体素子の
- 堤井 君元研究者詳細ページ ▸研究テーマ:高性能半導体で実現する省エネルギー技術堤井君元准教授の研究は、エネルギーを効率よく使うための新しい半導体材料の開発に取り組んでいます。特に「ワイドバンドギャップ半導体」(高温や高電圧でも性能が落ちにくい半導体)である窒化ホウ素やナノダイヤモンドの膜を作り、その電気の流れやすさを調整する「ドーピング」(特定の元素を加えること)技術を研究しています。また、プラズマ(電気を帯びたガス)を使って半導体の
- 服部 佳晋研究者詳細ページ ▸研究テーマ:数学的手法で実現する省エネ半導体設計服部佳晋教授の研究は、電気を効率よく使うための新しいパワー半導体(GaNパワーデバイス)の設計方法を開発することです。従来は設計者が手作業で試行錯誤していましたが、教授は「トポロジー最適化」という数学の方法を使い、材料の特性を考えながら最も効率的で壊れにくい形を自動で見つけ出します。この方法は、製造のばらつきにも強く、実際に作って試すことで効果を確かめていま
- 宮川 勇人研究者詳細ページ ▸研究テーマ:半導体材料と蛍光体の特性制御による省エネデバイス開発宮川教授の研究は、スマートフォンやコンピューターに使われる半導体や、明るく長持ちするLEDライトの材料に関するものです。材料の中の小さな欠陥や結晶の状態が光の色や強さにどう影響するかを調べ、より自然な色の光を出す省エネライトや長持ちする電子部品の開発を目指しています。また、磁石の性質を持つ特別な材料を作り、その性質を詳しく調べることで、新しい電子機器の性能向
- 藤原 弘和研究者詳細ページ ▸研究テーマ:非破壊評価で省エネ半導体の信頼性革新藤原弘和氏の研究は、人工知能を動かすために必要な省エネルギーの半導体(電子部品)をより信頼できるものにすることを目指しています。新しい材料である酸化物半導体や強誘電体は、エネルギーを節約しながら高性能を発揮しますが、小さな欠陥が性能を不安定にします。藤原氏は、壊さずに欠陥を見つける特別な顕微鏡を使い、欠陥の場所や動きを詳しく調べています。これにより、欠陥を減
LSTCと産総研を中核に、東大・東京科学大・東北大が2nm世代と新メモリの研究を担い、imec等と連携する。
国内ではLSTCが2nm世代の設計・製造・後工程を、産総研が先端デバイス・後工程・素材プロセスを研究する。東大はAIアクセラレータ・低消費電力設計、東京科学大は先端ロジック・新メモリ・3D集積、東北大CIESはスピントロニクス・新メモリ・省電力と、強みが分散している。これらの研究集積をどう束ねて産業へつなぐのか。微細化に強いimecや省電力AIのMIT・Stanfordとの連携を軸に、2nm世代と新メモリの研究を製造へ橋渡しする。
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国内 大学・研究機関施策(5機関)
海外 大学・研究機関施策(2機関)
政府はAXの出遅れを最優先課題と位置づけ、2030年度まで10兆円超の公的支援で半導体生産の回復を図る。
内閣官房 日本成長戦略本部の方針と、各審議会の議事に基づく公式一次情報(捏造ゼロ)。担当体制・主要目標(KPI)を要約し、有識者名簿・審議内容の原文は折りたたみに格納する。
- 類型
- 成長の加速装置となるAIトランスフォーメーション(AX)
- 担当大臣
- 人工知能戦略大臣、経産大臣
- 検討体制
- AI・半導体WG(有識者9名)
- 関係府省
- 内閣府(NISS、知財、金融、デジタル、規制)、外務、文科、農水、国交、環境、防衛
- AIが現実世界を理解し物理的行動を制御するフィジカルAIへ移行しつつあり、ロボットが最有望領域となる。政府は2040年断面で世界60兆円規模のマーケットを見込み、日本は産業用ロボット世界シェア7割弱・幅広いサプライチェーン・現場の暗黙知を強みとして第三極20兆円を狙う。需要・技術が約1年で大きく進展した加速要因である。
- 競争軸はモデル性能争いから電力・半導体・データ・モデル・社会実装まで統合したバリューチェーン覇権へ移行した。日本のAI民間投資は米国の約100分の1、政府投資でも30対1で劣後し、韓国・カナダにも劣るという出遅れが駆動構造の核。政府は2030年度まで公的支援10兆円以上・官民50兆円以上の投資フレームで反転を図る。
- かつて世界シェア50%だった日本の半導体は現在10%未満に低下したが、製造工場の立地が進み、政府は2030年に国内生産半導体売上高15兆円、2040年に40兆円へ高める勝ち筋を描く。マイコン・センサー・パワー・アナログ系の開発基盤をフィジカルAIと結びつけ、システムをシリコンに統合するアプローチが投資を牽引する。
- AI・半導体は日本が不可欠性を持つ領域とされ、生成AIのルールづくりで主導余地がある。各分野横断のキーワードは「AI」と「デュアルユース」で、安全保障上獲得すべき技術と競争上優位な技術への集中投資が論じられている。米政府とメガテックの結合、中国の量産・低コスト攻勢が国際力学として作用する。
- H1
- 基盤モデルは長文脈・マルチモーダル・エージェント化が実装標準となり、500B級モデルの効率閾値や推論最適化でLLM推論コストが大幅低下する見込み。半導体ではHBM・UCIe・GaNなどが量産水準に達する。政府は国内半導体売上高15兆円(2030年)、バーティカルAI市場5兆円(2030年)を当面目標に据える。
- H2
- チップレット生態系の拡大とエージェントAIの企業浸透が進む射程。McKinseyは2030年に世界AI市場1.8兆ドル、Fortune500の3割でエージェントAIが自律的意思決定に達すると予測する。政府は自動運転で2030年代にグローバル市場の相当シェア確保を掲げるが、End to End自動運転の社会実装速度が分岐点となる。確度は中。
- H3
- フィジカルAIが製造・ヘルスケア・防災・家事へ広がり、政府は2040年に世界60兆円市場の日本20兆円獲得、半導体40兆円を構想する。一方、フォトニック基板への転換やAGI移行といった破壊シナリオも低~中確率で存在し、Transformerの計算量限界が技術的天井になり得る。射程は広く確度は低い。
有識者リスト(9名)
| 氏名・職 | 所属 | 研究テーマ |
|---|---|---|
| 伊藤 錬 共同創業者 COO | Sakana AI株式会社 | source_grounded |
| 岡田 陽介 代表取締役CEO | 株式会社ABEJA | source_grounded |
| 久保田 由美恵 執行役員 統括部長 | 株式会社安川電機 技術開発本部AIロボティクス | source_grounded |
| 小池 淳義 社長 | Rapidus株式会社 | source_grounded |
| 瀬川 澄江 執行役員 ディビジョンオフィサー | 東京エレクトロン株式会社 コーポレートイノベーション本部 | source_grounded |
| 時田 隆仁 代表取締役社長CEO | 富士通株式会社 | source_grounded |
| 平野 未来 代表取締役社長CEO | 株式会社シナモン | source_grounded |
| 松尾 豊 教授 | 東京大学大学院工学系研究科 | source_grounded |
| 村上 明子 執行役員常務グループChief Data Officer/AIセーフティ・インスティテュート | SOMPOホールディングス株式会社/独立行政法人情報処理推進機構 | source_grounded |
出典: https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/kaigi/dai2/shiryou1-2.pdf
審議内容(25件・委員/大臣の発言・論点・決定)
米のCHIPS法527億ドル、欧の430億ユーロ、中の大基金など各国が巨額の国費を投じ、競争は激化している。
米はCHIPS and Science Act(2022)で527億ドルを充当し授権規模は約2,800億ドル、欧は2030年まで430億ユーロ超で世界生産シェア20%を目標とする。中は大基金第3期約3,440億元(約475億ドル)で自給率向上を狙い、韓は龍仁等のメガクラスター、台はTSMC中心の民間主導と、各国の構えが異なる。巨額の国費が飛び交うなかで日本はどう位置取るのか。日本はラピダスの2nmとJASMの量産、LSTCの研究、後工程・素材の強みを組み合わせて国際競争に臨む。
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この分野とつながる成長分野
本分野は他の成長分野と技術ロードマップ・スタートアップを共有している。下記は実データ(共通の技術テーマ・共通の企業)で結ばれた関連分野で、投資・連携の波及はこの隣接関係に沿って広がる。
技術・学術の詳細レポート — 参考文献・学術的裏付けこの DB の特徴
以降は専門家向けの深掘り(参考文献つき)。技術ロードマップ・学術分野レンズ・シナリオ検証と盲点・産業相互影響・シグナル/リスクを、技術知と社会科学の学術知で裏打ちする。各小節末に著者・年・出典つきの参考文献を一覧。
技術・学術の詳細レポート(参考文献つき)を開くこの DB の特徴
① 技術ロードマップ詳細(学術知接地)
ロジック半導体の性能は長らくトランジスタの微細化で稼いできたが、FinFETの限界に達し、2nm世代では電流の漏れを抑えるGAA(ゲート・オール・アラウンド/ナノシート)構造へ移行する。
半導体の中核であるロジック(演算)チップは、トランジスタを小さく多く詰めるほど速く省電力になるという原理で進化してきた。3nm世代まで主流だったFinFET構造は、ゲートが薄い板状でチャネルを三方から囲む形だが、微細化が進むと電流の漏れ(リーク)を抑えきれなくなる。2nm世代ではチャネルを四方からゲートで完全に囲むGAA(ゲート・オール・アラウンド、ナノシート)構造が採用され、漏れを抑えつつ電流制御を高める。製造には極端紫外線露光(EUV)が不可欠で、装置はASML一社に依存する。日本のラピダスは2025年4月に北海道・千歳で2nmパイロットラインを稼働させ、2027年の量産を目標に掲げる。
AIの性能はもはや演算速度ではなくメモリの帯域で律速される。GPUの周囲に積層メモリを並べるHBMが、AI半導体の性能を決める主戦場になった。
大規模言語モデルの学習・推論では、膨大なパラメータをメモリと演算器の間でやり取りし続ける。この往復が性能の壁になり、演算器をいくら速くしてもメモリが追いつかない「メモリの壁」が顕在化した。これに応えるのがHBM(広帯域メモリ)で、DRAMを縦に積層しGPUのすぐ隣に高密度に配置して帯域を稼ぐ。HBMの生産はSK hynix・Samsung・Micronが先行し、AI半導体の価値の多くがこのメモリに移っている。HBMは積層・接合・検査という後工程の塊であり、日本の素材・後工程装置メーカーに参入余地がある。
1枚の巨大チップを作る代わりに、機能ごとの小チップ(チップレット)を高密度に接続して1つのパッケージにまとめる方式が主流化している。後工程が性能を決める時代に入った。
微細化のコストと歩留まりが厳しくなる中、巨大な1チップ(モノリシック)でなく、演算・メモリ・入出力などの機能を別々の小チップ(チップレット)として作り、それらを高密度に接続して1つのパッケージにまとめる方式が広がった。TSMCのCoWoSに代表される先端パッケージングは、AIアクセラレータの性能と供給量のボトルネックになっている。チップレット間接続の標準化(UCIe)も進む。配線・接合・放熱を扱う後工程は、組み立て・検査で実績を持つ日本企業の強みを活かせる領域であり、政府の支援も後工程に向かい始めた。
AI計算はNVIDIAのGPUがほぼ独占するが、用途が「学習」から「推論」へ広がるにつれ、省電力に特化した専用チップに新興企業の余地が生まれている。
AIの計算は、モデルを訓練する「学習」と、訓練済みモデルを使う「推論」に分かれる。学習はNVIDIAのGPUとそのソフト資産(CUDA)が事実上の標準で、参入は難しい。一方、推論は低消費電力・低遅延が重視され、用途も多様なため、Transformer専用ASIC(Etched)、インメモリ計算(d-Matrix)、データフロー方式(SambaNova、Groq)など新興企業が挑む。エッジ(端末側)の省電力推論では、国内のEdgeCortixやPreferred Networks(MN-Core)も存在感を持つ。推論市場の拡大が、GPU寡占に風穴を開けられるかが論点。
② 学術分野レンズ詳細
「2年で集積度2倍」のムーアの法則と、それを支えた省電力則(デナードスケーリング)はすでに鈍化・終焉した。半導体の進歩の駆動原理が変わった。
1965年にゴードン・ムーアが示した「集積度がおよそ2年で倍増する」経験則(ムーアの法則)は、半導体産業の羅針盤だった。これを電力面で支えたのが1974年のデナードらの法則で、トランジスタを小さくすれば消費電力密度は一定に保てるとした。だがデナードスケーリングは2000年代半ばに崩れ、微細化しても発熱が増える時代に入った(電力の壁)。ムーアの法則自体も鈍化し、進歩の源泉は単純な微細化から、専用設計・3D集積・パッケージングへと多様化した。これがチップレットやAIアクセラレータが台頭する学術的背景である。
AIモデルは規模を大きくするほど性能が上がるという経験則(スケーリング則)が、半導体への計算需要を青天井に押し上げている。
2020年のKaplanらの研究は、言語モデルの性能がパラメータ数・データ量・計算量のべき乗則で改善することを示した(スケーリング則)。2022年のHoffmannら(Chinchilla)は、計算量に対する最適なモデルとデータの配分を精密化した。これらは「賢さは計算で買える」という見通しを与え、各社が巨大モデルへ投資する根拠となった。結果として、半導体への需要は供給側の技術ではなく、AIモデルの規模拡大という需要側の論理に強く牽引されるようになった。スケーリング則がいつ頭打ちになるかが、AI半導体市場の最大の不確実性でもある。
演算器とメモリを分離する古典的なコンピュータ構造(フォンノイマン型)では、データ移動が電力の大半を食う。AI時代にこの前提が問い直されている。
現代のコンピュータは、演算する場所(プロセッサ)とデータを置く場所(メモリ)を分け、両者の間でデータをやり取りする「フォンノイマン型」構造を取る。1978年にバッカスが指摘したように、この往復(フォンノイマンボトルネック)が性能と電力の足かせになる。マーク・ホロウィッツらが示したとおり、現代のチップでは演算そのものよりデータ移動の方がはるかに電力を食う。AIのように大量のデータを動かす計算では、この問題が深刻化する。メモリの中で計算するインメモリ計算(d-Matrix等)や、脳を模したニューロモーフィックは、この前提を崩す試みである。
汎用プロセッサの性能向上が鈍るなか、用途に特化した専用設計(ドメイン特化アーキテクチャ)が性能と効率を稼ぐ主役になった。
ヘネシーとパターソンは2019年のチューリング賞講演で、汎用CPUの性能向上が鈍化した今こそ、用途を絞った専用設計(ドメイン特化アーキテクチャ、DSA)が性能・電力効率を飛躍させる「計算機アーキテクチャの新しい黄金時代」だと論じた。GPUのAI転用、GoogleのTPU、各社のAIアクセラレータはその実例である。DSAは、半導体の価値が汎用部品から「特定用途に最適化した設計」へ移ることを意味し、設計力(EDA・アーキテクチャ)と製造力(後工程・集積)の両方が問われる。日本の巻き返しも、この設計と製造の結節点で構想される。
- Moore, G. E.(1965)「Cramming more components onto integrated circuits」 Electronics, 38(8) ・ 出典
- Dennard, R. H. et al.(1974)「Design of ion-implanted MOSFET's with very small physical dimensions」 IEEE J. Solid-State Circuits, 9(5) ・ 出典
- Kaplan, J. et al.(2020)「Scaling Laws for Neural Language Models」 arXiv:2001.08361 ・ 出典
- Hoffmann, J. et al. (DeepMind)(2022)「Training Compute-Optimal Large Language Models (Chinchilla)」 arXiv:2203.15556 ・ 出典
- Backus, J.(1978)「Can programming be liberated from the von Neumann style?」 Communications of the ACM, 21(8) ・ 出典
- Hennessy, J. & Patterson, D.(2019)「A New Golden Age for Computer Architecture」 Communications of the ACM / Turing Lecture ・ 出典
③ 日本政府・各国シナリオの検証と盲点補填
AI半導体の真の制約は、チップの性能ではなく、それを動かす電力と冷却にある。電力が確保できなければ計算は増やせない。
AIの計算需要が急増する一方で、見落とされがちな制約がデータセンターの電力である。最先端のAIアクセラレータは1台あたりの消費電力が大きく、数万台規模のクラスタでは都市並みの電力を要する。電力網の増強・送電・冷却(液冷化)が追いつかなければ、いくらチップを作っても動かせない。日本はデータセンター立地・電力・再エネ調達の面で制約が大きく、AX(需要側)の出遅れの一因でもある。半導体単体でなく、電力・冷却・立地まで含めた基盤として捉える視点が、この分野の盲点を埋める。
日本は先端ロジックの量産では出遅れたが、製造装置・素材・後工程という「裏方」で世界シェア上位を保つ。AI時代にこの強みが性能の主戦場に来た。
報道は2nm量産(ラピダス)に集まりがちだが、日本の真の強みは別の層にある。製造装置(東京エレクトロン等)、素材(信越化学・SUMCOのシリコンウェハ、JSR等のフォトレジスト、特殊ガス)、後工程(組み立て・接合・検査)で、日本企業は世界シェアの上位を占める。HBMや先端パッケージング、チップレットが性能の主戦場になったことで、これら後工程・素材の重要性はむしろ高まった。微細化の最先端を追うだけでなく、強みの層をAIの性能要求に接続できるかが、現実的な勝ち筋として浮かぶ。
先端半導体は装置を買えば作れるものではない。歩留まりを上げる現場の技能と人材が、国産2nmの成否を分ける。
先端ロジックの量産は、最新装置を導入すれば即座に立ち上がるものではない。微細なばらつきを抑え、欠陥を減らして良品率(歩留まり)を経済性が成り立つ水準まで上げるには、長期の試行錯誤と熟練した技術者が要る。日本は半導体人材が長く先細りしており、ラピダスはIBMやimecとの連携で技術と人材を移転しようとしている。歩留まりの実証と人材の厚みこそが、国費投入が成果に結びつくかの分岐点であり、装置や補助金の額だけでは測れない現実の制約である。
④ 産業創造 — 関連分野との相互影響予測
日本の課題は半導体を作る供給側だけでない。AIを使って生産性を上げる需要側(AX)の遅れが、半導体産業の意義そのものを左右する。
成長戦略がAI・半導体を最優先に置く理由は、半導体の製造(供給側)だけでなく、AIを使って産業の生産性を上げるAIトランスフォーメーション(AX、需要側)にある。日本は設備投資・研究開発が実質横ばいで、資本の生産性も低く、AI実装でも出遅れている。半導体を国内で作れても、それを使って国内産業が生産性を上げなければ、投資は循環しない。データセンター・クラウド・AI人材・電力という需要基盤の整備が、供給側の投資と両輪で進むかが、この分野全体の実効性を決める。
AI半導体は単独の産業でなく、自動車・産業機器・防衛・通信など他分野の競争力を支える基盤として波及する。
AI半導体と先端ロジックは、それ自体が目的というより、他産業の競争力を底上げする基盤である。自動運転や車載AI、産業機器のエッジ推論、防衛装備のセンサ・通信、Beyond 5Gの基地局など、応用は広い。EdgeCortixが防衛技術文脈で国の支援を受けたように、省電力エッジAIは経済安全保障とも結びつく。半導体を17分野の「カギ」と位置づける成長戦略の論理は、この横断的な波及にある。逆に言えば、半導体の評価は単体の市場規模でなく、他分野へどれだけ生産性を波及させるかで測るべきである。
⑤ 総合シグナル・リスク
先端ロジックの世界生産はTSMC(台湾)に極端に集中しており、台湾有事や災害は世界の半導体供給を直撃する。これが各国の国産化競争の最大の動機である。
最先端ロジックの量産は、台湾のTSMCがほぼ独占している。この地理的集中は、平時には効率的でも、台湾海峡の地政学リスクや自然災害に対して極めて脆弱である。各国がCHIPS法・Chips Act・ラピダス・JASMで国産化や分散を急ぐ最大の動機は、この供給集中リスクへの保険にある。日本にとって熊本のJASM(TSMC)と国産のラピダスは、供給網の分散という安全保障上の意味を持つ。市場性だけでなく、止まったときの損失を見込んだ「保険としての投資」という観点が、この分野の判断には不可欠である。
米国の対中輸出規制は半導体を経済安全保障の道具に変えた。技術がブロック化し、企業は二つの市場の板挟みになる。
米国は先端半導体・AIアクセラレータ・製造装置の対中輸出を段階的に規制し、半導体を経済安全保障の中心に据えた。日本・オランダも先端装置の輸出管理で協調する。この結果、技術と市場が米国圏と中国圏にブロック化し、装置・素材を世界に売る日本企業は域外適用や報復の板挟みになりうる。中国は大基金で自給率向上を急ぐ。規制の強化・緩和は政権交代で揺れ、企業の投資判断に大きな不確実性を与える。地政学と規制の動きを継続的に監視することが、この分野のリスク管理の要となる。