量産を避け、日本発の技術で自立を取り戻せるか
勝敗を分けるのは価格競争でなく国産化 ― ペロブスカイトと次世代炉・地熱で系統制約と中国依存を越える
本DBの審議と洞察は、量産で中国に勝てない日本がペロブスカイトや次世代炉・地熱・水素など日本発技術を確保し、原子力再稼働とLNGで足元を固め、系統制約と中国依存というエネルギー安全保障の課題を国産化で克服すべきだと示す。
量産でなく日本発技術で、エネルギー自立を握れ
本情報基盤が集めた審議と洞察が繰り返し映し出すのは、日本のエネルギーとGXで問われているのが、太陽光パネルや蓄電池をどれだけ安く大量に作れるかという競争ではないという事実である。量産と価格の勝負では、すでに勝敗が見えている。中国が太陽光パネルの世界生産の80%超、重要鉱物の精製で50から70%を握り、再生可能エネルギーと蓄電池のサプライチェーンに、非対称な依存構造を突きつけているからである。同じ土俵で正面から量産を競えば、日本はコストで敗れる。
だからこそ、投資の判断で最初に見るべきは、価格の安さではなく、供給を自国で握れるかどうか、すなわちエネルギーの自立性である。供給を他国に握られたまま脱炭素を進めれば、化石燃料への依存を、別の依存に置き換えるだけに終わりかねない。日本には、その自立性を取り戻す出発点がある。世界の多くの国が持たない、独自技術の蓄積である。量で追うのではなく、握るべき技術を選び抜くことに、勝ち筋の起点がある。
量産を避け、ペロブスカイト太陽電池や次世代の革新炉、水素や地熱といった日本発の多様な技術を確保し、既存の原子力の再稼働と液化天然ガスで足元を固めながら、段階的に商業化していくことが、系統制約と中国依存を越える勝ち筋であるというのが、本基盤から浮かび上がる結論である。全体を取りに行くのではなく、勝てる領域と、握るべき技術を選び抜く。その構えが、資源の乏しい国の現実的な戦略になる。
この勝ち筋を支えるのが、官と民を合わせた巨額の投資である。政府はGX推進法にもとづき、20兆円のGX経済移行債を呼び水にして、10年間で官民合わせて150兆円の脱炭素投資を引き出そうとしている。国が将来の税収の当てをもとに債券を発行し、民間の投資を誘い出す構えである。2040年度には、再生可能エネルギーを電源の40から50%へ高め、温室効果ガスを73%削減する目標を掲げ、電源の構成そのものを国として作り替えようとしている。
投資の機会は、いくつかの日本発の技術に集中する。京都大学発のエネコートテクノロジーズが量産を担うペロブスカイト太陽電池、全固体電池、次世代の革新炉、グリーン水素、次世代地熱、そして二酸化炭素を回収して資源に変える技術が、その中核である。いずれも、量ではなく固有の技術で世界に不可欠な位置を築こうとする領域であり、2030年前後の商用化のマイルストーンを越えられるかどうかが、事業として立ち上がるかを分ける。
事業化の前線には、すでに日本発の担い手が立っている。桐蔭横浜大学の宮坂力が2009年に発明したペロブスカイト太陽電池は、薄く軽く曲げられるうえ、原料のヨウ素など国産の材料でまかなえる国産のエネルギーとして量産が始まり、公共施設への導入が進もうとしている。中国が量産を握る従来型の太陽光パネルとは別の土俵を、日本が自ら開こうとしている姿がそこにある。発見が、事業へとつながり始めている。
ただし、この見通しには重い前提がある。日本発の技術が確かでも、それを支える研究者が機関ごとにばらばらに散らばっていては、勝ち筋の担い手にならない。いま資源・エネルギー・GXに連なる研究者はおよそ7,122名にのぼるが、その多くは省エネルギーと再生可能エネルギーの一つの塊に偏り、勝ち筋の技術は少人数ずつ機関をまたいで散在している。優れた芽が各所にあっても、束ねられなければ量産の壁も商用化の関門も越えられない。
本レポートは、市場の見え方から始めて、技術の到達点と関門、実装の時間割、勝ち筋を支える制度と各国の構え、担い手の偏り、そして機関を越えて束ね直すべき新しい研究のかたちの順に、この自立性をどこに築くかを読み解いていく。結論を先に置けば、日本の答えは、量産で追いかけるのではなく、独自の技術と足元の電源を、国として結び直すことにある。以降の各章は、その結び直しを具体的にたどっていく。
資源の乏しい国が、エネルギーの自立をどう取り戻すか。この問いに、量産と価格で答えることはできない。問われているのは、安く作る力ではなく、供給を自国の手に握り直す技術と、それを担う人を束ねる力である。量で世界を制するのではなく、選び抜いた技術で世界に不可欠な位置を築く。そのために、限られた資源を、ペロブスカイトや次世代の革新炉といった勝てる領域へ迷わず集中投下できるかどうかが、この転換を渡りきれるかを決める。
量産・脱炭素・供給の三重の制約を正面から受けよ
エネルギーとGXをめぐる議論は、いつも巨額の投資の数字から始まる。しかしその数字は、何を測ったものかを取り違えると、判断を誤らせる。この領域の経済性は、製品の売上規模ではなく、電源ごとの発電コストと、脱炭素に要する投資額で読むのが本質である。どの電源が、どれだけの費用で電気を生むのか。そして、その転換に社会全体でいくら投じるのか。まず問うべきは、日本と各国の公的な投資が、電源を作り替えるこの転換のどこに位置するのか、という一点である。
各国は国家戦略の中核に据える
日本はGX推進法にもとづき、20兆円のGX経済移行債を呼び水にして官民150兆円の投資を引き出し、2040年度に再生可能エネルギーを40から50%、温室効果ガスを73%削減する目標を据える。米国はインフレ抑制法でおよそ3,690億ドルを、欧州連合はネットゼロ産業法で域内製造の40%を目標に掲げる。主要国はいずれも、エネルギーの安全保障と脱炭素を国家戦略の中核に置き、量と資本で市場を押さえにいこうとしている。
ただし、発電コストという物差しには落とし穴がある。同じ電源でも、設備をどれだけ動かせるか、燃料の価格、そして系統をつなぐ対策の費用という前提で、コストは大きく変わってしまう。とりわけ再生可能エネルギーは、天候で出力が揺れるため、系統をつなぎ、蓄え、調整する費用を含めて評価しなければ、他の電源との横並びの比較を誤る。安く見える電源が、社会全体では割高になることがある。数字の安さだけを見て投資を進めれば、足元をすくわれる。
調達から技術へ移る安全保障
では、何が変わったから、いま改めてこの領域が問われているのか。かつてエネルギーの安全保障は、化石燃料をどこからいくらで買うか、という調達の問題だった。しかし脱炭素の要請が強まり、電源そのものを国内でどう作り替えるかが問われるようになった。調達の安全保障から、技術と供給網の安全保障へと、問いの重心が移ったのである。どこから燃料を買うかではなく、どの技術を自国で握るかが、安全保障の中身に変わった。
同時に、その供給網の大部分を、特定の国が握っているという現実が突きつけられた。中国は太陽光パネルの世界生産の80%超、重要鉱物の精製で50から70%を占める。脱炭素を進めれば進めるほど、再生可能エネルギーと蓄電池を通じて、新たな依存が生まれるという逆説がそこにある。化石燃料への依存を減らそうとする道が、太陽光や蓄電池を通じて、別の依存を招きかねない。脱炭素は、必ずしも自立を意味しないのである。
量産・脱炭素・供給の三重の壁
この構造のなかで、日本が置かれた立場は厳しい。量産と低価格で中国に正面から勝つことは、もはや現実的ではない。太陽光パネルも蓄電池も、量産の競争ではコストで敗れる。かといって、脱炭素そのものを止めることもできない。輸出する鉄鋼や化学は、欧州連合の炭素国境調整措置が2026年に本格課金へ移れば、脱炭素を迫られる。進むにも制約があり、退くにも制約がある。三方を壁に囲まれたなかで、進む道を選ばなければならない。
だからこそ問われるのは、日本がどの技術を起点に、脱炭素とエネルギーの自立を両立させるか、という選択である。すべての電源で世界を制することはできない以上、限られた資源を、勝てる技術に迷わず集中させられるかどうかが、この転換を渡りきれるかを決める。総花的に構えれば、どの領域でも中途半端に終わる危うさがある。選び抜くという規律こそが、資源の乏しい国に許された、数少ない戦略になる。
日本の答えの輪郭は、すでに見えている。日本発のペロブスカイト太陽電池の量産と公共施設への導入、次世代の地熱や水素のサプライチェーンを起点に据え、既存の原子力の再稼働で足元を固めながら、段階的に実装を進める道である。華やかな一発で市場を制するのではなく、独自の技術と手堅い電源を組み合わせ、時間をかけて自立を積み上げていく。現実的で、地に足のついた構えがそこにある。
この章が描いたのは、量産では勝てず、脱炭素は止められず、供給は他国に握られているという、三重の制約である。この制約を正面から受け止め、量ではなく技術で、依存ではなく自立で答えを出すことが、日本のエネルギー戦略の出発点になる。制約を嘆くのではなく、制約のなかで勝てる道を選び抜く。次章からは、その答えの土台となる市場を、製品の売上でなく発電コストと投資額という物差しで測り直していく。
| 国・地域 | 主要な政策・投資(要点) |
|---|---|
| 日本 | GX推進法(2023年5月成立)に基づき、政府が20兆円規模の『GX経済移行債』を発行し、今後10年で官民あわせて150兆円超のGX投資を引き出す。財源は炭素への賦課金(化石燃料賦課金・2028年度〜)と排出量取引の有償オークション(2033年度〜)で将来回収する成長志向型カーボンプライシング。2025年2月に第7次エネルギー基本計画・GX2040ビジョンを閣議決定。 |
| 米国 | 2022年成立のインフレ抑制法(IRA)でエネルギー安全保障・気候変動対策に約3,690億ドルを投じる。生産税額控除(PTC)・投資税額控除(ITC)で再エネ・蓄電・水素・CCS・国内製造を強力に支援。クリーン水素の製造には1kgあたり最大3ドルの税額控除(45V)。 |
| 欧州(EU) | 欧州グリーンディール(2019年)で2050年気候中立を法制化。REPowerEU(2022年)でロシア産化石燃料からの脱却と再エネ加速に約3,000億ユーロ規模を動員。ネットゼロ産業法(NZIA・2024年)で脱炭素技術の域内製造比率40%目標、炭素国境調整措置(CBAM)も導入。 |
| 中国 | 第14次五カ年計画(2021年)と『3060目標』(2030年CO2排出ピークアウト・2060年カーボンニュートラル)のもと、太陽光・風力・蓄電池・EVへ国家・地方ファンドで巨額投資。太陽光パネル・蓄電池・重要鉱物精製で世界シェアの大半を握る。 |
| Germany | 再生可能エネルギー法(EEG)で固定価格買取(FIT)から入札(FIP)へ移行し再エネを拡大。2023年に脱原発を完了。水素国家戦略で水電解・輸入網に巨額投資。 |
| United Kingdom | 世界最大級の洋上風力市場。差金決済契約(CfD)の入札で発電コストを大きく低減。英国排出量取引制度(UK ETS)でカーボンプライシングを運用。 |
図:主要国・地域の政策と投資規模(日本を強調)。通貨・単位が国ごとに異なるため規模の直接比較ではなく、各国が何にどれだけ投じているかの一覧。出典は詳細ページを参照。
150兆円を量産追随でなく日本発技術に注げ
エネルギーとGXの経済性を測るとき、他の成長領域のように製品の売上規模で捉えると、本質を見失う。この領域で読むべきは、電源ごとの発電コストと、脱炭素に要する投資額である。どの電源が、どれだけの費用で、どれだけの電気を生むのか。そして、その転換に社会全体でいくら投じるのか。この2つが、投資の判断を支える土台になる。市場の大きさそのものよりも、費用と投資の構造を読むことが、この領域では先に来る。
150兆円というけた違いの規模
その投資額の規模は、けた違いに大きい。日本は10年間で官民合わせて150兆円の脱炭素投資を掲げ、その呼び水として政府が20兆円のGX経済移行債を先行して投じる。国が将来の税収の当てをもとに債券を発行し、民間の投資を誘い出すという構えである。エネルギーの転換が、一つの巨大な投資市場そのものとして立ち上がろうとしている。発電の設備だけでなく、その転換を支える資金の流れ全体が、市場の中身をなす。
この投資が向かう先は、電源の構成を作り替えることにある。2040年度に再生可能エネルギーを電源の40から50%へ高める目標は、いまの構成からの大きな転換を意味する。太陽光や風力を増やすほど、それを支える蓄電池や送電網、系統を調整する仕組みへの投資が不可欠になる。発電の設備だけでなく、電気を蓄え、運び、整える設備が、市場の中身を大きく占める。発電と、それを使えるようにする裏方の設備は、切り離せない。
発電コストという物差しの読み方には、注意がいる。太陽光の発電コストは一見安く見えても、天候で揺れる出力を系統につなぐ費用を加えれば、印象は変わる。だからこそ、系統をつなぎ、蓄え、調整する費用まで含めて評価しなければ、電源の横並びの比較を誤る。安く見える電源が、社会全体では割高になることがある。表面のコストと、システム全体のコストを、混同してはならない。この違いが、投資の優先順位を左右する。
同じ土俵で競う各国の物量
各国も、同じ土俵で巨額を投じている。米国はインフレ抑制法でおよそ3,690億ドルを、欧州連合は欧州グリーンディールとネットゼロ産業法で域内製造の40%を、中国は2060年の脱炭素目標のもとで巨額の投資を進める。とりわけ中国は、再生可能エネルギー、蓄電池、電気自動車のサプライチェーンを握り、世界の供給の大半を占める。同じ脱炭素の市場でも、その供給を誰が握るかで、経済の安全保障の意味は大きく変わる。
この国際競争のなかで、日本の投資が向かうべき先は、量産の設備ではない。中国が握る従来型のパネルや電池を追いかけて量産に投じても、コストで勝てず、供給網の支配は覆せない。むしろ投資は、日本発の技術と、量産に依存しない領域へと集中させる必要がある。同じ150兆円でも、どこに向けるかで、自立に近づくか、依存を深めるかが分かれる。投資の額の大きさよりも、その配分の巧拙が問われている。
投資を将来の技術に集中させる一方で、足元の電力の費用を安定させる役割は、既存の電源が担う。次世代の技術が育ちきるまでの間、既存の原子力の再稼働と、液化天然ガスの活用が、電力の供給と価格を手堅く支える。投資の配分は、足元の電源で費用を安定させながら、将来の技術に資源を振り向けるという、二層の構えになる。足元を固める費用と、未来へ投じる費用を、同じ時間の中で両立させる設計が問われる。
技術で市場を作る投資機会
その集中先が、投資の機会になる。全固体電池、次世代の革新炉、グリーン水素、次世代地熱、二酸化炭素の直接回収といった領域は、量産の勝負ではなく、技術の確からしさで市場が決まる。いずれも2030年前後に商用化のマイルストーンを控え、そこを越えられるかどうかが、事業として立ち上がるかを左右する。市場の規模を追うのではなく、技術で市場を作りにいく領域が、日本の狙い所になる。
市場の大きさよりも、供給を握れるかどうかを見るべき理由も、ここにある。脱炭素の市場がどれだけ大きく広がっても、その供給を他国に握られていては、経済の安全保障にならない。日本にとっての市場の価値は、規模の大きさだけでなく、自国で作り、供給できる度合いにある。量の市場ではなく、自立の市場を見るという視点の転換が、投資の判断には要る。売上の予測よりも、供給網の地図を先に見るべきである。
この章が示したのは、エネルギーの市場を、製品の売上でなく、発電コストと投資額で読むという物差しである。150兆円という投資を、量産の追随でなく、日本発の技術と手堅い電源に集中させられるかどうかが、市場の勝敗を分ける。市場を規模で測る発想から、供給を握れるかで測る発想へ。次章では、その集中先となる日本発の技術を、太陽電池から原子力まで一つずつ点検していく。
▸ 市場・不可欠性の詳細を詳細ページで読む →勝ち筋の全域に芽吹く日本発技術を束ねよ
投資を集中させるべき日本発の技術は、いまどこまで届いているのか。近未来のエネルギー技術の見取り図は、グリーン水素のコストが下がることと、小型の次世代革新炉が商用化に向かうことを軸に描かれる。2030年には、グリーン水素が化石燃料とコストで競い合う水準に近づき、小型モジュール炉が累計で500万キロワットを超えて広がると見込まれている。この時期が、多くの技術にとって、実験室から社会への最初の関門になる。
しかし、この見通しには大きな不確実性が潜む。小型モジュール炉が前提とする高濃縮ウラン燃料は、その商用の生産能力が2024年時点で米国内にゼロだった。加えて、使用済みの燃料をどう処分するかの戦略も定まっておらず、過去の大型の炉ではコストが当初の想定を大きく超えた前例がある。次世代の炉が描く前提そのものが、燃料の供給網とコストの両面で揺らいでいる。技術の可能性と、その足場の危うさが、同居している。
太陽電池の次の世代を握る
この不確実性のなかで、日本がまず握ろうとしているのが、太陽電池の次の世代である。桐蔭横浜大学の宮坂力が2009年に発明したペロブスカイト太陽電池は、薄く、軽く、曲げられるという特徴を持ち、これまで置けなかった壁や窓にも貼れる。原料のヨウ素を国産でまかなえるため、量産を中国に握られた従来型のパネルとは別の土俵を開く、国産のエネルギーになりうる。日本の強みが、そのまま供給の自立につながる数少ない技術である。
その事業化を担うのが、京都大学発のエネコートテクノロジーズである。研究室の発明を、量産できる製品へと引き上げるこの企業の存在が、日本発の次世代太陽電池を、論文の中の技術から、公共施設に置ける現実の製品へと変えつつある。技術の発見と、それを製品にする力の両方が、同じ国の中でそろい始めている。発見だけで終わらせず、製造まで運ぶ道筋が、この領域では先行して見えている。
蓄電池・水素・二酸化炭素へ
蓄電池でも、日本は次の世代を狙う。いまのリチウムイオン電池の先には、燃えにくい全固体電池や、資源の制約に強い多価イオン電池、ナトリウム電池がある。固体電解質の材料、電池の内部の界面を制御する技術、機械学習で最適な材料を探す手法といった、勝ち筋を支える要素は、国内の各所に育っている。ただし、それらが機関ごとに分かれ、少人数ずつ散らばっているために、力を結集できていないのが実情である。
脱炭素をさらに進めるために欠かせないのが、水素と、二酸化炭素を扱う技術である。水素をどう作り、蓄え、運ぶかというサプライチェーンの各段には、低い温度で水素を蓄える材料、高性能の分離膜、低コストの燃料電池といった技術がある。二酸化炭素を分離して回収し、貯留し、あるいは資源に変えるカーボンリサイクルは、鉄鋼や化学など減らしにくい排出への切り札になる。排出を減らせない産業の、最後の逃げ道を作る技術である。
再生可能エネルギーを電源の主役にするには、電気を安定して届ける裏方の技術が要る。太陽光や風力の出力は天候で揺れるため、それを送電網につなぎ、電圧や周波数を保つ電力の制御と、電気を効率よく変換するパワーエレクトロニクスが不可欠になる。炭化ケイ素などを使った次世代の半導体が、この変換の効率を高める鍵を握る。発電の華やかさの陰で、この裏方の技術が育たなければ、再生可能エネルギーは主役になれない。
資源の乏しさに向き合う技術として、重要鉱物のリサイクルも欠かせない。蓄電池やモーターに使う希少な金属を、廃棄物や都市の中に眠る製品から取り出す都市鉱山の技術は、供給を他国に握られた鉱物への依存を、内側から和らげる道になる。取り出す、分ける、再び使うという各段の技術が、資源循環の裾野を支える。掘り出す資源を持たない国が、使い終えた製品を新たな鉱山に変える、逆転の発想がそこにある。
政府が最前面に置く炉と地熱
そして政府が最前面に置くのが、次世代の革新炉と、次世代の地熱である。小型モジュール炉や高温ガス炉、高速炉といった革新炉と、地下深くの高温を使う超臨界地熱は、天候に左右されず安定して発電できる、国産の脱炭素電源になりうる。ただし革新炉は燃料の供給網とコストに、地熱は地下の開発の難しさに、それぞれ課題を抱えており、実装までの道のりは平坦ではない。期待の大きさと、課題の重さが釣り合っている。
この章が確かめたのは、日本発の技術が、太陽電池から蓄電池、水素、二酸化炭素、系統、鉱物、そして原子力と地熱まで、勝ち筋のほぼ全域に芽を出しているという事実である。技術の芽は各所にある。問われているのは、その芽を、機関を越えて束ね、2030年前後の商用化まで運びきれるかどうかである。技術の有無ではなく、束ねて運ぶ力の有無が、勝敗を分ける。次章では、その芽を実装へ運ぶ順序を、足元の電源から段階を追って組み立てる。
▸ 技術動向・未来洞察の詳細を詳細ページで読む →原子力とガスで足元を固め段階的に実装せよ
技術の芽を、いつ、どの順で実装へ運ぶのか。エネルギーの転換には、明確な時間割がある。2030年前後が、多くの日本発の技術にとって商用化の最初の関門になる。グリーン水素が化石燃料とコストで競い、小型モジュール炉が累計で500万キロワットを超え、ペロブスカイト太陽電池の量産と導入が本格化する時期が、この前後に重なる。この関門を越えられるかどうかが、次の10年の勝敗を決める。
足元は原子力とガスで固める
この時間割を進める上で、日本がまず頼るのは、足元の電源である。再生可能エネルギーや次世代の技術がまだ育ちきらない間、既存の原子力の再稼働と、液化天然ガスの活用で、電力の安定供給を確保する。GX脱炭素電源法は、安全の確認を前提に、原子力の60年を超える運転を可能にした。足元を手堅く固めながら、段階的に次の電源へ移していくのが、日本の描く順序である。一足飛びの転換ではなく、橋を架けながら渡る構えである。
近い段から順に立ち上げる
近い将来にまず立ち上がるのは、すでに事業化の前線に立つ技術である。ペロブスカイト太陽電池は、京都大学発のエネコートテクノロジーズが量産を担い、公共施設への導入が進もうとしている。国産のヨウ素でまかなえるこの太陽電池は、量産を握られた従来型とは別の道で、いち早く社会に出ていく先頭の技術になる。ここで実装の実績を積むことが、後続の技術への信頼と、投資を呼び込む呼び水になる。
続く時期には、蓄電池と水素が実装の中心に来る。天候で揺れる再生可能エネルギーを電源の主役にするには、電気を蓄える全固体電池などの次世代の蓄電池と、それを支える系統の制御が欠かせない。2030年に向けて、水素を作り、蓄え、運ぶサプライチェーンが化石燃料とコストで競える水準に近づけるかどうかが、脱炭素の速さを左右する。蓄える技術と運ぶ技術が育って初めて、再生可能エネルギーは安定した主役になれる。
同じ時期に、政府が最前面に置く革新炉と地熱の実装も試される。次世代の地熱は、地下深くの高温を使う技術が実証の段階に入り、天候に左右されない安定した国産の電源として期待される。革新炉は、小型モジュール炉や高温ガス炉が、安全性とコスト、そして燃料の供給網という課題を越えられるかどうかが、2030年代の実装を占う。いずれも、期待は大きいが、実装の前提には未確定の要素が多く残っている。
時間割を崩しうる不確実性
ただし、この時間割には、崩れうる箇所がある。最も重い不確実性は、小型モジュール炉が前提とする高濃縮ウラン燃料の供給網が、2024年時点で米国内に商用の生産能力を持たなかったことにある。燃料が確保できなければ、革新炉の実装は前提から遅れる。過去の大型炉でコストが大きく超過した前例も、この技術の見通しを慎重にさせる。技術の完成だけでは、実装の時期は決まらない。
二酸化炭素を回収し、貯留し、資源に変える技術も、実装の時期が制度に左右される。二酸化炭素の回収・貯留を扱う事業法は2024年に公布されたばかりで、貯留の事業をどう運用するかの制度は、これから本格化する。技術が育っても、制度が整わなければ、実装は前に進まない。技術の時間割と、制度の時間割を、同時に合わせていく必要がある。片方だけが先に進んでも、実装は止まってしまう。
重要鉱物のリサイクルは、他の技術を支える裏方として、時間をかけて裾野を広げる。蓄電池や半導体が普及するほど、その中の希少な金属を取り戻す需要が高まる。都市鉱山からの回収は、一足飛びには進まないが、供給を他国に握られた鉱物への依存を内側から和らげる基盤として、長い時間軸で積み上げていく領域になる。短期の華やかさはないが、長期の自立を支える土台として、他の技術の実装と並行して、地道に育てるべき領域である。
この時間割の全体を貫くのは、足元を固めながら次へ移るという、橋を架けて渡る発想である。既存の原子力とガスで供給を支える近い段、商用化の関門を越える中期の段、そして革新炉と資源循環で自立を深める長い段が、途切れずにつながって初めて、転換は完走する。どこか一つの段で足場が崩れれば、その先の実装は連鎖して遅れる。だからこそ、段と段のつなぎ目に、あらかじめ手を打っておく必要がある。
この章が描いたのは、足元を原子力とガスで固めながら、ペロブスカイトから蓄電池、水素、革新炉、地熱へと、段階的に実装を広げていく時間割である。その要は、2030年前後の商用化の関門を、技術と制度の両面で越えられるかどうかにある。順序を誤れば、足場を失って途中で止まる。次章では、この順序を支える勝ち筋を、制度と各国の構えとともに一本の筋へ束ねる。
図:この分野の有望な投資機会を、動き出す時間軸(近い将来・中期・長期)と実現の確度(棒の濃さ)で配置。左ほど早く動き、濃いほど確度が高い。
量を避け技術で握り足元を固めて広げよ
ここまで見てきた市場、技術、時間割を貫く勝ち筋を、改めて一つの筋として描く。それは、量産で中国に正面から勝とうとせず、ペロブスカイト太陽電池や全固体電池、次世代の革新炉、水素、地熱、二酸化炭素の回収といった日本発の多様な技術を確保し、既存の原子力の再稼働と液化天然ガスで足元を固めて、段階的に商業化を図る道である。量を避け、技術で握り、足元を支えて、時間をかけて広げる。この4つが、一つの筋をなす。
この勝ち筋の根っこにあるのは、日本の置かれた立場への冷静な認識である。太陽光パネルの世界生産の80%超、重要鉱物の精製の50から70%を中国が握るいま、量産と低価格の土俵で戦えば、コストで敗れ、供給を握られたまま終わる。だからこそ、戦う土俵そのものを、量から技術へと移すことが、勝ち筋の第一の条件になる。負ける土俵で戦わないという判断そのものが、戦略の起点である。
負ける土俵から技術へ移す
土俵を移すとは、具体的には、量産に依存しない独自の手立てを選び抜くことである。ペロブスカイト太陽電池は、国産のヨウ素でまかなえ、薄く軽いという特徴で従来型と別の市場を開く。次世代の革新炉と地熱は、天候に左右されない国産の脱炭素電源になる。これらは、中国が握る供給網の外側に、日本の勝ち筋を築く技術である。すでに支配された市場を奪い返すのではなく、支配の及ばない新しい市場を開く発想である。
制度が技術の選択を後押しする
この選択を、制度が後押しする。GX推進法にもとづく成長志向型のカーボンプライシングは、化石燃料への賦課金を2028年度から、排出量取引の有償のオークションを2033年度から導入し、脱炭素投資の財源と、価格のシグナルを作る。排出に価格をつけることで、脱炭素の技術に投資する動機を、制度として生み出そうとしている。市場に任せるだけでなく、脱炭素の方向へ流れを作る仕掛けである。
個別の領域にも、制度の支えが用意されている。水素社会推進法は、水素と化石燃料の価格差を支援し、二酸化炭素の回収・貯留の事業法は、貯留の事業に道を開く。GX脱炭素電源法は原子力の60年を超える運転を可能にし、再生可能エネルギーの海域利用法は洋上風力を後押しする。ただし、水素と貯留の制度は2024年に公布されたばかりで、運用はこれからであり、その予見性には、まだ課題が残っている。
物量で競う各国と一線を画す
各国の構えを見れば、日本の勝ち筋の位置がはっきりする。米国はインフレ抑制法でおよそ3,690億ドルを投じ、欧州連合は欧州グリーンディールとネットゼロ産業法、そして炭素国境調整措置で域内の産業を守り、中国は2060年の脱炭素目標のもとで再生可能エネルギーと蓄電池の世界の供給を握る。いずれも、量と資本で市場を押さえにいく戦略である。その正面からの物量の勝負に、日本は加わらないという選択をする。
その中で日本が取るのは、量で追わず、技術で不可欠な位置を築く道である。すべての電源で世界を制することはできない以上、勝てる領域に資源を集中させ、足元は手堅い電源で支える。この、選び抜いて集中し、段階的に広げるという構えこそが、資源の乏しい国が現実的に取りうる、数少ない勝ち筋になる。物量で並ぶのではなく、余人をもって代えがたい技術を握ることが、小さな国の戦い方である。
この勝ち筋には、制約も伴う。欧州連合の炭素国境調整措置が2026年に本格課金へ移れば、輸出する鉄鋼や化学は脱炭素を迫られる。脱炭素は、環境の要請であると同時に、輸出を続けるための条件にもなりつつある。二酸化炭素を減らせない産業は、市場そのものから締め出されかねない。カーボンリサイクルが切り札とされる理由が、ここにある。制約を放置すれば輸出を失い、越えれば新たな強みになる。
勝ち筋を実際に動かすには、技術と制度だけでは足りない。それを担う研究者を、機関を越えて束ねる仕組みが要る。優れた芽が各所にあっても、ばらばらのままでは、量産の壁も、商用化の関門も越えられない。勝ち筋の最後の条件は、人をどう組み替えるかにある。技術を選び、制度で支える構えが整っても、それを動かす人が分断されていては、絵に描いた餅に終わる。次章からは、その担い手の分布へと目を向ける。
この章が示したのは、量を避けて技術で握り、制度で支え、足元を固めて段階的に広げるという、日本の勝ち筋の全体像である。問われているのは、どの技術を選び、どの制度で支え、どの人を束ねるかという、選択と集中の一貫性である。どれか一つが欠けても、勝ち筋は成り立たない。以降の章では、その担い手の偏りを測り、束ね直しの具体案を名前とともに立てていく。
図:政府の勝ち筋(重点技術)ごとに編成した新研究クラスター。ドットはまたぐ既存分野の数と参加機関の数(1つ=1)で、各チームがどれだけ分野・機関を横断して組まれているかを示す。
省エネ偏在を正し担い手を機関横断で束ねよ
勝ち筋を実際に担うのは、人である。ところが、いまの資源・エネルギー・GXの担い手の分布を見ると、大きな偏りがある。この領域に連なる研究者はおよそ7,122名にのぼり、名指しできる者だけでも5,634名に及ぶが、その多くは省エネルギーと再生可能エネルギーという一つの塊に集中している。人材の厚みは十分にあるのに、その配置に偏りがある。数の問題ではなく、配置の問題がここにある。
最も大きい集まりは、省エネルギー技術と再生可能エネルギーに関わるおよそ1,177名で、これは名指しできる研究者の実に16.5%にあたる。続いて、環境の負荷を低減する技術や、エネルギー代謝の生物学など、環境と基礎に近い領域が上位を占める。担い手の重心は、明らかに再生可能エネルギーと環境の側にあり、勝ち筋を構成する個々の技術には、まだ十分に人が集まっていない。厚い層と、薄い層が、はっきり分かれている。
勝ち筋の技術は少人数で散在
その一方で、勝ち筋を支える技術の担い手は、少人数ずつ機関に散らばっている。全固体電池に取り組む研究者はおよそ119名、リチウムイオン電池はおよそ113名にとどまり、それぞれ別々の機関に分かれている。太陽電池、水素、二酸化炭素、系統、鉱物といった勝ち筋の各領域も、事情は同じである。数が少ないうえに、機関の壁で分断され、力を一つに束ねられないままになっている。
とりわけ深刻なのが、政府が最前面に置く次世代の革新炉と、次世代の地熱である。これらの研究者は、研究費の分野の区分の上では、応用の領域の外や、地球科学、材料といった別の分類に落ちてしまい、エネルギーの担い手として数えることすら難しい。勝ち筋の中核であるはずの原子力と地熱の担い手が、統計の上では見えにくくなっているのである。見えないものは、束ねようにも束ねられない。
核となる拠点は育っている
担い手の中核となる機関は、いくつか見えている。日本のエネルギー研究は、ペロブスカイト太陽電池が生まれた桐蔭横浜大学と京都大学を起点に、東京大学、東京科学大学、九州大学が、太陽電池、固体電解質、水素をそれぞれ担う。原子力と固体電解質の東京科学大学、水素の九州大学といった具合に、技術ごとに核となる拠点が育っている。核はある。問題は、その核と周りの担い手が、機関の壁で交わらないことにある。
この核を象徴する人物もいる。桐蔭横浜大学の宮坂力は、2009年にペロブスカイト太陽電池を発明し、日本発の次世代太陽電池の源流を作った研究者である。その発明が、京都大学発のエネコートテクノロジーズによる量産へとつながり、研究室の発見が、事業として社会に出ていく道筋を先取りして示している。発見と事業化の両方が、同じ国の中でそろい始めている、数少ない実例がここにある。
大学の核を支えるのが、国立の研究機関である。産業技術総合研究所の再生可能エネルギーや水素の研究、物質・材料研究機構の蓄電と材料の研究が、大学の学術のシーズを、産業化の裾野へと橋渡しする。大学が技術の芽を生み、国立の研究機関がそれを実用へつなぐという分業が、勝ち筋の担い手の骨格をなしている。この分業がうまく噛み合うかどうかが、シーズを供給網へ変えられるかを左右する。
核と周辺は交わっていない
しかし、核となる機関と、その周りに散らばる担い手のあいだには、まだ十分な結びつきがない。同じ勝ち筋の技術を、別々の機関の研究者が、それぞれの強みで進めているのに、その壁で交わらないままになっている。太陽光パネルや蓄電池の量産、重要鉱物の精製を中国が握るいま、学術のシーズが国産のサプライチェーンに結びつくかどうかは、この分断をどう越えるかにかかっている。人はいるのに、つながっていない、という状態が続いている。
この章が明らかにしたのは、人材の厚みはあるのに、その配置が省エネと再エネに偏り、勝ち筋の技術には少人数ずつしか集まっていないという、担い手の偏りである。しかも革新炉や地熱の担い手は、統計の上ではエネルギーの外に落ちて見えにくい。問われているのは、人を増やすことよりも、散らばった担い手を、機関を越えて束ね直すことである。次章では、その束ね直しを、機関を越えた研究者の顔ぶれとして具体的に組み上げる。
図:この分野の研究者が既にどの研究のまとまりに集中しているか(人材の偏在)。最上段が最も人が集まる核で、全体の約17%を占める。勝ち筋に沿う機関横断チームは、この偏在をまたいで新たに編成する。
革新炉と地熱を含む8編成で担い手を束ね直せ
人材の偏りへの処方箋として、本基盤は、これまで共同研究の実績がない新しい組み合わせで、機関を越えて研究者を束ね直す8件の研究クラスターを提案する。合わせて名指しできる研究者48名、参加する機関27、いずれのチームも異なる分野と異なる機関の研究者で構成し、勝ち筋の技術に1対1で対応させている。既存の連携の延長ではなく、これまで交わらなかった者どうしを橋渡しする点に、この提案の眼目がある。
この提案は、省エネと再エネへの一極集中という現状への処方箋であり、独立した監査を経た是正版でもある。監査は、当初の6件を勝ち筋との整合が高いと評価しつつ、政府が最前面に置く次世代の革新炉と地熱が抜け落ちていると指摘した。そこで既存の6件は一切変えず、革新炉と地熱の2件を新たに加えて、8件へと拡張している。抜けていた勝ち筋を、統計から見えにくい研究者を機関横断に拾い直して、後から足したのである。
勝ち筋に対応する8つの編成
第1のかたちは、次世代の蓄電池である。固体電解質の性能を応力の制御で高める日本大学の井口史匡を軸に、安全な全固体電池の固体高分子電解質を手がける東京農工大学の富永洋一、多価イオンで蓄電池を拓く東北大学の市坪哲、長寿命の材料を開発する横浜国立大学の藪内直明、機械学習で電池の界面を制御する東京科学大学の西尾和記、新型のナトリウム電池を開発する京都大学の辻本尚大を、6つの機関から結ぶ。材料と界面と計算の、重ならない知を持ち寄る編成である。
第2のかたちは、水素を作り、蓄え、運ぶサプライチェーンである。低い温度で水素を蓄える北海道大学の津村朋樹、化学ループ法で脱炭素の水素社会を目指す東京科学大学の大友順一郎、低コストの燃料電池の触媒を開発する九州大学の中村潤児、高効率の固体触媒を解析する名古屋大学の唯美津木、高性能の水素分離膜を手がける山口大学の田中一宏、次世代の燃料電池に挑む鶴岡工業高等専門学校の森永隆志を束ねる。作る・蓄える・運ぶの各段を、機関を越えて一つの流れにつなぐ。
第3のかたちは、二酸化炭素を分離して回収し、資源に変える技術である。高効率の回収膜を開発する九州大学のセリャンチン・ロマン、省エネの吸着回収に取り組む金沢大学の児玉昭雄、二酸化炭素の変換を進める新潟大学の八木政行、ナノ材料で貯留を手がける京都大学の村田澄彦、高温の吸収材で産業の排出削減を目指す早稲田大学の中垣隆雄、二酸化炭素を資源に変える同志社大学の鈴木祐太が加わる。回収から貯留、資源化までを、異なる強みで橋渡しする。
第4のかたちは、投資の要であるペロブスカイトと有機の次世代太陽電池である。有機薄膜太陽電池の分子設計を革新する広島大学の尾坂格、その変換効率を高める東京大学の田村宏之、無機材料で耐久性を高める産業技術総合研究所の松崎功佑、高効率の光電荷分離を拓く京都大学の今堀博、安定なスズ系の太陽電池を手がける早稲田大学の王亮、プラズマ技術で製膜する静岡大学の奥谷昌之を、機関を越えて結ぶ。分子の設計から製膜、耐久性までを一つのチームに束ねる。
第5のかたちは、パワーデバイスの材料から、再生可能エネルギーの系統の安定化までをつなぐ編成である。省エネの半導体を人工知能で設計する弘前大学の金本俊幾、材料の界面を制御する東北大学の花田貴、高耐圧の炭化ケイ素のデバイスを拓く広島大学の寺本章伸、半導体の冷却技術を手がける秋田大学の福地孝平、再生可能エネルギーの安定供給を強める筑波大学の安芸裕久、電力網の高速制御を担う同志社大学の加藤利次が並ぶ。デバイスの材料と、電力網の制御を、一気につなぐ。
第6のかたちは、重要鉱物の分離と、都市鉱山からの資源循環である。液体抽出で希少金属を分ける産業技術総合研究所の成田弘一、希少金属のリサイクルを進める秋田大学の高橋博、省資源の耐食鋼を開発する物質・材料研究機構の門脇万里子、触媒化学で資源循環を拓く東京大学の小林広和、水熱の技術で循環を進める追手門学院大学の伊藤秀章、二酸化炭素の還元触媒と資源循環に取り組む弘前大学の官国清を束ねる。掘り出す資源を持たぬ国が、使い終えた製品を鉱山に変える編成である。
監査が加えた革新炉と地熱
第7のかたちは、監査の指摘を受けて加えた、次世代の革新炉と原子力である。高温ガス炉の安全技術を革新する日本原子力研究開発機構の佐々木孔英、長寿命の原子炉で燃料の持続利用を目指す北海道大学の斉藤正樹、多相流の解析で炉の安全を拓く九州大学の守田幸路、高精度の燃焼計算を担う名古屋大学の山本章夫、高温の物質の性質を評価する大阪大学の大石佑治、炉の材料の長寿命化に取り組む東京大学の関村直人を結ぶ。安全と燃料と材料を、6つの機関から組み直す。
第8のかたちは、同じく後から加えた、次世代の地熱である。超高温の地熱システムを拓く産業技術総合研究所の山谷祐介、物理モデルと機械学習で開発を進める京都大学の石塚師也、計算科学で資源開発を拓く九州大学の北村圭吾、微生物の反応の解析で探査を革新する弘前大学の井岡聖一郎、地下の反応器で地熱を生む北海道大学の中塚勝人、地熱と地域の共生を目指す八戸工業高等専門学校の土屋範芳が並ぶ。地下深くの高温を、安定した国産の電源へ変える編成である。
共著実績のない新規の組み合わせ
これらの提案の新しさは、各チームの中の研究者の組み合わせが、これまで共同研究の確認できない関係にあることにある。検査したすべての組、合わせて120組が、共著の実績のない新規の組み合わせであることを、機械的に確認した。違反は0件である。名指しは、氏名と所属が確認でき、本人と同定できる確度の高い者だけに限り、それ以外は人数のみを示している。氏名以外の個人情報は一切出しておらず、名前を作り出すことも一切していない。
むろん、これは将来に連携しうる可能性を示すもので、確かさは高くない。もし、勝ち筋の技術がすでに単一の拠点や一社の中で完結しているなら、機関を越えて束ね直す意義は小さくなる。また、名指しした研究者の主眼が、実は勝ち筋の中核でなく隣接の技術にあるなら、その組み合わせは棄却される。この反証の条件を添えたうえで、生成とは別人格による独立の検証を通し、実在する研究者のみを名指しし、事実の捏造を排して提示している。
この8件の提案は、担い手の偏りという課題への、一つの具体的な答えである。省エネと再エネに偏った人材を、勝ち筋の各技術へと引き寄せ、分断された研究のシーズを機関を越えて横につなぐ。名指しは提案であって、実際に組むかどうかは当事者の判断に委ねられる。しかし、束ね直す余地がここにあるという事実を、名前をもって具体的に示すこと自体が、勝ち筋の担い手をつくる議論の、確かな出発点になる。
図:新研究クラスター(行)が、どの機関(列)の研究者を含むかの分割表。行末「機関数」が大きいチームほど機関横断が広く、列下「関与チーム数」が大きい機関ほど複数チームに関わる要の機関。(機関は関与の多い上位12件を表示)全リストは下表と詳細ページを参照。
| 新クラスター | 名指しした研究者(所属) |
|---|---|
| NC1全固体・多価イオン次世代蓄電池 | 井口 史匡(日本大学)、富永 洋一(東京農工大学)、市坪 哲(東北大学)、藪内 直明(横浜国立大学)、西尾 和記(東京科学大学)、辻本 尚大(京都大学) |
| NC2水素製造・貯蔵・分離 サプライチェーン | 津村 朋樹(北海道大学)、大友 順一郎(東京科学大学)、中村 潤児(九州大学)、唯 美津木(名古屋大学)、田中 一宏(山口大学)、森永 隆志(鶴岡工業高等専門学校) |
| NC3CO2分離回収・炭素資源化 | Selyanchyn Roman(九州大学)、児玉 昭雄(金沢大学)、八木 政行(新潟大学)、村田 澄彦(京都大学)、中垣 隆雄(早稲田大学)、鈴木 祐太(同志社大学) |
| NC4ペロブスカイト・有機次世代太陽電池 | 尾坂 格(広島大学)、田村 宏之(東京大学)、松崎 功佑(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、今堀 博(京都大学)、王 亮(早稲田大学)、奥谷 昌之(静岡大学) |
| NC5パワーデバイス材料〜再エネ系統安定化 | 金本 俊幾(弘前大学)、花田 貴(東北大学)、寺本 章伸(広島大学)、福地 孝平(秋田大学)、安芸 裕久(筑波大学)、加藤 利次(同志社大学) |
| NC6重要鉱物分離・都市鉱山・資源循環 | 成田 弘一(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、高橋 博(秋田大学)、門脇 万里子(国立研究開発法人物質・材料研究機構)、小林 広和(東京大学)、伊藤 秀章(追手門学院大学)、官 国清(弘前大学) |
| NC7次世代革新炉・原子力(SMR/高温ガス炉/高速炉・HALEU燃料) | 佐々木 孔英(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)、斉藤 正樹(北海道大学)、守田 幸路(九州大学)、山本 章夫(名古屋大学)、大石 佑治(大阪大学)、関村 直人(東京大学) |
| NC8次世代地熱(超臨界地熱/EGS/地熱貯留層) | 山谷 祐介(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、石塚 師也(京都大学)、北村 圭吾(九州大学)、井岡 聖一郎(弘前大学)、中塚 勝人(北海道大学)、土屋 範芳(八戸工業高等専門学校) |
燃料と制度の反証を見据え三段の打ち手を講じよ
最後に、この勝ち筋がどのような条件で崩れうるかを見定め、そのうえで打ち手を3つの時間軸に分けて描く。勝ち筋を揺るがす最大の変数は、技術の成熟の速さでなく、燃料の供給網と、制度の予見性にある。その進み方だけを見て未来を描けば、判断を誤る。市場を開くのは、技術と同じくらい、供給の裏づけと、制度の確かさだからである。ここを読み違えれば、優れた技術も市場に届かない。
勝ち筋を崩しうる反証の条件
反証の条件は、いくつか明快に立てられる。第一に、小型モジュール炉が前提とする高濃縮ウラン燃料の商用の生産能力が、2024年時点で米国内にゼロだったという事実は、革新炉の実装の前提そのものを揺るがす。燃料が確保できなければ、革新炉は絵に描いた餅に終わる。過去の大型炉でコストが大きく超過した前例も、その見通しを慎重にさせる。技術の完成と、実装の確かさは、別ものである。
第二の反証は、制度の側にある。二酸化炭素の回収・貯留の事業法や、水素と化石燃料の価格差を支援する水素社会推進法は、2024年に公布されたばかりで、運用はこれからである。価格差の支援も、貯留の事業のしくみも、実際にどう運ぶかが定まっていない。制度の予見性が低いままでは、投資は動かず、技術が育っても実装が前に進まない。その不確かさが、そのまま投資のためらいに変わる。
第三の反証は、勝ち筋そのものの前提に関わる。もし、日本発の技術が、量産のコストで従来型に太刀打ちできないまま、しかも独自の市場も開けなければ、選び抜いた技術で世界に不可欠な位置を築くという勝ち筋は崩れる。加えて、担い手がばらばらのまま束ねられなければ、優れたシーズは海外の量産に呑み込まれる。反証を見据えることは、悲観ではなく、崩れる前に手を打つための備えである。
近い段の打ち手から始める
この反証を踏まえたうえで、打ち手は3つの段に分けられる。第1の段は、近い将来に取り組むべきことである。ペロブスカイト太陽電池のように、すでに事業化の前線に立つ技術の量産と導入を、国の支援で着実に立ち上げる。同時に、勝ち筋の各領域に散らばった担い手を、機関を越えて束ね直す。本レポートが名指しで示した8件のクラスターは、その束ね直しの最初の具体案である。人を組み替えることから、すべてが始まる。
近い段の打ち手のもう一つの柱は、足元を固めることである。再生可能エネルギーと次世代の技術が育ちきるまでの間、既存の原子力の再稼働と、液化天然ガスの活用で、電力の安定供給を確保する。GX脱炭素電源法が可能にした原子力の60年を超える運転を、安全の確認のうえで生かす。新しい電源へ移る土台を、まず手堅く整える段である。足場を固めずに次へ進めば、途中で電力の供給が揺らぐ危うさがある。
中期と長期の三段の打ち手
第2の段は、2030年前後に向けた中期の打ち手である。この時期に集中する商用化の関門を、技術と制度の両面で越えていく。グリーン水素が化石燃料とコストで競える水準へ近づけ、全固体電池や次世代の地熱を実装し、二酸化炭素の回収の制度を運用に乗せる。同時に、成長志向型のカーボンプライシングを、2028年度の賦課金から段階的に立ち上げ、脱炭素投資の財源と価格のシグナルを整える。両者の谷を、同時に渡る段である。
第3の段は、2030年代の先を見据えた長期の打ち手である。次世代の革新炉を、燃料の供給網とコストの課題を越えて実装し、重要鉱物のリサイクルで資源の依存を内側から和らげる。欧州連合の炭素国境調整措置が2026年に本格課金へ移ることを見据え、鉄鋼や化学の脱炭素を、輸出を続けるための条件として進める。制度の制約を、勝ち筋の追い風へと変えていく段である。守りの脱炭素を、攻めの強みに転じる。
この章が示したのは、燃料と制度という反証の条件を見据えたうえで、足元を固め、商用化の関門を越え、長期の自立を築くという、3つの段の打ち手である。資源の乏しい国が、量産でなく技術で、依存でなく自立でエネルギーの安全保障を築けるかどうかは、選び抜いた技術と、束ね直した人を、国として結び切れるかにかかっている。技術も人も、日本の中にある。あとは、それを結ぶ意志だけである。
産業創造プロセスで読む — この領域はいま、どの相にあるか
ICFM(産業創造 基盤予測モデル)は、産業の誕生を発火前の基盤成熟から離陸後の自己増殖まで6つの相で読み解く枠組みです。この枠組みで資源・エネルギー安全保障・GX領域を眺めると、成熟した基盤の上に次世代核が重なる二層産業と、核そのものがまだ未実証の萌芽産業とが混在し、しかも多くが基盤と統合の両面で律速される「これから組み立てる」局面にあることが見えてきます。産業創造の密度が最も高い領域です。
| 産業(IIDB) | 律速軸 | F / Q / R | 最大のボトルネック |
|---|---|---|---|
| 太陽光発電 | 成熟→次世代核 | 1 / 0.93 / +6.5 | 成熟→次世代軸。次世代(ペロブスカイト)の量産統合力が律速(研究知財は厚いが量産移転が薄い)。 |
| 洋上風力発電 ★ | 両面(知見×統合) | 0.6 / 0.42 / +2 | 両面軸。浮体式の物質・材料(SEP船/大型基礎/動的ケーブル/港湾)と統合点(一体設計・量産・標準化の担い手)が同時律速 |
| 地熱発電(従来型+EGS/クローズドループ次世代型) | セクターの動き | 0.8 / 0.39 / +2.9 | 次世代型の統合(掘削の反復可能設計と統合者) |
| 核融合エネルギー ★ | 知見の蓄積 | 0 / 0.19 / -2.4 | 核の不在(正味エネルギー未実証)+物質(トリチウム/HTS線材/増殖ブランケット) |
| 低排出水素・電解装置 | 両面(知見×統合) | 0.4 / 0.39 / +0.71 | 両面(需要の政策依存/投機性 + 統合の未収斂・過剰能力淘汰)。 |
| 燃料アンモニア | 知見の蓄積 | 0.2 / 0.35 / -0.57 | 知見蓄積(核未成熟=専焼/触媒/舶用/製造の同時未達)。加えて需要の政策依存・統合未収斂。 |
| CCUS(CO2回収・貯留・利用) ★ | 両面(知見×統合) | 0.4 / 0.39 / +0.71 | 両面(材料=貯留アクセス許認可 + 需要のCO2内在価値なし・政策依存 + 統合のT&Sハブ形成途上)。 |
| リチウム資源・電池材料 ★ | 両面(知見×統合) | 1 / 0.93 / +6.5 | 両面(DLE商業化・ブラックマスリサイクルの支配的設計が未収束=知見側 × 需要拡大と精製の中国集中/非中国化の綱引き= |
| グリーン水素 ★ | 両面(知見×統合) | 0.6 / 0.39 / +1.8 | 需要動機+統合点の欠落(補助金非依存の実需と電解・輸送・利用を束ねる統合者の不在) |
| CCUS・炭素回収利用貯留 | セクターの動き | 0.8 / 0.89 / +5.2 | 需要動機の欠落(補助に依らずCO2利用に対価を払う実需=合成燃料/建材固定の担い手不在) |
| 蓄電システム・系統安定化 | 成熟→次世代核 | 1 / 0.93 / +6.5 | 精緻化(非リチウム長時間蓄電・全固体電池+希少化する系統統合・接続能力) |
律速軸の分布は「両面」が5産業と最も多く、「成熟→次世代核」2、「セクターの動き」2、「知見の蓄積」2と広く散らばります。この「両面」の多さこそ、この領域の性格を決めています。両面とは、基盤(材料・核)の未成熟と、異分野を集約する統合者の不在とが同時に律速している状態で、洋上風力発電(F=0.6、Q=0.425、R=1.985)、低排出水素・電解装置(F=0.4、Q=0.388)、CCUS(F=0.4)、グリーン水素(F=0.6、Q=0.388)、リチウム資源・電池材料がここに入ります。洋上風力の着床式は成熟していても、産業創造の焦点である浮体式は施工資産という物質と統合の担い手の両面が欠け、造船・海洋・電力・港湾を束ねて標準化と量産を担う統合組織の設計が最重要とされます。グリーン水素も、水電解の核と量産基盤は組み上がっているのに、補助金に依らない実需と電解・輸送・利用を束ねる統合者が決定的に欠落し、発表案件のうち最終投資決定に至るのは1割未満です。
これに対し核融合エネルギー(F=0.0、R=-2.428)と燃料アンモニア(F=0.2、R=-0.569)は「知見の蓄積」が律速で、正味エネルギーや専焼・触媒といった産業成立の核そのものが未達の萌芽段階にあります。核融合はICFMが唯一「基盤が薄い」と正しく判定する例で、6入力すべてが欠け、統合や需要以前に核科学の到達が前提となります。一方リチウム資源・電池材料はF=1.0、Q=0.925、R=6.527と最も基盤が厚く、成熟でなく高成長・高変動の拡大相にあって、律速は欠落ではなくDLE商業化やブラックマスリサイクルという「どの設計に収束するか」の局面です。両面型と知見蓄積型が多いほど基盤に穴があり、そこに新産業を組み立てる余地が大きいという意味で、この領域は産業創造の宝庫だと読めます。
研究者供給は31.1万人版(本体235,521人とサブ76,054人の合計)のfield_class分類で見ると、「エネルギー」5,555人を軸に、「水素・合成燃料」787人、「重要鉱物・資源循環」749人、「核融合」1,467人の合わせて8,558人です。エネルギー全体の層は厚いものの、水素・合成燃料や重要鉱物のように政策が重点を置く新領域ほど研究者数は絞られ、需要と統合が欠ける両面型の律速を埋めるには、この限られた層をどう束ねるかが問われます。核融合の1,467人は萌芽産業を支える貴重な核ですが、産業成立の核自体が未達である点は正直に受け止める必要があります。
| 産業 | 構成しうる実在研究者(役割・所属分野) |
|---|---|
| 洋上風力発電 | 武内 崇晃(核)、サハレ アヌラグ・ラフル(核)、富澤 徹弥(核)、田中 謙司(統合)、原 尚之(統合) |
| 核融合エネルギー | 渡邉 智彦(核)、田邉 哲朗 (田辺 哲朗)(核)、菱沼 良光(核)、波多野 雄治(橋渡し)、大野 哲靖(統合) |
| CCUS(CO2回収・貯留・利用) | 栗原 拓也(核)、小谷 壽(核)、葉 金花(橋渡し)、又吉 直子(橋渡し) |
| リチウム資源・電池材料 | 鄭 慶新(核)、鈴木 智也(橋渡し)、長谷川 将克(橋渡し) |
| グリーン水素 | 鈴木 耕拓(核)、冨安 博(核)、李 海文(橋渡し)、金井 保(橋渡し)、アズイッズ ムハンマッド(橋渡し) |
名指しした研究者は研究者データベースおよび機関公式ディレクトリで実在・所属を照合済み(捏造ゼロ)。役割は核(中核知の担い手)/橋渡し(分野間のつなぎ役)/統合(産業全体を束ねる担い手)。
ICFMが繰り返し指し示すのは、この領域で欠けているものの多くが統合の担い手だという事実です。そして幸いなことに、5産業では実名の研究者クラスターがすでに見えています。洋上風力では係留疲労の武内崇晃氏、浮体構造の耐震基礎を担うサハレ アヌラグ・ラフル氏、金属疲労の富澤徹弥氏を核に、浮体式統合設計の田中謙司氏と分散最適制御の原尚之氏が統合役として名を連ねます。核融合ではプラズマ乱流制御の渡邉智彦氏、トリチウム燃料循環の田邉哲朗氏、高温超伝導線材の菱沼良光氏、炉心材料の波多野雄治氏、炉統合の大野哲靖氏が並びます。CCUSではMOF吸着材の栗原拓也氏やCO2分離膜の小谷壽氏、リチウムではブラックマスリサイクルの鄭慶新氏、グリーン水素では電解材料の鈴木耕拓氏らが核を担います。欠けているのは主に、これらの核を実需や量産と結ぶ統合クラスターであり、研究者連携で立ち上げられる位置です。NPOという中立の立場からは特定技術の勝敗を予断できませんし、核融合のように核が未達で「構想が早すぎる可能性」を持つ産業もありますが、分散した研究者を統合の担い手へ束ねる橋渡しには寄与できます。
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本サマリーは要点と全体像を示すものです。各テーマの一次資料・数値・出典・全リストは、詳細ページ「資源・エネルギー安全保障・GX 詳細」でご確認いただけます。
出典・作成:本サマリーは内閣官房「日本成長戦略」関連の公表資料(議事要旨・政府目標・配布資料)および公開された学術・産業データに接地して作成した編集物であり、政府の公式見解ではありません。新研究クラスター構成案の名指し研究者は、研究者データベースおよび機関公式ディレクトリで実在・所属を照合しています(捏造ゼロ)。数値は生成時点の実データです。