防災・国土強靱化は守りの費用ではなく、災害時にも交通・通信・エネルギーを動かして経済を回す危機管理投資であり、予防保全への転換と防災技術の官民一体海外展開でレジリエンス立国へと成長に転じるべき領域である。
政府の目標・KPI
- 5か年加速化から実施中期計画への移行と防災庁の始動(H1(2025-2028))
- 予防保全とデジタルツインによる賢い維持・流域治水の定着(H2(2029-2035))
- 巨大地震と気候激甚化に耐える持続可能な国土への転換(H3(2036-2050))
注目の投資機会(可能性 高)
- 早期警戒・災害予測
- インフラ老朽化モニタリング(予防保全)
- 衛星・ドローンによる被災状況把握
見落としやすいリスク・盲点
第1次国土強靱化実施中期計画の20兆円強が、ライフライン・防災インフラ・デジタル新技術への投資需要を切れ目なく生む。
本分野でいま開かれている投資機会を、機会の大きさ(可能性)と実証の確からしさ(確度)の2軸で位置づける。右上=大きく確実なほど優先度が高い。下図に代表テーマを配置し、続けて要点と全テーマを示す。
- 1早期警戒・災害予測近
- 2インフラ老朽化モニタリング(予防保全)近
- 3衛星・ドローンによる被災状況把握近
- 4流域治水・耐震レジリエンス(ハード防災)近
- 5避難・被災者支援のDX近
- 早期警戒・災害予測(H1-H2(2025-2035)):数値予報モデル・気象/河川センサ・SNS/映像のAI解析・リスク情報配信SaaS・自治体/企業向け危機管理ツール。気候激甚化で需
- インフラ老朽化モニタリング(予防保全)(H1-H3):構造物センサ・点検ドローン/ロボット・ひび割れ自動検出AI・デジタルツイン/維持管理プラットフォーム。予防保全は長期費用を大きく
- 衛星・ドローンによる被災状況把握(H1-H2):小型SAR衛星/コンステレーション・被害自動判読AI・点検/調査ドローン・被災地図の即時生成。防災に加え保険/インフラ点検と出口
- 流域治水・耐震レジリエンス(ハード防災)(H1-H3):免震/制震装置・新素材/補強工法・自動化施工・気候変動を踏まえた治水設計・グリーンインフラ(自然を活かす防災)。公共事業の安定需
全テーマの根拠・確度・射程・学術接地を開く代表5件+全10件
投資機会テーマの全体(10件・一覧)
本一覧はC章の技術ロードマップ(早期警戒・予測/地震津波観測/衛星・ドローン被災把握/インフラ老朽化モニタリング/治水・耐震・免震/避難・被災者支援DX/気候適応)と、日本の国土強靱化戦略(国土強靱化基本法・5か年加速化対策15兆円・第1次実施中期計画20兆円強・防災庁設置)、観測網/耐震/防災テックの蓄積、巨大地震・気候激甚化という切迫した必要に接地して導出。代表例は射程・確度と日本の強み・公的需要の大きさで抜粋。
民間市場の推計は定義差で一桁開くが、閣議決定された政府事業規模20兆円強が確たる投資の土台になる。
防災・国土強靱化の経済性は、民間市場より政府の計画事業規模が確固たる土台になる。5か年加速化対策は約15兆円、第1次国土強靱化実施中期計画は20兆円強と、いずれも閣議決定された一次情報である。一方で防災テック市場やレジリエンス市場の規模は、何を含めるかで一桁以上開く二次情報にとどまり、根拠の置きどころが定まらない。では投資の根拠を何に求めるべきか。この分野の根拠は回避できる被害額にあり、事前防災に1を投じて将来の被害を数倍減らせるかが経済的な評価軸になる。南海トラフ巨大地震の想定経済被害は最悪で200兆円を超える。
市場データ・図表の詳細を開くSECTION F
防災・国土強靱化の経済性は、民間市場より政府の計画事業規模が確固たる土台になる。5か年加速化対策(2021-2025年度)は事業規模約15兆円、第1次国土強靱化実施中期計画(2026-2030年度)は20兆円強と、いずれも閣議決定された一次情報である。一方『防災テック市場』『レジリエンス市場』の規模は、何を含めるか(防災IT/災害管理システムか、耐災インフラ全体か)で一桁以上開く二次情報である。さらに、この分野は投資の根拠が回避できる被害額にある点が特徴で、事前防災に1を投じて将来の被害を数倍減らせるかが経済的な評価軸になる。ここでは①政府の国土強靱化投資の規模と内訳(一次)②インフラ維持管理・更新費の将来推計(一次・国交省試算)③防災テック市場と自然災害の経済被害(二次・推計の幅が大きい)を分けて示す。
政府の国土強靱化投資 ※一次情報(閣議決定資料)
インフラ維持管理・更新費の将来推計 ※一次情報(国交省試算・前提で幅大)
防災テック・レジリエンス市場 ※二次情報(定義差大・要確認)
自然災害の経済被害 ※二次情報(推計の幅大・要確認)
掲載企業の研究領域 — 全社ベースCLR 法人番号接続
上の企業一覧に載る上場企業について、有価証券報告書の研究開発活動から抽出した全社の研究領域を引いた。★これは会社全体の研究であって、本分野に限った研究ではない。(例: 造船の企業でも、水素ガスタービンや原子炉が並ぶ。本分野の研究と読み替えないこと。)★法人番号での接続だが、その法人番号自体は社名の一致で当てたものであり、同定の強さは社名一致に留まる。
パスコ(PASCO)9件
大林組6件
応用地質6件
鹿島建設6件
AI亀裂検出・IoTセンサ・建設ロボットが、担い手不足下の予防保全と省力化を2026年前後に実装段階へ押し上げる。RMP 技術ロードマップDB 接地
災害が頻発化・激甚化する一方で、防災・建設の担い手不足が将来にわたり見込まれている。人手に頼る点検と施工を続ければ、一斉に老朽化するインフラの予防保全は立ち行かなくなる。省力化と常時監視をどこまで技術で代替できるかが問われる。2026年前後にAIによる建造物亀裂検出が精度99%へ、IoTセンサが低コスト化と電源自給へ、建設ロボットの安全基準が統一化へ進み、災害リスク予測・自動施工・遠隔施工がデジタル新技術として予防保全と省力化を実装段階へ押し上げる。
- 12026第1次国土強靱化実施中期計画の開始(令和8年度〜)。114施策を5年
- 22026柱1 防災インフラの整備・管理(5.8兆円)の推進
- 32026柱2 交通・通信・エネルギー等のライフライン強靱化(10.6兆円)の
- 42026柱3 新技術の活用による国土強靱化施策の高度化(0.3兆円)の推進
- 52026柱4 官民連携の強化(1.8兆円)の推進
- 62026柱5 地域防災力の強化(1.8兆円)の推進
- 72030大口径下水道管路の健全性確保率 100%(令和12年度まで)
- 82030第1次実施中期計画の期間終了(令和8〜12年度の5年間)
- 92051大規模地震時に確保すべき海上交通ネットワークの整備完了率 100%(
- 102056緊急輸送道路上の橋梁の耐震化率 100%(令和38年度まで)
全マイルストーンの一覧(TRL遷移・反証条件・一次出典)を開く10件
| 射程 | 実現年 | TRL | マイルストーン |
|---|---|---|---|
| 近(〜3年) | 2026 | 第1次国土強靱化実施中期計画の開始(令和8年度〜)。114施策を5年間・20兆円強の事業規模で集中実施 出典 | |
| 近(〜3年) | 2026 | 柱1 防災インフラの整備・管理(5.8兆円)の推進 出典 | |
| 近(〜3年) | 2026 | 柱2 交通・通信・エネルギー等のライフライン強靱化(10.6兆円)の推進反証条件: 5本柱で最大の配分。ライフライン側に重心があることが、この計画の性格を決めている 出典 | |
| 近(〜3年) | 2026 | 柱3 新技術の活用による国土強靱化施策の高度化(0.3兆円)の推進反証条件: 5本柱で最小の配分。新技術は主役ではなく補完に位置づけられている 出典 | |
| 近(〜3年) | 2026 | 柱4 官民連携の強化(1.8兆円)の推進 出典 | |
| 近(〜3年) | 2026 | 柱5 地域防災力の強化(1.8兆円)の推進 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2030 | 大口径下水道管路の健全性確保率 100%(令和12年度まで) 出典 | |
| 中(3〜10年) | 2030 | 第1次実施中期計画の期間終了(令和8〜12年度の5年間) 出典 | |
| 遠(10〜30年) | 2051 | 大規模地震時に確保すべき海上交通ネットワークの整備完了率 100%(令和33年度まで) 出典 | |
| 遠(10〜30年) | 2056 | 緊急輸送道路上の橋梁の耐震化率 100%(令和38年度まで)反証条件: 30年先の目標であり、中期計画の5年間では達成度の一部しか測れない 出典 |
予測の本文一覧(機関・目標年・出典)を開く14件
- IDC〔2026年〕 42.0%:Digital twin adoption in construction projects reaches 42% by 2026 出典
- BNEF Bloomberg〔2027年〕 15.0$B:Construction tech investment reaches $15 billion annually by 2027 出典
- McKinsey Global Institute〔2027年〕 150000.0M units:LEED-certified buildings reach 150,000 globally by 2027 出典
- IDC〔2028年〕 75.0%:BIM adoption rate in construction reaches 75% in developed nations by 2028 出典
- IDC〔2028年〕 22.0%:Construction automation adoption reaches 22% of large projects by 2028 出典
- EU European Commission〔2028年〕 100.0%:BIM mandate adoption in public construction projects reaches 100% in developed nations by 2028 出典
- DARPA〔2028年〕 8.0TRL:3D concrete printing for buildings reaches technical maturity (TRL 8) by 2028 出典
- Gartner Hype Cycle〔2028年〕 65.0%:BIM software adoption in APAC construction reaches 65% by 2028 出典
- IDC〔2028年〕 12.0B units:Smart city IoT device deployment reaches 12 billion by 2028 出典
- Goldman Sachs Research〔2028年〕 1.2$B:CLT construction market in North America reaches $1.2 billion by 2028 出典
- McKinsey Global Institute〔2028年〕 12.8$B:Water reuse market grows to $12.8 billion by 2028 出典
- IRENA〔2028年〕 35.0%:Desalination plant installations with renewable energy reach 35% of new capacity by 2028 出典
各盲点の根拠・反証基準・出典を開く12件
- 重大3Dプリント建物の構造的耐久性が未検証:プリントコンクリート層間の接着強度、長期クリープ挙動、地震動応答がまだ十分に検証されていない。特に日本の高地震地域での適用は過早。反証基準: 3Dプリント建築物が従来RC造と同じ耐震基準で10年以上使用されるケーススタディが複数公表されたか 出典
- 重大スマートシティ投資利回りの不透明性:スマートシティ初期投資に数百億~数千億円が投じられるも、ROI明確化に失敗。多くは補助金・税金頼みで民間利益性なし。反証基準: スマートシティプロジェクトが初期投資を5年以内に回収した実績が複数地域で公表されたか 出典
- 重大スマートシティのサイバーセキュリティ過信:統合IoT基盤への依存で、単一障害点リスク増大。都市基盤システムがサイバー攻撃に耐性あるとの根拠が不充分。未実証のまま拡大。反証基準: スマートシティ物理基盤が国家規模のサイバー攻撃(APT)で15分以上サービス喪失しない実績が公式実験で示されたか 出典
- 重大杭基礎の長期沈下リスク隠蔽:旭化成データ改ざん事件後も、杭施工の深度・支持力検査の実施率が不完全。検査簡略化で不十分施工が見逃される懸念。反証基準: 杭基礎全工事での支持力確認検査が100%実施・公開されたか建設業統計で示されたか 出典
- 重大スマートシティ個人データプライバシー侵害リスク:都市IoTセンサー網が移動・購買・生活パターンを常時把握。市民同意なしの大規模データ収集が規制の隙間で拡大。反証基準: スマートシティ導入自治体でセンサーデータの個人識別・追跡が技術的に不可能化されたか法的検証が公表されたか 出典
- 重大スマートシティ運営の継続性問題:初期導入は政府補助金だが、維持管理・システム更新の長期コストが自治体単独では困難。多くプロジェクトが初期段階で停滞。反証基準: スマートシティプロジェクトが補助金終了後5年以上継続運営されている事例が全導入事例の50%以上到達したか 出典
- 重大CLT(マスティンバー)の火災安全性データ限定:CLT高層建築の火災性能が未実証。大規模火災実験(ISO 9239)は数十棟レベル。カナダ・北米での実績は限定的。日本では鉄骨造と同等の難燃基準が未策定。反証基準: CLT建築物が鉄骨造と同等の火災耐性(耐火時間・煙発生・延焼速度)を独立機関で実証すること 出典
- 重大スマートシティの監視・プライバシー侵害リスク:スマートシティの位置トラッキング・行動分析が市民プライバシー侵害と化す可能性。透明性なしのAIアルゴリズム(交通制御・エネルギー配分)が不公正を増幅。GDPR違反事例も報告。反証基準: スマートシティプラットフォームが個人追跡を技術的に不可能にし、独立監査で検証できることを実証すること 出典
- 重大Sidewalk Labs(Toronto)の失敗と市民反発:GoogleのSidewalk Labsが$900M投資でTorontoスマートシティ計画(Quayside)を2020年で中止。市民プライバシー懸念・経済性不透明・ガバナンス問題が理由。反証基準: スマートシティプロジェクトが市民プライバシー・ガバナンス・経済性について事前透明性レポートを公開し、市民投票で50%以上の支持を得られることを実証すること 出典
- 重大CLT製造の環境負荷・林地破壊リスク:CLT需要急増で伐木圧力加速。持続可能林業認証(FSC)の形骸化・偽装報告が増加。ロシア・北欧の違法伐木材がCLTに混入する懸念。カーボンクレジット詐欺の温床。反証基準: CLT製品がFSC認証100%、サプライチェーン追跡が外部監査で確認され、違法伐木混入率0%であることを1年以上実証すること 出典
小型SAR衛星や被害把握の防災テックが、観測網の蓄積を海外でも稼げる成長産業へ転換する担い手になる。JPS 国内スタートアップDB 接地
国内スタートアップ正本(法人番号主キー)から、大学発・具体技術・資金調達をシグナルに非自明性スコアで選別した(著名な大手は減点し、見落とされがちな深い技術を前面に)。各社の中核技術・大学/研究室・直近調達(額・リード投資家)・上場状況を実データで示す。
国土強靱化基本法と流域治水・盛土規制の連動が事前防災の制度的土台を固め、防災庁の設置が分散した司令塔を束ねる。
日本は2013年制定の国土強靱化基本法を土台に、堤防や耐震などのハードと避難や情報などのソフトを一体で進めてきた。災害対策基本法・建築基準法の耐震基準・水防法と河川法による流域治水・盛土規制法・土砂災害防止法が個別に積み重なる一方で、運用の司令塔は分散していた。切迫する巨大地震と気候の激甚化に、制度をどう束ねて応えるかが課題となる。流域治水関連法と盛土規制で事前防災の土台を固めつつ、2026年に司令塔となる防災庁の設置を目指し、制度を一体運用へ向かわせる。
規制ロードマップの全項目を開く7件
防災科学技術研究所・東北大学IRIDeS・京都大学防災研究所を中核とする総合災害科学が、地震・津波・治水の知を実装へ橋渡しする。RID 研究者DB(正規)接地
研究者正本(RID / 31.1万人版・本体23.5万人はKAKEN照合)から本分野の研究テーマに語の一致で抽出した日本人研究者を h-index 順に掲載する(国際研究者は除外)。★抽出は語の一致であって、この分野の研究者であることの同定ではない。★件数は全17領域で300名に固定されており、適合の閾値ではなく定員である。 ★無作為標本 14 名(乱数種 20260831・判定基準を抽出前に固定)で構成を実測した。判定基準は「防災・国土強靱化そのものの研究か」。この領域の中核に当たるのは 14/14(95%信頼区間 78〜100%)。14/14 が防災・地震学(長周期地震動・津波早期警報・避難支援・災害復興・災害記憶の継承)。無関係 0/14。判定は Claude(単独判定・二重判定なし)。
- 足立 守h-index 4研究者詳細ページ ▸研究テーマ:断層破砕帯評価で地震防災を革新足立守氏の研究は、地球ができてからの長い歴史を知るために、特に古い鉱物「ジルコン」の年齢を調べることに力を入れています。ジルコンは地球の初期(約40億年前)から存在し、その中に含まれる放射性元素を使って年代を測定します。また、日本の地震が起きやすい場所の地下にある「断層破砕帯」という壊れた岩の帯の形や大きさを、重力の変化や衛星からのデータを使って詳しく調べて
- 藤田 直子h-index 3研究者詳細ページ ▸研究テーマ:防災デザインで実現する持続可能な地域づくり藤田直子教授の研究は、自然の力を活かした「グリーンインフラ」(自然環境を利用した防災や環境整備)の導入が進まない原因を、見た目のデザインと制度設計の両面から解明し、特に財政や人材が限られた地方自治体でも実現可能な方法を探っています。また、熊本地震などの災害データを使い、地域の災害リスクを地図上で分析(地理空間情報解析)し、文化的な資源である神社の立地と災害の
- 斎藤 実篤h-index 2研究者詳細ページ ▸研究テーマ:プレート沈み込み帯の地下構造解明で地震防災を強化斎藤実篤氏の研究は、海底を掘削して得られた地層の試料と、掘削孔内で計測したデータを組み合わせて、地下の地質構造や物質の性質を詳しく調べることに取り組んでいます。特に、プレートが沈み込む場所での地層の変化や水分の動きを高い精度で解析し、地震が起こる仕組みの理解を深めています。この研究は、地震や津波などの自然災害を予測し、被害を減らすための科学的な基盤を作ること
- 西村 太志h-index 2研究者詳細ページ ▸研究テーマ:火山噴火の仕組み解明による防災強化西村太志教授の研究は、火山が爆発するときの仕組みを詳しく調べることです。火山の中では、マグマ(溶けた岩)が液体から気体や固体に変わりながら高速で噴き出します。この動きを、たくさんの地震計や高性能カメラで観察し、マグマの動きや噴火の強さを詳しく調べています。また、火山の形が変わる様子や地震の波の速さの変化も測って、火山の活動を見守る方法を開発しています。さらに
- 遠藤 邦彦h-index 2研究者詳細ページ ▸研究テーマ:リアルタイム火山防災と地質解析による都市安全遠藤邦彦氏の研究は、東京の地面の形や中身を詳しく調べることで、地震や地盤の問題を防ぐ手助けをしています。また、富士山などの火山がいつ噴火するかをリアルタイムで予測し、住民の安全を守るための新しい地図(ハザードマップ)を作っています。さらに、過去2万年の東アジアの気候や環境の変化を調べ、地球の長い歴史の中でどのように自然が変わってきたかを理解しようとしています
- 岩下 和義h-index 2研究者詳細ページ ▸研究テーマ:液状化対策と地盤力学による防災技術革新岩下和義氏の研究は、地震による地盤の液状化(地面が水を含んで柔らかくなる現象)や斜面崩壊の仕組みを詳しく調べ、安全なまちづくりに役立てることを目的としています。特に、地盤内に注入する小さな気泡(マイクロバブル)の動きや、砂粒子同士の力の伝わり方を実験とコンピューターシミュレーションで解析し、液状化を防ぐ新しい工法を開発しています。また、伝統的な土壁の耐震性を
- 青木 誠h-index 2研究者詳細ページ ▸研究テーマ:レーザー技術で極端気象の防災を進化青木誠氏の研究は、レーザーを使った「ライダー」という技術で、風や水蒸気、温度、大気中の微粒子などの気象データを高い精度で広い範囲にわたり観測することを目指しています。特に、Ho:LuLiF結晶を使った新しいファイバーレーザ(光を増幅する装置)や、目に優しい中赤外レーザの開発に取り組んでいます。これにより、増加する豪雨や台風などの極端な気象現象に対して、より正
- 陶野 郁雄h-index 2研究者詳細ページ ▸研究テーマ:地盤の液状化と複合災害予測による防災対策陶野郁雄氏の研究は、地震や豪雨などの自然災害で起こる地盤の沈下や液状化(地面が水を含んでゆるくなる現象)を詳しく調べています。砂を多く含む土の繰返し圧縮に対する反応を実験で明らかにし、地盤の変形を理解しようとしています。液状化が起こる地層の積み重なり方を調べ、液状化の深さや範囲を予測する新しい方法を開発しました。さらに、地震や火山噴火、豪雨が同時に起こる複合
- 岡本 耕平h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:時間と空間で考える防災と地域の変化岡本耕平教授は、地域の変化や災害時の避難行動、地名の使い方、多文化共生など、社会のさまざまな課題を地理学の視点から研究しています。特に、時間と場所の関係を分析する時間地理学を使って洪水時の避難行動を調べ、より安全な避難方法を提案しています。また、アジアの農村の都市化や日本の地名の決め方の問題、外国人女性の地域での孤立問題も扱い、地域社会の持続可能な発展や防災
- 市川 温h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:水の流れを解明し持続可能な防災を目指す研究市川温教授の研究は、雨や水が山や土地の中をどう流れるかを詳しく調べることから始まります。これにより、洪水や土砂崩れの危険を予測しやすくし、被害を減らすための方法を考えています。また、雨が少なくなる「渇水」が農作物にどんな影響を与え、世界の食べ物の安全にどう関わるかも調べています。さらに、発展途上国のように水の情報が少ない場所でも使える新しい危険予測の方法を作
- 神原 咲子h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:災害看護と減災ケアで地域防災を革新神原咲子教授の研究は、災害時に地域の人々が感じる危険をデータ化し、みんなが納得できる避難計画や支援の仕組みを作ることを目指しています。スマホやパソコンを使い、水や空気の状態、病気の広がりなどを地域の人と一緒に調べて地図に表示し、災害時に必要なケアをすぐに共有できるようにしています。また、災害時の看護活動を平常時から準備し、多文化の人々も含めて健康を守る仕組み
- 真野 明h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:沿岸工学と洪水リスク評価による防災強化真野明氏の研究は、津波や豪雨などの自然災害で起こる海岸や川の土砂の動きや地形の変化を詳しく調べています。例えば、2011年の東北大震災津波で壊れた海岸の堤防の侵食の仕組みを数値計算や実験で明らかにし、より強い防災施設の作り方を提案しています。また、南米のアマゾン川流域やアジアのガンジスデルタでは、洪水の危険や地下水の有害なヒ素汚染を調べ、安全な水の確保に役立
- 藤澤 和謙h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:土と水の力学で侵食を予測し防災へ藤澤教授の研究は、土と水が接する場所で起こる土の削れや流れを詳しく調べています。特に、ため池や堤防の中で水が土を少しずつ運び出してできる空洞や水の通り道を、壊れる前に見つける方法を開発しています。これには、土の動きや水の流れを実験で調べたり、コンピューターで計算したりする技術を使います。こうした研究は、自然災害での被害を減らし、みんなが安全に暮らせる社会を作
- 磯和 勅子h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:多世代連携で築く高齢者防災力強化磯和教授の研究は、高齢者が災害時に安全に避難できるよう、地域の人たちが協力して支える仕組みづくりを目指しています。中高生や大人が一緒に高齢者の防災について学び、防災サポーターとして活動するプログラムを作成しています。また、高齢者が避難所で困らないように、地域の人たちが自分たちで避難所のルールを決める方法も考えています。さらに、高齢者の体の力や免疫力を保つため
- 丸山 孝彦h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:火山活動リスク評価で地域防災を革新丸山孝彦氏の研究は、東北地方の火山が過去にどのように活動してきたかを詳しく調べ、その活動の仕組みや火山から出る物質(火山噴出物)を分析しています。これにより、火山がいつどのように噴火するかを予測しやすくし、火山周辺で起こる土砂崩れ(斜面災害)などの二次災害の発生も予測できるようにしています。また、火山の岩石に含まれる特別な元素の割合(同位体比)を調べることで
- 鷹野 澄h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:IT強震計で実現する地域参加型地震防災鷹野澄氏の研究は、地震による被害を減らすために、誰でも簡単に設置できる安価なIT強震計(地震の揺れを測る装置)を開発し、地域の人々が自分たちの周りの揺れをリアルタイムで知ることができる仕組みを作ることを目指している。これにより、地域ごとの細かな揺れの違いを把握しやすくなり、住民が迅速に安全な行動を取れるようになる。IT強震計は高速で正確なデータを取得し、ネッ
- 正木 和明h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:強い地震の揺れを正確に予測し地域防災に活かす正木和明教授の研究は、大地震で発生する強い揺れ(強震動)を正確に予測することを目指しています。特に、地震の起こる場所(震源)の特徴を詳しく調べる方法(震源インバージョン)や、地形や地下の土の状態が揺れにどう影響するかを解析しています。これにより、地域ごとに異なる揺れの強さや被害の出やすさを予測し、防災計画に役立てることが可能になります。さらに、観測データを使
- 飯塚 明子h-index 1研究者詳細ページ ▸研究テーマ:多文化共生で築く地域防災の新モデル飯塚明子准教授の研究は、日本の地域社会で増える外国人住民が災害時に孤立しないようにすることを目的としています。外国人が防災活動に主体的に参加できる仕組みを作るため、栃木県で外国人の防災意識や対応状況を調査し、国内外の先進事例を分析しました。これにより、多文化共生(異なる文化や言語を持つ人々が共に暮らす社会)を踏まえた地域防災(地域の災害に備える活動)の新しい
E-ディフェンスと観測網MOWLASを擁する防災研究機関群が、世界有数の災害科学拠点として実装知を供給する。
日本は世界有数の災害多発国として、防災科学の研究拠点を厚く擁する。地震・津波・治水・気象の知見は、観測網・実大実験・社会防災に分かれて長く蓄積されてきた。問われるのは、その知をどう現場の実装へ橋渡しするかである。防災科学技術研究所のE-ディフェンスと観測網MOWLAS、東北大学IRIDeS、京都大学防災研究所、土木研究所ICHARMが、地震・津波・流域治水の研究を地域の減災へ接続し、海外のUSGSやデルフト工科大学とも知を交える。
大学・研究機関施策の一覧を開く大学・研究機関 10
国内 大学・研究機関施策(8機関)
海外 大学・研究機関施策(2機関)
政府は第1次国土強靱化実施中期計画を危機管理投資として推進し、新技術活用と防災技術の官民一体海外展開を方針に据える。
内閣官房 日本成長戦略本部の方針と、各審議会の議事に基づく公式一次情報(捏造ゼロ)。担当体制・主要目標(KPI)を要約し、有識者名簿・審議内容の原文は折りたたみに格納する。
- 類型
- 自律性・不可欠性を起点とした成長
- 担当大臣
- 国土強靱化担当大臣(出席)、防災大臣(出席)
- 検討体制
- 国土強靱化推進会議(有識者19名)
- 関係府省
- 関係省庁(防災、総務、農水、経産、エネ、国交)
- 防災・国土強靱化分野は、人命を守るだけでなく災害時にも交通・通信・エネルギーを強靱化して経済を回す「危機管理投資」として政府に位置づけられる。2025年6月閣議決定の第1次国土強靱化実施中期計画が補正予算からスタートしており、上下水道管路の更新やインフラ老朽化対策を中心に成長投資へ接続する取組がドライバーとなる。
- 災害が頻発化・激甚化し将来的な担い手不足が見込まれる中、災害リスクの予測技術・施工の自動化遠隔化・防災資機材といったデジタル等の新技術の活用が不可欠とされる。技術ロードマップDBでもAI亀裂検出精度99%や建設ロボット労働生産性2倍化(2027年・TRL8)がH1マイルストーンとして観測され、技術駆動の省力化が分野を牽引する。
- 災害大国日本が強みを持つ防災技術を、技術開発・商品化・現場実装の好循環で防災産業として振興し、官民一体で海外展開して「海外でも稼げる成長産業」につなげる方針がドライバーとなる。現場ニーズの製品反映、有望技術の登録認証制度、公共調達による需要喚起、国際標準化に取り組むとされる。
- ロードマップ全体の方向性として、無人化・省力化・データドリブンなインフラ(情報通信立国)、再生可能な資源循環(資源循環立国)、レジリエンス(国土強靱化)の3つが日本の成長の柱と整理され、防災・国土強靱化は「レジリエンス立国」として国家像に位置づけられる。マテリアル・バイオ・情報通信分野と連関した複線的戦略がドライバーとなる。
- H1
- 2026-27年にかけてAIによる建造物亀裂検出(精度99%・TRL8)、IoTセンサ低コスト化・電源自給、構造ヘルスモニタリングの常時監視標準化、BIM国際標準ISO19650フル実装(官公庁工事で適用率向上)が進む。政府の第1次実施中期計画が補正予算から走り、災害リスク予測・自動施工技術の現場実装サイクルが立ち上がる。
- H2
- 2028-30年代前半にかけて技術ロードマップDB予測では水再利用市場が約128億ドル、漏水検知・需要予測のスマート水管理が拡大し、上下水道管路更新とIoT水質監視が連動する。気候災害の増加と保険料急騰を背景に気候変動対応型建設の標準化(技術ロードマップDBシナリオ確率0.35)が進み、レジリエンス投資が制度的に定着していく射程。
- H3
- 長期射程では、防災技術が技術開発・商品化・現場実装の好循環を経て成熟し、官民一体の海外実証・国際標準化を通じて「海外でも稼げる成長産業」として確立する。情報通信立国・資源循環立国とあわせたレジリエンス立国の国家像が定着し、自律建設ロボット産業の出現(rmp disruptionシナリオ)が分野構造を変える可能性がある。
有識者リスト(19名)
| 氏名・職 | 所属 | 研究テーマ |
|---|---|---|
| 小林 潔司 名誉教授(座長) | 京都大学 | source_grounded |
| 浅野 幸子 共同代表 | 減災と男女共同参画研修推進センター | source_grounded |
| 磯打 千雅子 特命准教授 | 香川大学地域強靱化研究センター | source_grounded |
| 臼田 裕一郎 センター長 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 総合防災情報センター | source_grounded |
| 大木 聖子 准教授 | 慶應義塾大学環境情報学部 地震災害研究室 | source_grounded |
| 大串 葉子 教授 | 同志社大学大学院ビジネス研究科 | source_grounded |
| 大友 康裕 院長 | 独立行政法人国立病院機構災害医療センター | source_grounded |
| 加藤 孝明 教授 | 東京大学生産技術研究所 | source_grounded |
| 熊谷 晋一郎 教授 | 東京大学先端科学技術研究センター | source_grounded |
| 鍬田 泰子 教授 | 神戸大学大学院工学研究科 | source_grounded |
| 河野 俊嗣 知事 | 宮崎県 | source_grounded |
| 近藤 元博 教授 | 愛知工業大学総合技術研究所 | source_grounded |
| 田中 里沙 学長 | 事業構想大学院大学 | source_grounded |
| 戸田 祐嗣 教授 | 名古屋大学大学院工学研究科 | source_grounded |
| 中嶋 康博 教授 | 女子栄養大学栄養学部 | source_grounded |
| 中村 太士 名誉教授 | 北海道大学 | source_grounded |
| 福和 伸夫 名誉教授 | 名古屋大学 | source_grounded |
| 藤沢 久美 理事長 | 株式会社国際社会経済研究所 | source_grounded |
| 屋井 鉄雄 特任教授・名誉教授 | 東京科学大学 | source_grounded |
出典: https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/kaigi/dai2/shiryou1-2.pdf
審議内容(5件・委員/大臣の発言・論点・決定)
日本の国土強靱化基本法、米国FEMAの事前防災、EU市民保護メカニズムが、事前防災と国際協調への重心移動を示す。
災害への備えは、各国が制度と資金の枠組みで競い合う領域である。日本は国土強靱化基本法と中期計画、米国はFEMAとBRIC事前防災助成、EUは市民保護メカニズムと適応戦略と、力点はそれぞれ分かれている。事前防災と国際協調をどう両立させるかが共通の問いになる。いずれも災害後の対応から事前の被害軽減へ重心を移しており、日本は強みを持つ防災技術を官民一体で海外展開し、国際標準化を通じてレジリエンス立国を確立する道筋にある。
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この分野とつながる成長分野
本分野は他の成長分野と技術ロードマップ・スタートアップを共有している。下記は実データ(共通の技術テーマ・共通の企業)で結ばれた関連分野で、投資・連携の波及はこの隣接関係に沿って広がる。
技術・学術の詳細レポート — 参考文献・学術的裏付けこの DB の特徴
以降は専門家向けの深掘り(参考文献つき)。技術ロードマップ・学術分野レンズ・シナリオ検証と盲点・産業相互影響・シグナル/リスクを、技術知と社会科学の学術知で裏打ちする。各小節末に著者・年・出典つきの参考文献を一覧。
技術・学術の詳細レポート(参考文献つき)を開くこの DB の特徴
① 技術ロードマップ詳細(学術知接地)
豪雨をいつ・どこで降るか予測し、避難の時間を稼ぐのが早期警戒技術。気象庁はスーパーコンピュータと数値予報で線状降水帯を半日前に呼びかける運用を進め、市町村単位の予測へ精度を高めている。
早期警戒・予測は、豪雨や洪水を事前に読み、避難の時間を生み出す防災の入口である。とくに災害をもたらす線状降水帯(次々と発生する積乱雲が列をなして同じ場所に大雨を降らせる現象)の予測が近年の焦点になっている。気象庁は2022年に『線状降水帯による大雨の半日前からの呼びかけ』を始め、当初は全国11の地方単位だった発表を、2024年5月から府県単位へと絞り込んだ。背後にあるのはスーパーコンピュータと数値予報の進歩で、2024年3月に新しい計算機を導入して解像度2キロメートルのモデルで18時間先まで計算できるようになり、2026年には1キロメートルへの高解像度化、2029年度には市町村単位の予測を目指す。河川では洪水予測(雨量からダム・河川の水位を予測する)が進み、ダムを事前に放流して洪水に備える運用も広がる。予測の精度が一段上がるたびに、避難指示を出せる時間が延び、助かる命が増える。早期警戒は、最も費用対効果の高い防災投資の一つである。
地震は予知できないが、揺れが伝わる速度の差を使えば数秒〜数十秒前に警報を出せる。日本は緊急地震速報と海底地震・津波観測網で、強い揺れと津波の到達を直前に知らせる世界有数の体制を持つ。
地震そのものを事前に予知することは現在の科学ではできない。だが、地震波のうち先に届く小さな揺れ(P波)と後から届く大きな揺れ(S波)の速度差を使えば、強い揺れが来る数秒から数十秒前に警報を出せる。これが緊急地震速報で、日本では2007年10月に一般向け運用が始まり、テレビ・スマートフォン・防災行政無線を通じて瞬時に届く世界に先駆けた仕組みである。観測を支えるのは、全国に張り巡らされた地震計のネットワーク(防災科学技術研究所のHi-net等)と、海底に敷設した地震・津波観測網(南海トラフのDONET、日本海溝のS-net)である。海底の観測点は、沖合で発生した地震と津波をいち早く捉え、沿岸到達前の津波警報を支える。さらに衛星測位(GNSS)で地殻のひずみの蓄積を監視し、巨大地震の準備過程を探る研究も進む。地震を止めることはできないが、来る揺れと津波を一秒でも早く知らせる技術が、避難と被害軽減の土台になっている。
災害直後に被害の全体像を把握するのが衛星とドローン。雲を透視するSAR衛星や狭い空間に入る小型ドローンが、人が近づけない被災地を上空から観測し、救助と復旧の判断を速める。
災害が起きた直後に問われるのは、どこがどれだけ壊れたかを素早く把握することである。これに上空から答えるのが衛星とドローンである。とくにSAR衛星(合成開口レーダー衛星)は、電波を使うため雲や夜間・噴煙に妨げられず地表を観測でき、浸水範囲・土砂崩れ・建物倒壊を昼夜・天候を問わず捉えられる。日本のSAR衛星スタートアップSynspective(シンスペクティブ)は小型SAR衛星群を構築し、防災・被災状況把握への活用を進める(宇宙分野⑤とも重なる)。地上に近い領域ではドローンが活躍する。千葉発のLiberaware(リベラウェア)は世界最小級の小型ドローンで、煙突やダクト、倒壊家屋の隙間といった人が入れない狭小空間を点検・調査でき、2024年の能登半島地震でも倒壊建物の調査に使われた。SNSや報道映像をAIで解析して被害をリアルタイムに地図化するSpectee(スペクティ)やJX通信社のFASTALERTのような情報解析も、上空観測と組み合わさって被災地の『今』を描き出す。観測の速さが、救助と復旧の初動を決める。
高度成長期に造ったインフラが一斉に老朽化する。橋・トンネル・水道をセンサとAIで監視し、デジタルツインで劣化を予測して、壊れる前に直す『予防保全』へ転換する技術が国土強靱化の柱になる。
日本のインフラの多くは1960〜70年代の高度経済成長期に造られ、いま一斉に老朽化の時期を迎えている。建設後50年を超える橋・トンネル・水道管が急速に増え、限られた財源と人手で膨大なストックをどう維持するかが国土強靱化の中核課題である。鍵になるのがインフラ老朽化モニタリングである。橋やトンネルに振動・ひずみ・腐食を測るセンサを取り付け、ドローンや画像AIでひび割れを自動検出し、得たデータをデジタルツイン(現実の構造物をデジタル空間に再現したそっくりの模型)の上で解析して、いつ・どこが危なくなるかを予測する。これにより、壊れてから直す『事後保全』から、劣化の兆候を捉えて壊れる前に手を打つ予防保全へと転換できる。予防保全は長期の維持費を大きく抑え、突然の通行止めや断水を防ぐ。第1次国土強靱化実施中期計画(2026〜2030年度)も、老朽化対策とデジタル・新技術の活用を明確に位置づける。地味だが、巨大な既存ストックを守るこの技術が、災害に強い国土の足腰を支える。
堤防・ダムで水を治める治水と、建物・橋を揺れに耐えさせる耐震・免震は、ハード防災の二本柱。流域全体で水を受け止める『流域治水』と、揺れを地面から切り離す免震技術が進化している。
災害に物理的に備えるハードの防災は、大きく治水と耐震・免震の二本柱からなる。治水はかつて堤防とダムで水を河道に閉じ込める発想が中心だったが、想定を超える豪雨が増える中で、河川・流域・まちの全体で水を受け止め・貯め・逃がす流域治水へと考え方が変わった。遊水地・調整池・田んぼダム(水田に一時的に水を溜める)・雨水貯留など、流域のあらゆる場所で洪水を分散させる総力戦である。一方の耐震・免震は、地震の揺れから建物・橋・インフラを守る技術である。柱や壁を強くして揺れに『耐える』耐震、揺れのエネルギーを吸収する装置を組み込む制震、そして建物と地面の間に積層ゴムなどの装置を入れて揺れそのものを建物に伝えにくくする免震がある。日本は1981年の新耐震基準、1995年の阪神・淡路大震災を経て世界最高水準の耐震技術を積み上げてきた。古い建物の耐震改修をどこまで進められるかが、被害を左右する。水を治め、揺れを逃がす——この基礎技術の積み重ねが、災害大国の暮らしを底で支えている。
助かるかどうかは情報が届くかで決まる。避難情報の的確な発信から、罹災証明のデジタル発行・被災者台帳まで、避難と生活再建をデータでつなぐ仕組みが、災害後の混乱を減らす。
防災は壊れた物を直すだけでなく、人を逃がし・暮らしを立て直す営みでもある。その効率を左右するのが避難支援・被災者支援のデジタル化(DX)である。避難の段階では、危険度を地図上に色で示す気象庁の『キキクル』、5段階の警戒レベル、スマートフォンへの緊急速報メールなど、危険を分かりやすく届ける仕組みが整ってきた。だが、高齢者・障害者・外国人など逃げ遅れやすい人にどう届けるかは依然として課題で、個別の避難計画づくりが進む。災害が起きた後は、被災者の生活再建が長い戦いになる。住宅の被害を証明する罹災証明書の発行をデジタル化し、被災者の状況を一元管理する被災者台帳を整え、支援金・仮設住宅・各種手続きをワンストップでつなぐ取り組みが各自治体で広がる。避難所の運営も、物資の在庫管理や混雑状況の可視化にデータが使われ始めた。発災直後の数時間から、数年に及ぶ復興まで——情報と手続きを途切れさせない仕組みが、二次的な被害(避難の遅れや手続きの遅延による苦境)を減らしていく。
温暖化で豪雨や高潮が強まる前提に立ち、被害を抑えるのが気候適応。雨の降り方の変化を見込んで堤防やまちを設計し直し、自然の力を活かすグリーンインフラも組み合わせる。
気候変動はもはや遠い未来の話ではなく、防災の前提条件そのものを変えつつある。地球温暖化で大気が含む水蒸気が増え、豪雨・台風・高潮が強大化し、これまでの想定を超える災害が頻発する。これに合わせて備えを更新するのが気候変動への適応である。適応の出発点は、過去の実績ではなく将来の気候を見込んで設計することである。河川やダムの計画を、温暖化で増える雨量を織り込んで見直す『気候変動を踏まえた治水計画』への転換が進み、堤防のかさ上げやまちづくりの規制も将来の浸水想定に合わせて引き直される。コンクリートの構造物だけに頼らず、森林・湿地・遊水地など自然の力を活かす(グリーンインフラ・生態系を活かした防災=Eco-DRR)発想も組み合わさる。日本は気候変動適応法(2018年)のもと、農業・水資源・健康・防災を横断する適応計画を持つ。温暖化を抑える緩和(脱炭素⑥分野)と、避けられない変化に備える適応は車の両輪であり、どちらが欠けても激甚化する自然には立ち向かえない。
- 気象庁(2025)「線状降水帯に関する情報」 気象庁 ・ 出典
- 気象庁(2025)「気象業務はいま2025 トピックスII 線状降水帯や台風等による気象災害への対策」 気象庁 ・ 出典
- 気象庁(2024)「緊急地震速報について」 気象庁 ・ 出典
- 国立研究開発法人 防災科学技術研究所(2024)「陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS/S-net・DONET)」 防災科学技術研究所 ・ 出典
- Synspective株式会社(2024)「小型SAR衛星コンステレーションによる防災・災害状況把握」 Synspective ・ 出典
- 株式会社Liberaware(2024)「狭小空間点検ドローンによる被災建物調査(能登半島地震ほか)」 Liberaware ・ 出典
- 国土交通省(2024)「社会資本の老朽化対策(インフラ長寿命化・予防保全)」 国土交通省 ・ 出典
- 内閣官房 国土強靱化推進室(2025)「第1次国土強靱化実施中期計画」 内閣官房 ・ 出典
- 国土交通省(2021)「流域治水の推進(流域治水関連法)」 国土交通省 水管理・国土保全局 ・ 出典
- 国土交通省(2024)「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」 国土交通省 住宅局 ・ 出典
- 内閣府(防災担当)(2024)「避難情報に関するガイドライン(警戒レベル)」 内閣府 防災 ・ 出典
- デジタル庁・内閣府(2024)「被災者支援のデジタル化(罹災証明・被災者台帳)」 デジタル庁 ・ 出典
- 環境省(2018)「気候変動適応法・気候変動適応計画」 環境省 ・ 出典
- IPCC(2022)「Climate Change 2022: Impacts, Adaptation and Vulnerability (WGII)」 Intergovernmental Panel on Climate Change ・ 出典
② 学術分野レンズ詳細
地震がいつ・どこで・どれだけの規模で起きるかを研究するのが地震学。確定的な『予知』はできないと国際的に認められた一方、確率で将来を評価し、揺れの予測を高める方向へ重心が移った。
地震がなぜ・どこで・どれだけの規模で起きるかを解き明かすのが地震学である。地球の表面を覆うプレートの動きが断層にひずみを蓄積し、限界を超えて一気にずれることで地震が起きる——この大枠は20世紀後半のプレートテクトニクスの確立で理解が進んだ。しかし、特定の地震を『何月何日に起きる』と当てる確定的な予知は、現在の科学ではできないというのが国際的な共通認識である。1990年代の研究を経て、短期予知の困難が広く認められ、地震学の重心は『予知』から確率による評価と揺れの予測へと移った。日本では地震調査研究推進本部が、活断層や海溝型地震ごとに『今後30年以内に起きる確率』を公表し、防災科学技術研究所のJ-SHIS(地震ハザードステーション)が全国の揺れやすさを地図化している。南海トラフ地震は今後30年以内に80パーセント程度(2025年に引上げ)、首都直下地震は約70パーセントとされる。確実な予知ができないからこそ、確率で備えの優先順位を決め、緊急地震速報で揺れの直前を知らせる——この現実的な路線が、地震大国の科学を導いている。
雨がどう降り、どう川に集まり、どこで溢れるかを扱うのが気象学と水文学。線状降水帯のメカニズム解明と、雨量から洪水を予測する水文モデルが、豪雨災害への備えを科学的に支える。
豪雨災害の科学的な土台は気象学と水文学である。気象学は、なぜ特定の場所に大雨が集中するのかを解き明かす。線状降水帯は、暖かく湿った空気が次々と流れ込み、同じ場所で積乱雲が『バックビルディング』と呼ばれる形で連続して発生・発達することで生まれる。この発生条件と内部構造の研究が、半日前予測の精度向上を支えている。水文学は、降った雨が地表・地中・河川をどう流れ、いつ・どこで溢れるかを扱う学問である。雨量・流域の地形・土壌の保水力をモデル化し、河川の水位やダムの流入量を予測する水文モデル(流出解析)は、洪水予報と避難判断の根拠になる。気候変動の影響で、これまでの観測統計だけでは将来の雨を見通せなくなり、温暖化を織り込んだシミュレーション(d4PDF=地球温暖化対策に資する確率的気候予測データベース等の大規模アンサンブル実験)が治水計画の前提に取り込まれつつある。雨のメカニズムを理解し、流れを予測するこの二つの学問が、激甚化する水害に立ち向かう知の基盤である。
建物や橋を揺れに耐えさせる構造工学と、地盤の液状化・斜面崩壊を扱う地盤工学。耐震・免震の設計理論と、地盤がどう壊れるかの理解が、人の命を守るハード防災の根拠になる。
建物・橋・インフラを地震や水害から守るハードの防災を支えるのが構造工学と地盤工学である。構造工学は、地震の揺れに対して構造物がどう変形し・どこに力が集中し・どこから壊れるかを解析し、安全な設計法を生み出す学問である。揺れに耐える耐震、エネルギーを吸収する制震、揺れを地面から切り離す免震——これらの理論と実験(実大の構造物を揺らすE-ディフェンスの震動台実験等)が、世界最高水準の日本の耐震基準を支えてきた。地盤工学は、地面そのものの挙動を扱う。砂地盤が地震で水のようになる液状化、豪雨で斜面が崩れる土砂災害、盛土の崩壊などは、地盤の性質と水の動きで決まる。2021年の熱海の土石流は危険な盛土が原因とされ、2023年の盛土規制法につながった。構造物がいくら頑丈でも、その下の地盤が壊れれば建物は傾き沈む。建物と地盤を一体で考えるこの二つの工学が、揺れと地盤の上に人の暮らしを成り立たせる根拠を与えている。
衛星や航空機から地表を観測するのがリモートセンシング。電波で地殻のわずかな動きを捉える干渉SARや、被災状況の自動判読が、人が立ち入れない広域の災害を上空から科学的に把握する。
人が立ち入れない広い範囲の災害を、上空から科学的に捉えるのがリモートセンシング(遠隔探査)である。衛星や航空機に積んだセンサで、地表が反射・放射する電波や光を測り、地形・植生・浸水・地殻変動を読み取る。とくに防災で力を発揮するのが干渉SAR(InSAR)である。SAR衛星が異なる時期に同じ場所を撮った電波画像の位相差を比べると、地面が数センチメートル沈んだり盛り上がったりした地殻変動をミリ単位で検出できる。地震による地盤のずれ、火山のマグマ蓄積による膨張、地下水汲み上げによる地盤沈下などが面的に分かる。日本の地球観測衛星『だいち(ALOS)』シリーズや、Synspectiveなどの小型SAR衛星が、この観測を担う。災害直後には、被災前後の画像をAIで比較して建物倒壊や浸水を自動判読し、被害地図を素早く作る。地上の点の観測では捉えられない『面』の変化を測るリモートセンシングは、広域災害の全体像を描く目になっている。
災害における人間と社会のふるまいを研究するのが災害社会学。なぜ警報が出ても逃げないのか、地域のつながりが生死をどう分けるのか——技術だけでは救えない領域を、人間の側から照らす。
どれほど精密に予測し堅固に造っても、最後に生死を分けるのは人と社会のふるまいである。それを研究するのが災害社会学とレジリエンス論である。警報が出ても人がなかなか逃げないのは、『自分は大丈夫』と危険を過小評価する正常性バイアスや、周りが動かないと自分も動かない同調などの心理が働くためで、避難を促す情報の出し方そのものが研究対象になる。災害時の被害の大きさは、建物の強さだけでなく、地域のつながり(社会関係資本)に左右される。普段から助け合う関係がある地域ほど、避難も復興も速いことが各地の災害で確かめられてきた。レジリエンス(しなやかな回復力)という概念は、被害をゼロにすることより、打撃を受けても立ち直る力をどう備えるかへ視点を移した。日本では、自助・共助・公助を組み合わせる地域防災、要支援者の個別避難計画、避難所の生活環境(後述の関連死の問題)などが、社会の側からの防災として重みを増している。技術が届かない最後の一歩を、人間の理解で埋めるのがこの学問の役割である。
- 地震調査研究推進本部(2024)「海溝型地震・活断層の長期評価(南海トラフ・首都直下地震の発生確率)」 地震調査研究推進本部(文部科学省) ・ 出典
- Geller, R. J.(1997)「Earthquake prediction: a critical review」 Geophysical Journal International, 131(3) ・ 出典
- 気象研究所・気象庁(2022)「線状降水帯の発生機構と予測(バックビルディング)」 気象庁 気象研究所 ・ 出典
- Mizuta, R. et al.(2017)「Over 5,000 Years of Ensemble Future Climate Simulations by 60-km Global and 20-km Regional Atmospheric Models (d4PDF)」 Bulletin of the American Meteorological Society, 98(7) ・ 出典
- 国立研究開発法人 防災科学技術研究所(2024)「実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)」 防災科学技術研究所 ・ 出典
- 国土交通省(2023)「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)」 国土交通省 ・ 出典
- 国土地理院(2024)「だいち2号(ALOS-2)による干渉SAR・地殻変動観測」 国土地理院 ・ 出典
- Massonnet, D. et al.(1993)「The displacement field of the Landers earthquake mapped by radar interferometry」 Nature, 364(6433) ・ 出典
- Aldrich, D. P.(2012)「Building Resilience: Social Capital in Post-Disaster Recovery」 University of Chicago Press ・ 出典
- 内閣府(防災担当)(2024)「災害時の避難行動と自助・共助・公助(防災白書)」 内閣府 防災 ・ 出典
③ 日本政府・各国シナリオの検証と盲点補填
華やかな新技術の陰で最大の難題は、高度成長期インフラの一斉老朽化と、それを直し続ける財源・人手の不足。新しく造るより、膨大な既存ストックを維持することが国土強靱化の本丸である。
国土強靱化を語るとき最も見落とされやすいのが、インフラの老朽化と維持更新の財源という地味で巨大な難題である。日本の橋・トンネル・水道・港湾の多くは高度経済成長期に集中的に造られ、いま建設後50年を超える施設が雪崩を打って増えている。国土交通省の試算では、インフラの維持管理・更新費は将来にわたり年間数兆円規模に達し、壊れてから直す事後保全を続ければさらに膨らむ。だが造る予算は付いても、維持する予算と人手は不足しがちで、点検する技術者も自治体では足りない。新しい防災テックや巨大プロジェクトは注目を集めるが、本当の正念場は、すでにある膨大なストックを限られた資源でどう守り続けるかにある。だからこそ予防保全への転換、センサとAIによる効率的な点検、機能を集約して維持対象を絞る選択が要る。すべてを造り直すことはできない以上、何を残し・何を畳むかという冷徹な優先順位づけが避けられない。華やかさより継続性に効くかが、この分野の本当の評価軸である。
人口が減り高齢化が進む地域では、守るべき集落が点在し、防災の担い手も消えていく。全てを同じ水準で守れない前提で、集約・撤退も含めた『畳む防災』をどう設計するかが問われる。
防災の議論はしばしば都市の巨大災害に集まるが、見落とされやすいのが人口減少地域の防災である。地方では人口が減り高齢化が進み、守るべき集落が山あいや海沿いに点在する一方、消防団・自主防災組織・自治体職員といった防災の担い手そのものが先細っている。災害時に真っ先に動く地域の力が弱まれば、いくら堤防やダムを整備しても助けが届かない。さらに、過疎地のインフラを都市と同じ水準で維持し続けることは、財源の面でも現実的でなくなりつつある。ここで避けて通れないのが、集約と撤退という難しい選択である。危険な場所からの計画的な移転(防災移転)、機能を中心部に集めるコンパクトなまちづくり、災害リスクの高い区域での開発抑制——『守りきれないものは畳む』という発想を、住民の暮らしと合意の上でどう設計するかが問われる。だが移転は土地への愛着・コミュニティの分断・高齢者の負担と直結し、容易ではない。人口減少という底流の中で、すべてを守る防災から、優先順位をつけて賢く縮む防災へ——この転換こそ、地方の国土強靱化が直面する最も切実な盲点である。
災害は直接の被害が止まった後も命を奪う。劣悪な避難所環境や持病の悪化による『災害関連死』は、地震や津波の直接死に迫る規模になりうる。助かった後をどう守るかが見過ごされてきた盲点である。
災害の被害は、建物が壊れ波が引いた時点で終わるわけではない。見過ごされてきた盲点が、災害関連死である。これは、地震や津波で直接亡くなる『直接死』とは別に、避難生活の負担・持病の悪化・心労などによって後から失われる命を指す。2016年の熊本地震では、関連死が直接死を大きく上回った。その大きな原因が、劣悪な避難所環境である。冷たい床に雑魚寝し、間仕切りもなく、トイレも食事も十分でない——こうした環境はエコノミークラス症候群・感染症・体調悪化を招き、高齢者や持病のある人ほど命に関わる。国際的には難民支援の現場でスフィア基準(避難者一人あたりの空間・水・トイレの最低基準)が共有されているが、日本の避難所はこれに遠く及ばないことが多い。段ボールベッド・間仕切り・温かい食事・清潔なトイレの整備、福祉避難所の確保、在宅・車中泊避難者への支援は、堤防や耐震と同じくらい命を守る防災である。『助ける』技術の議論の陰で、助かった後をどう守るかという最も人間的な課題が、長く後回しにされてきた。
- 国土交通省(2018)「国土交通省所管分野における社会資本の将来の維持管理・更新費の推計」 国土交通省 ・ 出典
- 内閣官房 国土強靱化推進室(2025)「国土強靱化年次計画2025」 内閣官房 ・ 出典
- 国土交通省(2024)「立地適正化計画・コンパクトシティと防災(防災指針)」 国土交通省 都市局 ・ 出典
- 内閣府(防災担当)(2024)「地区防災計画・自主防災組織の現状」 内閣府 防災 ・ 出典
- 内閣府(防災担当)(2024)「避難所運営ガイドライン・災害関連死の防止」 内閣府 防災 ・ 出典
- Sphere Association(2018)「The Sphere Handbook: Humanitarian Charter and Minimum Standards in Humanitarian Response」 Sphere ・ 出典
④ 産業創造 — 関連分野との相互影響予測
防災は単独の産業ではなく、建設・保険・通信・電力が連携する総力戦。堤防や耐震を担う建設、リスクを引き受ける保険、警報を届ける通信、停電を防ぐ電力が、それぞれの強みで国土強靱化を支える。
防災・国土強靱化は、一つの産業で完結しない。建設・保険・通信・電力といった基幹産業が、それぞれの役割で連携する総力戦である。建設は、堤防・ダム・耐震化・インフラ更新という最前線を担い、鹿島・大林組などの大手とスタートアップの新技術が組み合わさる。損害保険は、災害リスクを金銭に置き換えて引き受け、被災後の生活再建を資金面で支える。SOMPO(損保ジャパン)が災害予測スタートアップのOne Concernに出資したように、保険業はリスクをデータで読む事業へと進化し、防災テックの主要な担い手・投資家になっている。通信は、緊急速報メールや災害時の情報伝達を支え、基地局の耐災化や衛星通信による途絶対策が重みを増す。電力は、停電が医療・通信・水道のすべてを止める要であり、送配電網の強靱化と分散型電源(地域で発電・蓄電する仕組み)が災害への備えになる。防災は外から一次産業や社会を守るのでなく、各産業が自らの事業の中に防災を組み込むことで成り立つ。誰か一つの努力でなく、産業をまたいだ連携の質が、災害に強い社会の強度を決める。
災害時、行政(公助)だけでは全員を救えない。自分で守る自助、地域で助け合う共助と、それらをつなぐデータ連携が要になる。防災は国の事業であると同時に、地域と住民の営みである。
防災・国土強靱化の最終的な現場は、国や巨大企業ではなく自治体・住民である。大規模災害では、行政による救助・支援(公助)には限界があり、発災直後の人命救助の多くは、本人や家族による自助、近隣住民による共助が担ってきた。1995年の阪神・淡路大震災で、がれきの下から助け出された人の多くを家族や近所が救ったことは、共助の力を象徴する。だからこそ、各家庭の備蓄・耐震・避難計画、地域の自主防災組織や防災訓練が、国土強靱化の土台になる。これらをつなぐのがデータ連携である。ハザードマップで自宅のリスクを知り、要支援者の情報を地域で共有し、避難所の混雑や物資の在庫をリアルタイムで把握する——個人・地域・行政のあいだで情報が滑らかに流れることが、自助・共助・公助の隙間を埋める。2026年に設置が目指される防災庁は、こうした関係省庁・自治体・現場をつなぐ司令塔として期待される。最先端の技術も巨額の予算も、最後は地域と住民の手で活かされる。防災は国の事業であると同時に、一人ひとりと地域の日々の営みなのである。
⑤ 総合シグナル・リスク
温暖化で豪雨・台風・高潮が強まり、これまでの『想定』が次々と更新される。過去の実績に基づく備えが通用しなくなる激甚化こそ、防災が直面する最大の底流リスクである。
防災・国土強靱化の最も大きな底流リスクは、気候変動による災害の激甚化である。地球温暖化で大気が含める水蒸気が増え、豪雨はより強く・台風はより大型に・高潮や高波はより高くなる。日本では、これまで数十年に一度とされた大雨が毎年のように各地を襲い、線状降水帯による『記録的短時間大雨』が頻発する。問題の本質は、過去の実績に基づく『想定』が通用しなくなることにある。堤防やダムは過去の最大規模を基準に設計されてきたが、その基準を超える雨が現実に降れば、施設は容易に限界を超える。だからこそ治水計画を将来の気候を織り込んで引き直す動き(①-7)が始まったが、設計の更新には時間と費用がかかり、激甚化の速度に追いつけるとは限らない。海面上昇は、長期的には沿岸の浸水リスクとインフラの寿命を静かに蝕む。気候変動の緩和(脱炭素)が進まなければ、適応の努力だけでは支えきれない。災害が『例外』ではなく『常態』になりつつある——この前提の転換に、社会の備えが追いつけるかが問われている。
南海トラフ地震は今後30年で80パーセント程度(2025年引上げ)、首都直下地震は約70パーセントとされる。発生すれば国家の存立を揺るがす巨大地震が、確率の上では『いつ起きてもおかしくない』段階にある。
日本の防災が直視せざるを得ない最大の脅威が、切迫する巨大地震である。地震調査研究推進本部は、太平洋側の海溝で繰り返し起きる南海トラフ地震が今後30年以内に80パーセント程度(2025年1月に70〜80%から引上げ。2025年9月の算出法見直しでは60〜90%程度以上とも併記)、首都圏直下で起きる首都直下地震が約70パーセントの確率で発生すると評価する。南海トラフ地震が起きれば、関東から九州にかけての広い範囲が強い揺れと大津波に襲われ、政府の想定では死者は最悪で20万人を超え、経済被害は国家予算に匹敵する規模に達しうる。首都直下地震は、政治・経済・情報が集中する東京を直撃し、国家機能そのものの麻痺を招く恐れがある。これらは『起きるかどうか』ではなく『いつ起きるか』の問題として、確率の上では切迫している。耐震化・津波避難・事前復興計画・国の業務継続体制——平時にどれだけ備えを積めるかが、被害の規模を決める。だが備えには莫大な費用と時間がかかり、財政・人口の制約の中で間に合わせられるかは予断を許さない。確実に来る巨大地震に、どこまで先回りできるか。これが国土強靱化の核心にある問いである。
国土強靱化には巨額の費用がいるが、財政は厳しく、人口減少で支える側も縮む。守るべき対象が増え老朽化する一方、原資と担い手が細る『更新の崖』が、長期の最大のリスクになる。
技術や計画が整っても、それを支える原資と担い手が足りなければ、防災は絵に描いた餅になる。これが財政制約という長期のリスクである。第1次国土強靱化実施中期計画(2026〜2030年度)は5年間で20兆円強の事業規模を見込み、その前の5か年加速化対策(2021〜2025年度)も15兆円規模だった。だが日本の財政は厳しく、社会保障費が膨らむ中で、防災・インフラ更新に回せる予算には限りがある。同時に、高度成長期のインフラが一斉に老朽化し、維持・更新すべき対象は増え続ける。守るべきものが増え・老朽化が進む一方で、支える財源と人口・技術者が細っていく——この『更新の崖』が、国土強靱化の最も構造的な弱点である。だからこそ、すべてを同じ水準で守る発想を捨て、予防保全で長期費用を抑え、機能を集約し、優先順位を厳しくつける『賢い縮減』が避けられない。さらに、官だけに頼らず民間資金や保険・市場の力を防災に組み込む工夫も要る。巨大災害は確実に近づくのに、備える資源は限られる——この厳しい現実の中で、何を・どこまで守るかという選択が、これからの国土強靱化に重くのしかかる。
- IPCC(2021)「Climate Change 2021: The Physical Science Basis (WGI)」 Intergovernmental Panel on Climate Change ・ 出典
- 気象庁(2024)「日本の気候変動2020・大雨や台風の将来予測」 気象庁 ・ 出典
- 地震調査研究推進本部(2024)「南海トラフ地震・首都直下地震の長期評価」 地震調査研究推進本部(文部科学省) ・ 出典
- 内閣府(防災担当)(2013)「南海トラフ巨大地震の被害想定」 内閣府 防災 ・ 出典
- 内閣官房 国土強靱化推進室(2025)「第1次国土強靱化実施中期計画(事業規模20兆円強・2026-2030年度)」 内閣官房 ・ 出典
- 国土交通省(2018)「社会資本の維持管理・更新費の将来推計」 国土交通省 ・ 出典