日本成長戦略 17領域 | サマリーレポート
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日本成長戦略 17領域 / サマリーレポート

量産で競わず、不可欠性を握る — 信頼性の基幹ロケットと衛星部素材、月面輸送で描く日本の航空・宇宙戦略

量産・低価格の競争を避け、信頼性と不可欠な基幹技術で宇宙の自立性を取り戻せるかを問う。

航空・宇宙|図解+章立て要約|詳細は現行の領域ページに接地(約18,155字)
この分野の核となる主張

本DBの審議と洞察は、量産・低価格でSpaceXに正面から勝てない日本が、信頼性の高い基幹ロケットH3・衛星部素材・月面輸送技術で不可欠性を確保し、海外打上げ依存という自立性の課題を国産製造能力で克服すべきだと示す。

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量産で競わず、不可欠性を握れ

本レポートの中心にある主張は明快である。量産と低価格でSpaceXに正面から勝てない日本は、信頼性の高い基幹ロケットH3、衛星の部素材、月面輸送技術で不可欠性を確保し、人工衛星の約半分を海外打上げに依存するという自立性の課題を国産の製造能力で克服すべきだということである。この分野の争点は「安く大量に打ち上げる競争」に日本が加わることではなく、他国が容易に代替できない基幹技術で世界の供給網に食い込むことにある。以下、この主張を市場・技術・担い手・政策の4つの論拠で支える。

第1の論拠は市場の位置づけである。世界の宇宙経済は何を含めるかで大きく変わり、Space Foundationは2024年に約6,000億ドル超と試算し、長期ではモルガン・スタンレーが2040年に1兆ドル超へ拡大するとみる。ただしこれらは定義の差が大きい二次情報だ。確度の高い一次情報は各国の宇宙予算と自国の産業目標であり、日本は10年で1兆円規模の宇宙戦略基金を設け、2030年代早期に8兆円規模の産業化を掲げている。数字を追うのではなく、この目標をどの技術で実現するかが問われている。

第2の論拠は技術の地殻変動である。McKinseyは再利用ロケットが2030年に打上げ単価を約10ドル/kgまで崩落させると予測し、中国の衛星年産能力は3,500基を超えて1万基も視野に入る。コストの崩落と大量製造という2つの波は、日本に量産競争ではなく信頼性と基幹技術での差別化を迫る。安さの波が過ぎても価値が残る領域、すなわち信頼性の基幹ロケット、部素材、月面輸送に資源を集中することが合理的である。

第3の論拠は担い手の現在地である。いまの航空・宇宙研究者は宇宙物理学やX線天文学に438名、衛星リモートセンシングに236名と、宇宙のなかでも天体観測に大きく偏り、ロケットや衛星を「つくる」側と航空の担い手が相対的に薄い。この偏りを是正するため、本レポートは勝ち筋に沿って異なる分野・機関の研究者を橋渡しする機関横断の研究チームを8件、名指し42名、参加機関34で提案する。宇宙6件に加え、分野名にありながら欠けていた航空を2件補った。

第4の論拠は政府の勝ち筋である。宇宙活動法と宇宙戦略基金が民間参入を後押しし、航空側ではCORSIAやReFuelEU AviationがSAF義務化を通じて脱炭素需要を生む。政府は勝ち筋となる技術を選び、サプライチェーンの強靱化、射場や燃焼試験設備の基盤強化、そしてアンカーテナンシーで宇宙の自立性を確保しにいくべきだ、というのが本レポートの結論である。

そもそも「不可欠性」とは何か。安く大量に供給できる能力ではなく、その技術や部品が欠けると他国の宇宙システムも成り立たなくなる、という代替の難しさを指す。世界の宇宙経済が拡大し、他国が衛星を大量に製造・運用するほど、その供給網に不可欠な信頼性の高い部品と輸送手段への需要はむしろ高まる。量産の波に呑まれるのではなく、その波が必要とする要の技術を握ることが、規模で劣る日本の生存戦略である。本レポートはこの一点を、市場・技術・担い手・政策のすべてで一貫して主張する。

本レポートの構成もこの論理に沿う。状況と論点で核心の問いを立て、市場・技術・ロードマップで日本の位置と時間軸を示し、政府の勝ち筋で選択と集中の設計を述べ、担い手と機関横断チームで実装の具体を示す。最後に提言と不確実性で、短期・中期・長期の打ち手と、前提が外れたときの撤退の条件を並べる。結論は一貫して「量産で競わず、不可欠性を握る」に収斂する

以上を貫くのは「規模で追わず、位置で勝つ」という一貫した論理である。他国が量産で先行する状況は、量で追いつく発想では覆せない。むしろその量産の網に不可欠な部品と輸送手段として食い込むことが、日本に固有の道だ。ただし各提言には「その連携や投資が不要になる条件」を併記し、中立の立場から反証も示す。戦略は有力だが、コストの崩落と規模の非対称がどこまで進むかはまだ検証しきれておらず、前提が外れれば速やかに設計を組み替える柔軟さが要る

日本は量産で競わず、信頼性の基幹ロケットと衛星部素材、月面輸送技術で宇宙の不可欠性を握りにいく。
市場・産業規模
世界宇宙経済は定義差で6,000億ドルから長期1兆ドル超へ拡大し、日本は2030年代早期に8兆円規模の産業化を目標に掲げる。
政府の方針・投資
政府は勝ち筋6技術を選び、サプライチェーン強靱化と射場・燃焼試験設備の基盤強化、アンカーテナンシーで宇宙の自立性を確保する。
各国の動き
米国はArtemisで月を主導し中国は嫦娥・天宮を国家主導で進める中、日本はH3の安定運用と宇宙戦略基金で段階的に商業拡大を図る。
審議体制
航空・宇宙WG/有識者10名
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量で追う戦い方はもう効かない

規模では日米に劣る、しかし意思は明確

まず現状を確認する。世界の宇宙経済の規模は、何を数えるかで桁が変わる。打上げの売上だけなら年に数百億ドルだが、衛星サービスや宇宙利用まで含めればSpace Foundationは2024年に約6,000億ドル超と試算する。一次情報である各国の宇宙予算を見れば、NASAは年に約250億ドル、ESAは約78億ユーロを投じており、日本はこれに対して10年で1兆円規模の宇宙戦略基金を設置し、2030年代早期に8兆円規模の産業化を目指す段階にある。規模の絶対値では日米に大きな差があるが、日本は基金という形で意思を明確にしている。

2つの構造転換 ― コスト崩落と大量製造

次に、何が変わったのかである。近い未来の航空・宇宙を動かすのは、再利用ロケットによる打上げコストの崩落と、衛星の大量製造という2つの変化だ。McKinseyは2030年に約10ドル/kgへの低下を予測する。かつて打上げは希少で高価な行為だったが、コストが桁違いに下がれば、衛星を「たくさん・気軽に」上げる時代が到来する。この変化は市場を広げる好機であると同時に、量で勝る者が大きく有利になるという構造の転換でもある

その転換のなかで、日本は不利な位置に立たされている。日本は人工衛星の約半分を海外の打上げに依存しており、自立性に大きな課題を抱えている。自国のロケットで自国の衛星を確実に上げられないという事態は、商業上のコストだけでなく、安全保障上の脆弱さでもある。さらに、中国の衛星年産能力は3,500基を超え、1万基も視野に入るという、規模の面で非対称な状況にある。この生産力の差は、単なる企業間の競争を超えた国家間の非対称性を意味する。

国際的な力学も動いている。米国はArtemis計画で月面への再着陸を主導し、中国は独自の宇宙ステーション天宮と月探査の嫦娥を国家主導で進め、インドはチャンドラヤーン3号で2023年に月の南極着陸を世界で初めて果たした。各国が国家主導で巨大な衛星群と探査を加速するなかで、日本のH3ロケットは2023年に試験機1号機が失敗し、2024年2月の2号機でようやく初成功したという、立て直しの途上にある。基幹ロケットの信頼性を固めることが、他のすべての前提になっている。

制度の側でも変化が進む。宇宙活動法と衛星リモートセンシング法が民間の宇宙事業の制度基盤をなし、宇宙戦略基金がJAXAに設置されている。一方で宇宙資源の利用ルールは国際的にまだ整備の途中で、スペースデブリの25年ルールの厳格化や米FAAのPart450の見直しなど、打上げの急増に規制が追いつく途上にある。航空の側では、CORSIAが国際航空のCO2排出のオフセットを義務化し、EUのReFuelEU AviationがSAFの混合義務を段階的に強めることで、脱炭素という新たな需要と制約が同時に生まれている。

この現状を一次情報と二次情報に分けて読むことが重要だ。市場規模の6,000億ドルや1兆ドルという数字は定義しだいで揺れる二次情報であり、投資判断の根拠にするには危うい。一方、各国の宇宙予算やH3の打上げ結果、宇宙戦略基金の1兆円という規模は、検証可能な一次情報である。揺れる市場予測ではなく、確度の高い一次情報を土台に戦略を組み立てるべきだという姿勢が、この分野を冷静に読むための前提になる。

H3ロケットの2号機成功が持つ意味も、この文脈で捉え直せる。それは単なる技術的な達成ではなく、海外依存という自立性の課題に対する反撃の起点である。自国の基幹ロケットが安定して飛べば、衛星を確実に軌道へ運べるようになり、海外への依存を段階的に減らせる。逆に基幹ロケットが揺らげば、勝ち筋の起点そのものが失われる。だからこそ、H3の安定運用は現状分析の中心に置かれるべき事実なのである。

核心の問い ― 量産に頼らずどこで不可欠か

整理すると、日本が置かれた状況は3つの圧力に要約できる。1つは打上げコストの崩落による経済の圧力、もう1つは中国の大量製造に代表される規模の圧力、そして海外打上げへの依存という自立性の圧力である。これらは互いに絡み合い、量で追う戦い方をますます不利にする。だからこそ問いは「どう量産に追いつくか」ではなく「量産に頼らずどこで不可欠になるか」へと組み替えられねばならない

こうして事実を並べると、核心の問いが浮かび上がる。コストが崩れ、規模で圧倒され、海外への依存を抱えたこの分野で、日本は量産競争を避けながら、何を起点に宇宙ビジネスの主導権を握れるのか。本レポートの答えは、日本が強みを持つ信頼性の高い基幹ロケットと月面輸送技術を起点に据え、軍民両用の人工知能のソフト開発力と国産の製造体制を組み合わせて、他国が代替しにくい不可欠性を確保することにある。この問いを、市場・技術・ロードマップ・勝ち筋・担い手・研究チームの順に読み解いていく。

国・地域主要な政策・投資(要点)
日本宇宙戦略基金は総額1兆円規模をJAXAに設置(令和5年度補正3,000億円・令和6年度補正3,000億円・令和7年度補正2,000億円が配分済み。文科省・経産省・総務省の3省で構成)。/防衛省の衛星コンステレーション整備・運営等事業は5年で総額約2,831億円規模。
米国NASAの年間予算は約250億ドル規模。Artemis計画は月面有人着陸・月周回ゲートウェイを推進。
欧州(EU・ESA)ESAの年間予算は約78億ユーロ規模(2024年)。
中国国家主導の大規模投資(国有の中国航天科技集団CASC等)。年間打上げ回数で米国に次ぐ。
インドISROの予算は相対的に小規模だが、低コストで高い成果(チャンドラヤーン3号の月南極着陸2023年)。
国際(ICAO)規制枠組み(国際合意)。

図:主要国・地域の政策と投資規模(日本を強調)。通貨・単位が国ごとに異なるため規模の直接比較ではなく、各国が何にどれだけ投じているかの一覧。出典は詳細ページを参照。

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市場予測に賭けず、価値連鎖の急所を取れ

揺れる市場予測という二次情報

宇宙の市場規模は、定義しだいで大きく揺れる二次情報だという点をまず押さえておきたい。打上げの売上に限れば年に数百億ドルにとどまるが、衛星サービスや宇宙を使った各種の利用まで含めれば、Space Foundationは2024年に約6,000億ドル超と見積もる。長期の見通しでは、モルガン・スタンレーが2040年に1兆ドル超へ、一部の予測は2035年に1.8兆ドル規模へと拡大するとみるが、これらの市場予測は定義の差が大きい二次情報であり、確度は一様ではない。数字の大きさに引きずられて投資判断を下すのは危うい。

確度が高いのは予算と産業目標

確度の高い一次情報は、各国の宇宙予算と日本自身の産業目標である。NASAは年に約250億ドル、ESAは約78億ユーロを投じている。これに対して日本は、10年で1兆円規模の宇宙戦略基金を設け、2030年代早期に8兆円規模の産業化を掲げる。この1兆円の基金と8兆円の産業目標こそ、日本がこの市場のどこを取りにいくのかを示す確度の高い座標である。市場全体の伸びを論じる前に、この一次情報を投資の出発点に据えるべきだ。

産業としての構造を見ると、価値の連鎖は打上げ、衛星の製造、そして衛星を使ったサービスへと連なる。日本の位置づけは、打上げ能力を海外に約半分依存している一方で、投資の機会は明確に分かれている。この分野で投資が集中すべき先は、次世代の航空機、国産ロケットの製造、小型衛星の衛星群、そして月面輸送であり、これらを横断して成否を分けるのが、軍民両用に使える人工知能のソフト開発力である。ハードの製造だけでなく、それを制御し運用するソフトの力が競争軸になる。

ここで問われるのは、価値の連鎖のどこに日本の強みがあるかである。打上げの安さで勝つのは難しいが、衛星の部素材や信頼性の高い基幹ロケット、月面への輸送という、供給網の要となる技術では代替されにくい位置を占め得る。安く大量に打ち上げる領域は他国に譲り、他国の量産にも不可欠な部品と輸送手段の供給者になるという選び方が、規模で劣る日本にとって現実的な市場戦略になる。

価値の連鎖のなかで、航空の側にも見過ごせない投資機会がある。次世代の航空機、すなわち電動や水素を使う推進、軽量な複合材の機体、そして脱炭素の航空燃料に向かう需要は、規制を起点に立ち上がる新しい市場だ。CORSIAやReFuelEU Aviationが排出の規制とSAFの義務化を進めることで、この市場には制度に裏づけられた確かな需要が生まれる。宇宙だけでなく航空の脱炭素も、日本が基幹技術と制度対応で不可欠になり得る領域である

投資の判断軸としては、規模の大きさよりも「代替されにくさ」を優先すべきだ。安く大量に打ち上げる能力は他国が先行し、量で追う投資は消耗しやすい。これに対し、信頼性の高い基幹ロケット、衛星の部素材、月面輸送、そしてそれらを制御する軍民両用の人工知能は、いずれも代替が効きにくく、他国の量産の網にも組み込まれ得る。市場を「取りにいく」より「不可欠になる」という発想が、限られた資源を最も効かせる配分を導く。

面積でなく急所で市場を見る

この視点をもう一段進めれば、日本が目指すべきは「宇宙の大国」ではなく「宇宙の要」である。市場全体の規模で米中に並ぶことは現実的でないが、他国が大量に上げる衛星群の信頼性、それを運ぶ基幹ロケット、その部素材という要の位置を握れば、規模に依存しない存在感を確保できる。8兆円規模の産業化という目標も、この「要」の位置取りを積み上げることで初めて現実味を帯びる。市場を面積でなく急所で捉える発想が、限られた資源の日本には欠かせない。

実務に落とすなら、投資の意思決定は「その技術が量産の時代に代替されるか、それとも不可欠になるか」という一問に還元できる。安く大量に打ち上げる能力は代替が進む側であり、信頼性の基幹ロケット・衛星の部素材・月面輸送・軍民両用の人工知能は不可欠になる側だ。市場予測の絶対値に賭けるのでなく、この代替可能性の軸で投資先を仕分けることが、定義の揺れる市場のなかで誤りにくい判断を導く。

つまり市場戦略の核心は、規模の拡大でなく、価値の連鎖のどこを急所として押さえるかの特定にある。日本にとってその急所は、衛星の部素材、信頼性の高い基幹ロケット、月面輸送、そしてそれらを制御する軍民両用の人工知能という、供給網の要となる4点だ。だから経営としても政策としても、8兆円の産業化目標を「どの技術で・どの位置で」実現するのかを、この4つの急所に即して具体化すべきである。市場を面積でなく急所で捉えるこの視点が、定義の揺れる市場予測に振り回されない投資判断の起点になる。

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安さが行き渡った後に残る技術を先に押さえる

コスト崩落が単価競争を壊す

近未来の技術の焦点は、再利用ロケットによる打上げコストの崩落と、衛星の大量製造という2つの軸に集約される。McKinseyは2030年に打上げ単価が約10ドル/kgまで下がると予測しており、これは打ち上げの経済性を根本から書き換える水準だ。コストがここまで崩れると、単価で競う戦い方そのものが成り立たなくなり、価値の源泉は「安さ」から「信頼性と基幹技術」へ移る。裏を返せば、安さが行き渡った後に何が残るかを見極めることが、技術戦略の要になる。

量産では埋まらない規模の差

もう1つの軸である大量製造では、日本と各国の間に規模の非対称がはっきり表れる。中国の衛星年産能力は3,500基を超え、1万基も視野に入る。この生産力は、単なる商業競争を超えて安全保障上の非対称性を突きつける。大量の衛星をつくり・運ぶ力の差は、量で追いつく発想では埋まらない。同じ土俵で数を競えば、資源が分散したまま消耗するだけだ。だからこそ、日本は量産の土俵ではなく、他国が容易に置き換えられない技術で勝負する必要がある。

日本が起点に据えられる強みは、月面輸送技術である。本レポートは、この月面輸送を軸に、低軌道から月面までのビジネスを開拓し、軍民両用の人工知能のソフト開発力と国産の量産体制を組み合わせて、2030年から2055年へと段階的に拡大する道筋を描く。信頼性の高い基幹ロケットH3、合成開口レーダーや光学の小型衛星、衛星の部素材という3つの柱が、この段階的拡大の技術的な背骨になる。これらはいずれも、量産競争とは別の軸で価値を持つ技術群だ。

量産期に入る技術群のなかでも、人工知能の役割は横断的である。小型衛星が撮る地球観測のデータを解析し、衛星どうしの衝突を回避し、高精度な測位につなげる一連の処理は、人工知能のソフト開発力が支える。この力は民間の利用にも安全保障の用途にも通じる軍民両用の性格を持ち、ハードの製造能力とは別の競争軸を形づくる。ハードで規模に劣っても、それを賢く動かすソフトの層で不可欠になり得るという点に、日本の勝機がある。

同時に、未来洞察としてリスクの射程も直視しておく必要がある。再利用ロケットのコスト崩落がどこまで進むか、衛星の大量製造の非対称がどこまで広がるかは、まだ検証しきれていない不確実な要素を含む。市場予測の多くは定義の差が大きい二次情報であり、コスト予測も前提が変われば大きく振れる。この分野の技術動向は「量産期に入りつつあるが、その帰結はまだ確定していない」という段階にある。だから戦略は、確定した未来ではなく、揺れ幅のある未来に対して頑健であることが求められる。

個別の技術に降りて見ると、勝ち筋の3本柱はそれぞれ固有の難しさを持つ。信頼性の高い基幹ロケットでは、極低温の推進剤をどう管理し、高速で回転するポンプをどう安定して制御するかが、飛行の成否を左右する。合成開口レーダーや光学の小型衛星では、多数の衛星を連ねて観測を止めない運用と、その膨大なデータを人工知能で解析する力が問われる。衛星の部素材では、宇宙という過酷な環境に耐える材料をいかに国産で供給するかが課題になる。いずれも「安さ」では代替できない、蓄積のいる基幹技術である

さらに、軌道上の安全を保つ技術も量産期に不可欠になる。衛星が増えれば増えるほど、衛星どうしの衝突を避け、スペースデブリを取り除き、太陽活動などの宇宙の天気による障害を減らす必要が高まる。これらは衛星を「打ち上げる」段階でなく「使い続ける」段階を支える技術であり、大量製造の時代にこそ価値が増す。日本がこの運用の信頼性で不可欠になれば、他国が大量に上げた衛星群の安全をも支える立場に立てる。

安さが行き渡った後に残るもの

技術動向をまとめれば、日本の取るべき姿勢は「安さを追う」でも「規模を追う」でもなく、「安さと規模が行き渡った後に価値が残る技術を先に押さえる」ことに尽きる。信頼性の高い基幹ロケット、衛星の部素材、月面輸送、そして運用の安全を支える人工知能は、いずれもコストが崩れても代替が効きにくい。量産期の到来はむしろ、これらの要の技術への需要を増やす追い風になる。変化を脅威とだけ見ず、不可欠性の需要を生む機会として読み替える視点が要る。

だから技術戦略として先に押さえるべきものは明確だ。極低温の推進剤とポンプを制御する信頼性の高い基幹ロケット、多数を連ねて観測を止めない小型衛星とその部素材、月面輸送、そして軌道上の安全と観測を支える軍民両用の人工知能――この4群は、いずれもコストが崩れても代替が効きにくい。安さと規模が行き渡るほど、むしろこれらの要の技術への需要は増す。変化を脅威と見るのでなく、不可欠性の需要を生む機会として、いまこの4群を押さえておくべきだ

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04

信頼性を、各段階を渡る通貨とせよ

まずH3の安定運用を固める

時間軸で見ると、日本の航空・宇宙戦略の中核はまずH3ロケットの安定運用にある。H3は2023年に試験機1号機が失敗し、2024年2月の2号機で初成功に至った。この立て直しの段階を確実に越え、量産と信頼性を両立させることが、その後のすべての商業展開の前提になる。基幹ロケットが安定して飛ぶことは、他の技術を積み上げる土台であり、ここでの信頼性の確立が最初のマイルストーンである。土台が揺らげば、その上に築くすべてが揺らぐ。

次の段階は、衛星を目的の軌道まで運ぶ軌道間の輸送段や、小型衛星の衛星群の展開である。合成開口レーダーや光学の小型衛星を数多く連ねて地球を観測し、そのデータを人工知能で解析する。ここでは、極低温の推進剤の管理やポンプの制御といった推進の技術と、衛星データの解析や自律的な軌道の安全確保といった人工知能の技術が、産業化の鍵を握る。基幹ロケットの信頼性が固まれば、その上に衛星群という需要が積み上がる構図だ。

さらに先には、月面や小惑星の資源をその場で利用する技術がある。JAXAを中核に、月の拠点建設計画や火星衛星探査のMMXが見据えられており、水氷の採掘、地質の自動判読、宇宙で使える材料といった技術が、月面輸送と衛星の部素材の国産の裾野をつくる。宇宙で発電して地上へ送る宇宙太陽光発電の実用化も、長い時間軸のなかに位置づけられている。これらの長期目標は、いずれも足元の基幹技術が固まって初めて現実味を帯びる

この時間軸を担う中核機関

この時間軸を担う中核の機関は明確だ。日本の航空宇宙研究はJAXAを中核に、東京大学・名古屋大学・九州大学・東北大学などがロケット推進・小型衛星・帰還技術を分担している。九州大学はQPS研究所の、東北大学はElevationSpaceの母体となり、大学発の技術を産業化の裾野へ橋渡ししている。国際的にはMITやNASA JPLと並ぶ研究拠点として、高精度の観測、衛星の光通信、再突入の技術が磨かれている。研究の中核機関と産業の担い手が地続きになっている点が、日本の強みでもある。

この時間軸をマイルストーンとして捉えると、まずはH3の運用を確実にする段階、次に軌道間の輸送段と小型衛星の衛星群を実装する段階、そして月面資源のその場利用や宇宙太陽光発電へ向かう段階、という3つの層が積み上がる。各段階は独立しておらず、前の段階の信頼性が次の段階の前提になる。探査計画の華やかさに引かれて順序を飛ばせば、土台を欠いたまま上物だけが宙に浮く。ロードマップの本質は、段階の順序を守ることにある。

国際連携も時間軸の設計に組み込むべき要素だ。日本の研究拠点はMITやNASA JPLと並ぶ水準で、高精度の観測、衛星の光通信、再突入の技術を磨いてきた。こうした国際的な研究のつながりは、日本が単独では追いつけない領域を補い、逆に日本が不可欠な部品や技術を世界へ供給する回路にもなる。自立性を高めることと国際的に連携することは矛盾しない。国産の製造能力を軸に据えたうえで、補い合える相手とは積極的に組む、という両立が求められる。

信頼性は各段階を渡る通貨

時間軸を通して一貫するのは、信頼性を各段階の通貨として扱うことだ。H3の安定運用も、衛星群の運用も、月面資源のその場利用も、それぞれの段階で「確実に動く」ことが次の投資を呼び込む。逆に一度の失敗が信頼を損なえば、後続の計画全体が遅れる。探査の到達点を競うのでなく、各段階で信頼性を積み増していく設計こそが、日本のロードマップの背骨である。だから足元の製造・試験の基盤への投資は、地味でも最優先に置かれるべきだ。

ただしロードマップには弱点が残る。一部の重要な部品や中核技術は他国が先行し、生産の体制、試験の設備、地上局に課題がある。だから時間軸の設計は、華々しい探査計画の先だけを見るのでなく、H3の安定運用と製造・試験の基盤という足元を各段階で固めてから次へ進む、という順序を守ることに尽きる。この順序を飛ばして月面や宇宙太陽光発電といった長期の目標に手を伸ばせば、土台を欠いたまま上物だけが宙に浮く。段階の順序こそが、このロードマップの成否を分ける。

投資機会マップ(時間軸×確度)H1|近い将来H2|中期H3|長期再使用ロケット・宇宙輸送確度 中小型衛星コンステレーション確度 中-高SAF・水素航空確度 中eVTOL・次世代エアモビリティ確度 中宇宙状況把握確度 中

図:この分野の有望な投資機会を、動き出す時間軸(近い将来・中期・長期)と実現の確度(棒の濃さ)で配置。左ほど早く動き、濃いほど確度が高い。

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選択と集中こそ、規模で劣る日本の勝ち筋

量産競争から退くという選択

政府が選ぶべき勝ち筋は、量産競争からの明確な撤退と、不可欠性への集中である。米国はArtemisで月を主導し、中国は嫦娥と天宮を国家主導で進めるなかで、量産と低価格でSpaceXに直接勝てない日本は、信頼性の高い基幹ロケットH3、合成開口レーダーや光学の小型衛星、衛星の部素材で不可欠性を確保し、宇宙戦略基金で段階的に商業拡大を図るという道を選ぶべきだ。これが、国際競争のなかで日本が取り得る現実的な道である。すべてに手を伸ばすのではなく、勝てる技術を絞り込むことが起点になる。

基盤整備と初期需要の引き受け

この道を支える具体策として、政府はサプライチェーンの強靱化、射場や燃焼試験設備といった基盤の強化、そしてアンカーテナンシーを組み合わせる。アンカーテナンシーとは、政府が最初の確実な需要家として国産の技術を買い支え、民間が立ち上がるまでの市場をつくる仕組みだ。基盤設備を国が整え、初期需要を国が引き受けることで、民間だけでは越えにくい立ち上げの谷を渡すという設計である。供給網が海外に依存したままでは不可欠性は築けないため、部素材から製造までの国産の裾野を厚くすることが前提になる。

制度の環境もこの絞り込みを後押しする。宇宙活動法と衛星リモートセンシング法が民間の宇宙事業の制度基盤をなし、10年で1兆円規模の宇宙戦略基金がJAXAに置かれている。航空の側では、CORSIAが国際航空のCO2排出のオフセットを義務化し、EUのReFuelEU AviationがSAFの混合義務を段階的に強めることで、SAFの供給は日本でも2030年に10%を目標として需要を押し上げる。脱炭素の規制が、航空産業に新たな需要と制約を同時に生む構図である。規制を制約とだけ見るのでなく、新しい市場を生む需要の源として捉える視点が要る。

各国との比較で見れば、日本の取る道は「国家主導の巨大探査で先頭に立つ」ものではない。米国のArtemisや中国の嫦娥・天宮のような国家主導の大規模探査に規模で並ぼうとすれば、資源が分散し、いずれの分野でも中途半端になりかねない。インドがチャンドラヤーン3号で月の南極着陸を世界で初めて果たしたように、探査の一番乗りは象徴的な価値を持つが、それ自体が産業の自立性を保証するわけではない。むしろH3の安定運用を軸に、勝てる技術を絞り込み、宇宙戦略基金で段階的に商業を拡大するという「選択と集中」こそ、日本に固有の勝ち筋である

航空の脱炭素も両輪に組み込む

航空の脱炭素という新しい需要も、この方策の一部として取り込むべきだ。CORSIAとReFuelEUがSAFの義務化を進めることで、原料の生産から燃焼、排出の評価、供給の持続可能性の制度までが一連の産業として立ち上がる。宇宙の不可欠性の確保と、航空の脱炭素という規制起点の需要は、いずれも「安さの競争」ではなく「基幹技術と制度対応」で勝つ領域であり、日本の強みと整合する。政府はこの2つを、分野名にふさわしく航空と宇宙の両輪として設計すべきである。

規制の環境は、この選択を後押しすると同時に、対応を怠れば足かせにもなる。スペースデブリの25年ルールの厳格化や、米FAAのPart450の見直しは、打上げが急増するなかで安全と秩序を保つための動きだ。デブリを確実に除去し、規制に適合した運用を実現できる技術は、これからの宇宙利用で必須の資格になる。規制を制約とだけ捉えるのでなく、それに適合できること自体を不可欠性の一部として設計する視点が、この選択を持続させる。

この選択と集中を動かすのは、経済安全保障の観点を持つ司令塔である。航空・宇宙は、経済安全保障大臣のもとで航空宇宙のワーキンググループが議論し、10名規模の有識者がその審議を支える体制で検討されている。基幹ロケット・部素材・月面輸送・小型衛星・軍民両用の人工知能、そして航空の次世代機とSAFという勝ち筋の技術群は、経済と安全保障が交わる領域であり、民間の判断だけでは投資が届きにくい。だからこそ、国が方向を定め、基盤と初期需要を引き受ける役割がきわめて重要になる。

だからこの道は結局、何を選び、何を捨てるかの判断に帰着する。信頼性の基幹ロケット、衛星の部素材、月面輸送、小型衛星の衛星群、軍民両用の人工知能、そして次世代航空機とSAFという航空の脱炭素――ここに資源を集中し、安く大量に打ち上げる土俵からは意識的に退く。捨てるべきは、規模と低価格で他国を追う戦い方そのものだ。広く薄く張るのでなく、代替されにくい少数の技術に深く投資する。この「捨てる判断」の一貫性こそが、規模で劣る日本を世界の供給網で欠かせない存在にする。

NC1H3系 信頼性エンジン・宇宙輸送分野横断3機関5名指し5名
NC2小型SAR/EOコンステ × デュアルユースAI 軌道安全チーム分野横断3機関6名指し6名
NC3月・小惑星ISRU × 宇宙資源材料チーム分野横断3機関5名指し5名
NC4宇宙天気予測 × 衛星帯電・信頼性チーム分野横断3機関6名指し6名
NC5宇宙機GNC × デブリ除去 自律デュアルユースチーム分野横断3機関5名指し5名
NC6宇宙太陽光発電(SSPS) × 宇宙エネルギー材料チーム分野横断3機関5名指し5名
NC7次世代航空機(電動・水素推進 × 軽量複合材構造 × エンジン・空力)チーム分野横断3機関5名指し5名
NC8持続可能航空燃料(SAF) × 航空脱炭素チーム分野横断3機関5名指し5名

図:政府の勝ち筋(重点技術)ごとに編成した新研究クラスター。ドットはまたぐ既存分野の数参加機関の数(1つ=1)で、各チームがどれだけ分野・機関を横断して組まれているかを示す。

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06

担い手は観測に偏る、重心を製造・推進へ

観測に偏る研究者の現在地

勝ち筋を描いても、それを担う研究者がいなければ絵に描いた餅である。そこで、いまの航空・宇宙研究者がどこに集まっているのかを見ると、明確な偏りが浮かび上がる。研究者は宇宙物理学・X線天文学に438名、衛星リモートセンシング・大気化学に236名と、宇宙のなかでも天体観測の領域に大きく偏っている。宇宙論・宇宙構造形成に113名、暗黒物質探索に81名、ニュートリノ物理に74名といった基礎物理の集積も厚い。日本の宇宙研究の重心は、明らかに「観測し・解明する」側にある。

その一方で、ロケットや衛星を「つくる」側と、航空の担い手は相対的に薄い。数値シミュレーションや振動制御の技術、流体力学や数値解析、材料科学といった、まさに機体や推進を支える工学の領域にも研究者はいるものの、天体観測ほどの厚みはない。この「観測に偏り、つくる側と航空が薄い」という担い手の構造こそ、政策が是正すべき課題である。勝ち筋が信頼性の基幹ロケットや衛星の部素材にあるのだとすれば、担い手の重心は観測から製造・推進へと移す必要がある。研究の集積とこの方向がずれている、というのが問題の核心だ。

大学発スタートアップの裾野

担い手を語るうえで欠かせないのが、産業化の裾野を担う大学発のスタートアップである。分野の実態としては、九州大学を母体とするQPS研究所、東北大学を母体とするElevationSpace、そしてSynspectiveなど、大学発の小型衛星や帰還の技術を扱う企業が日本の宇宙の裾野を支えている。これらの企業は、JAXAと東京大学を中核とする研究の集積が、産業へと橋渡しされた実例である。研究の知が企業として立ち上がる回路が、すでに部分的には機能している。

中核の機関という観点では、JAXAを中心に、東京大学・名古屋大学・九州大学・東北大学がロケット推進・小型衛星・帰還技術を分担している。連携する研究者は、航空宇宙工学の15名規模がこの中核に紐づき、推進、小型衛星、帰還の技術という知が産業化を支える構図だ。高精度の観測や衛星の光通信、再突入の技術といった強みは、いずれもこうした中核機関の研究に根ざしている。

既存の研究の集積を具体的に見ると、天体観測以外にも厚みのある層が存在する。数値シミュレーションや振動制御の技術には多くの研究者が関わり、地理情報システムやリモートセンシング、材料科学、流体力学や数値解析といった、機体や推進、衛星の部素材に直結する工学の裾野もある。問題は層の有無ではなく、これらがこの方向に沿って束ねられていないことだ。素材はある。足りないのは、それを製造・推進の方向に組み替える設計である

研究の重心を製造・推進へ

この設計を欠いたままでは、担い手の偏りは自然には解消しない。研究者は自分の分野と機関のなかで成果を上げるのが通常であり、分野や機関の壁を越えた新しい連携は、意図して組まなければ生まれにくい。天体観測に偏った層をそのまま放置すれば、求められる製造・推進・航空の担い手は薄いままだ。次章で示す機関横断チームは、この「意図した組み替え」を、勝ち筋ごとに名指しで設計する試みである。

担い手の観点から見た希望は、研究の集積と産業の裾野が地続きになっていることだ。九州大学からQPS研究所が、東北大学からElevationSpaceが生まれたように、大学の研究が企業として立ち上がる回路は、すでに部分的には機能している。この回路を、この方向に沿った機関横断のチームで強化すれば、天体観測に偏った層を製造・推進・航空へと広げながら、研究から産業への橋渡しを加速できる。担い手の是正は、単なる人員配置でなく、研究と産業をつなぐ設計の問題である

だから担い手について次に打つべき手は、研究の重心を観測から製造・推進・航空へ移すことである。天体観測に厚く集まった層はそのままに、製造・推進・航空の担い手を、分野と機関の壁を越えて意図的に束ね直す。個々の研究者が優れていても、その方向のために組まれていなければ力は分散したままだ。ではその重心移動を、どの分野とどの機関を越えて設計すればよいのか――担い手の現在地から、次章の機関横断チームの問いが立ち上がる。

研究者の偏在(既存の研究まとまり別・人数) 宇宙物理学・X線天文学 438名 数値シミュレーション・振動制御技術 329名 地理情報システム(GIS)・リモートセンシング 303名 材料科学・プラズマ物理 301名 素粒子物理学・位相幾何学 296名 衛星リモートセンシング・大気化学 236名 国際共同研究・量子色力学(QCD) 160名 気候変動影響評価・持続可能な農業 127名 0219438(名・上位8まとまり)

図:この分野の研究者が既にどの研究のまとまりに集中しているか(人材の偏在)。最上段が最も人が集まる核。勝ち筋に沿う機関横断チームは、この偏在をまたいで新たに編成する。

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07

勝ち筋から逆算し、名指しで8チームを組む

担い手の偏りを是正する具体策として、本レポートの中核をなすのが、機関を横断する新しい研究チームの構成案である。「誰が関連するか」を並べるだけでなく、どの機関横断のチームを新たに組めば勝ち筋を実装できるかまでを、名指しで示す。宇宙に偏っていた提案を是正し、分野名にありながら欠けていた航空を2件補って、宇宙6件と航空2件の計8件、名指し42名、参加機関34で提案する。各チームは、異なる分野・異なる機関の研究者を勝ち筋のもとに束ねる編成である。

宇宙6チームの設計

最初の柱は、国産の基幹ロケットの信頼性を底上げするチームである。「H3系 信頼性エンジン・宇宙輸送クロスチーム」は、極低温の流体管理で宇宙推進を担う東京大学の姫野武洋、高速回転ポンプの軸方向力制御を研究する鹿児島大学の森田洋充、電気推進機の燃料流れ計測を進める防衛大学校の中山宜典、爆轟推進の九州工業大学の小澤晃平、非線形制御と機械学習で宇宙機の制御を扱う京都大学の藤本健治を束ね、推進剤の管理からポンプ、機体制御までを機関横断で結ぶ。国の勝ち筋である信頼性の基幹ロケットを工学的に支える編成だ。

第2の柱は、小型衛星の衛星群と軍民両用の人工知能を同時に前進させる「小型SAR/EOコンステ × デュアルユースAI 軌道安全チーム」である。人工衛星データでインフラの安全管理を進める東京科学大学の松岡昌志、衛星画像で浸水災害を把握する日本大学の園部雅史、機械学習で湖沼の水質を監視する筑波大学の松下文経、三次元都市モデルで高精度な衛星測位を実現する千葉工業大学の鈴木太郎、都市環境の解析で衛星の位置情報の精度を高める名城大学の目黒淳一らが加わり、地球観測データの解析と衛星どうしの衝突回避、高精度な測位を橋渡しする。

第3・第4の柱は、月と宇宙環境の信頼性に向かう。「月・小惑星ISRU × 宇宙資源材料チーム」は、小惑星の水生成を解明する京都大学の伊神洋平、岩石の自動認識で宇宙地質調査を進めるJAXAの春山純一、宇宙資源利用の材料開発を担う物質・材料研究機構の三井正、小天体の衝突を研究する神戸大学の荒川政彦、同位体分析で惑星環境を読む広島大学の小池みずほを結び、月面輸送と衛星の部素材の裾野をつくる。「宇宙天気予測 × 衛星帯電・信頼性チーム」は、宇宙空間の変動を扱う名古屋大学の塩川和夫、磁気流体シミュレーションの新潟大学の金子岳史、電離圏の乱れに人工知能で挑む九州工業大学の藤本晶子、磁気圏変動と放射線環境を解く東北大学の三澤浩昭らが担い、衛星の帯電や放射線による障害を減らして宇宙利用の信頼性を確保する。

第5・第6の柱は自律運用とエネルギーである。「宇宙機GNC × デブリ除去 自律デュアルユースチーム」は、衛星の姿勢制御を扱う横浜国立大学の樋口丈浩、軌道制御の帝京大学の中宮賢樹、宇宙ごみ除去の理化学研究所の戎崎俊一、磁気プラズマシールドで放射線防御と推進を研究する明石工業高等専門学校の梶村好宏らを束ね、軍民両用の人工知能と信頼性を軌道上の運用に実装する。「宇宙太陽光発電(SSPS) × 宇宙エネルギー材料チーム」は、窒素を含む炭素触媒で燃料電池の性能向上を目指す北海道大学の武安光太郎、典型元素の触媒を扱う東京科学大学の山下誠、カーボンナノチューブで宇宙環境対応の粘着技術を研究する千葉大学の平原佳織らを結び、衛星の部素材とエネルギー技術の基盤をつくる。

航空2チーム ― 監査を受けた補完

そして、独立した監査の指摘を受けて新設したのが航空の2チームである。「次世代航空機」チームは、液体水素を冷却に使う超電導推進で脱炭素の航空機を研究する関西学院大学の大屋正義、ターボ機械の流体制御を扱う埼玉大学の姜東赫、複合材料の製造で航空機の軽量化を進めるJAXAの久田深作、航空機材料の疲労強度を高める神奈川大学の戸梶惠郎、電気を使って空気の流れを制御する鳥取大学の松野隆を、電動・水素推進、軽量な複合材の機体構造、エンジンと空力という要素技術で束ねる。「持続可能航空燃料(SAF) × 航空脱炭素チーム」は、微細藻類のバイオ燃料で持続可能なエネルギーを生む東京大学の芋生憲司、代替燃料の燃焼技術を扱う海上・港湾・航空技術研究所の高木正英、バイオ燃料の燃焼特性を解明する広島大学の下栗大右、代替燃料の大気環境影響を分析する大阪公立大学の前田泰昭、土地利用の変化とバイオ燃料の政策を追う農林水産政策研究所の小泉達治を、原料の生産から燃焼、排出の評価、供給の持続可能性の制度まで一気通貫で結ぶ。

8つのチームは、勝ち筋の技術ごとに割り当てられている。信頼性の基幹ロケットにはH3系の推進チームが、小型衛星の衛星群と軍民両用の人工知能には軌道安全チームが、月面輸送と衛星の部素材には月・小惑星の資源チームと宇宙エネルギー材料チームが、信頼性には宇宙天気と自律運用の2チームが、そして分野名に欠けていた航空には次世代航空機とSAFの2チームが対応する。提案は「関連しそうな人を集める」のでなく「勝ち筋を実装するために誰と誰を組むか」から逆算されている点に、その特徴がある。

なぜ"新しい組み合わせ"に価値があるか

これら8チームが価値を持つのは、その組み合わせの新しさにある。各チームの研究者は、これまで共著論文が無い、まだ一緒に研究していない新しい組み合わせであることを機械的に確認している。離れた集団を橋渡しする位置が非冗長な新しい発想を生むという学術的な知見(バート1992、グラノヴェッター1973)に基づく編成である。方法として、氏名は生成せず、研究者DBに実在し同姓同名の紛れがない者だけを名指しした、捏造ゼロを担保した提案とした。各チームには「この連携が不要になる条件」も併記し、作成したチームと検証するチームを分ける独立した監査の対象とした。ただし限界もある。航空の2チームは宇宙側のような領域の紐付けが一部手当てにとどまり、新しさの確認は現時点で分かっている共著関係に基づく推定であって、未収録の共著が判明すれば当該の組み合わせは見直される。

機関横断マトリクス(新チーム×参加機関・周辺合計つき)新チーム \ 参加機関東京大学鹿児島大学防衛大学校(総合九州工業大学京都大学東京科学大学日本大学筑波大学千葉工業大学名城大学東京情報大学国立研究開発法人機関数NC1 H3系 信頼性エ5NC2 小型SAR/EO6NC3 月・小惑星ISR5NC4 宇宙天気予測 ×6NC5 宇宙機GNC ×5NC6 宇宙太陽光発電(5NC7 次世代航空機(電5NC8 持続可能航空燃料5関与チーム数211232111112

図:新研究クラスター(行)が、どの機関(列)の研究者を含むかの分割表。行末「機関数」が大きいチームほど機関横断が広く列下「関与チーム数」が大きい機関ほど複数チームに関わる要の機関。(機関は関与の多い上位12件を表示)全リストは下表と詳細ページを参照。

新クラスター名指しした研究者(所属)
NC1H3系 信頼性エンジン・宇宙輸送姫野 武洋(東京大学)、森田 洋充(鹿児島大学)、中山 宜典(防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群))、小澤 晃平(九州工業大学)、藤本 健治(京都大学)
NC2小型SAR/EOコンステ × デュアルユースAI 軌道安全チーム松岡 昌志(東京科学大学)、園部 雅史(日本大学)、松下 文経(筑波大学)、鈴木 太郎(千葉工業大学)、目黒 淳一(名城大学)、秋山 実穂(東京情報大学)
NC3月・小惑星ISRU × 宇宙資源材料チーム伊神 洋平(京都大学)、春山 純一(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)、三井 正(国立研究開発法人物質・材料研究機構)、荒川 政彦(神戸大学)、小池 みずほ(広島大学)
NC4宇宙天気予測 × 衛星帯電・信頼性チーム塩川 和夫(名古屋大学)、金子 岳史(新潟大学)、三宅 洋平(神戸大学)、藤本 晶子(九州工業大学)、藤原 均(成蹊大学)、三澤 浩昭(東北大学)
NC5宇宙機GNC × デブリ除去 自律デュアルユースチーム樋口 丈浩(横浜国立大学)、中宮 賢樹(帝京大学)、神谷 俊夫(明星大学)、戎崎 俊一(国立研究開発法人理化学研究所)、梶村 好宏(明石工業高等専門学校)
NC6宇宙太陽光発電(SSPS) × 宇宙エネルギー材料チーム武安 光太郎(北海道大学)、小山 知弘(大阪大学)、山下 誠(東京科学大学)、平原 佳織(千葉大学)、久保 大樹(京都大学)
NC7次世代航空機(電動・水素推進 × 軽量複合材構造 × エンジン・空力)チーム大屋 正義(関西学院大学)、姜 東赫(埼玉大学)、久田 深作(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)、戸梶 惠郎(神奈川大学)、松野 隆(鳥取大学)
NC8持続可能航空燃料(SAF) × 航空脱炭素チーム高木 正英(国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所)、芋生 憲司(東京大学)、下栗 大右(広島大学)、前田 泰昭(大阪公立大学)、小泉 達治(農林水産省農林水産政策研究所)
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08

90日・1年・長期の打ち手と、外れる条件

短期・中期・長期の三段で読む

最後に、提言を時間軸で整理する。短期に取り組むべきは、H3ロケットの安定運用の確立と、担い手の偏りの是正である。2024年に初成功した基幹ロケットの信頼性を量産と両立させ、同時に、天体観測に偏った研究者の重心を製造・推進の側へ動かす。本レポートが示した8つの機関横断チームは、この重心の移動を名指しで実装する具体的な手立てである。政府はサプライチェーンの強靱化と、射場・燃焼試験設備の基盤強化から着手すべきだ。まずは足元の確実さと担い手の組み替えである。

中期には、小型衛星の衛星群と軍民両用の人工知能、そして航空の脱炭素を産業として立ち上げる。合成開口レーダーや光学の小型衛星を連ね、そのデータを人工知能で解析する体制を整え、アンカーテナンシーで政府が初期の需要を引き受ける。航空側では、CORSIAとReFuelEUのSAF義務化が生む2030年10%というSAFの需要を、原料から制度までの一連の産業として捉える。宇宙と航空の両輪で、規制と基幹技術を軸に段階的な商業拡大を図る

長期には、月面輸送と宇宙資源のその場利用、そして宇宙太陽光発電といった、日本が不可欠性を握れる基幹技術の実用化を見据える。JAXAを中核とする月の拠点建設や火星衛星探査MMXを、大学発のスタートアップの裾野と結びつけ、国産の製造能力で自立性を確保する。ここまでの積み上げが、2030年代早期に8兆円規模という産業化の目標を裏づける。短期の信頼性、中期の産業化、長期の自立性という3段が、一本の線でつながっている。

反証と撤退条件を明示する

ただし、中立の立場からは反証と撤退の条件も明示しておく必要がある。第1に、市場規模の予測の多くは定義の差が大きい二次情報であり、6,000億ドルや1兆ドルといった数字を投資の根拠に据えすぎることは避けるべきだ。第2に、再利用ロケットのコスト崩落が想定を超えて進み、確実に動くことによる差別化そのものが価値を失う場合には、勝ち筋の前提を見直さねばならない。第3に、提案した研究チームの組み合わせも、その連携がすでに機関の内部で充足している、あるいは大型の研究費で連携の意欲が満たされている場合には、無理に組む必要はない。

短期の打ち手を具体化すれば、最初に着手すべきはH3の安定運用を固めることと、サプライチェーンや射場・燃焼試験設備といった基盤の強化である。これらは成果が見えやすく、勝ち筋の土台を早期に固める「取りかかりやすい一手」になる。同時に、本レポートが名指しした機関横断チームのうち、基幹ロケットに直結するチームから優先して立ち上げれば、担い手の組み替えを勝ち筋の中心から進められる。

打ち手を段の順に並べると、短期は確実さと担い手、中期は衛星群と人工知能と航空脱炭素、長期は月面と自立性、となる。それぞれの段で、政府は基盤整備とアンカーテナンシーという2つの役割を果たす。基盤を整えて民間の参入コストを下げ、初期需要を引き受けて立ち上げの谷を渡す。この2つは、量産で先行する他国に対して、規模でなく制度と確かさで勝負する日本にこそ効く支援である。

この3段の打ち手を貫くのは、投資を「広く薄く」でなく「勝ち筋に深く」配分するという規律である。短期のH3安定運用と基盤強化、中期の衛星群と航空脱炭素、長期の月面と自立性は、いずれも量産で競う領域ではなく、信頼性と基幹技術と制度対応で勝つ領域に絞られている。選択と集中を段階を追って徹底することが、限られた資源で不可欠性を築くうえで最も現実的な道である

90日から始める打ち手の順序

打ち手を期間で区切って整理すれば、当面の90日はH3安定運用の体制固めとサプライチェーン・試験設備の点検、続く半年から1年は基幹ロケットに直結する機関横断チームの立ち上げと衛星群の運用設計、そしてそれ以降は月面輸送や航空脱炭素を含む段階的な商業拡大へと進む。早期に成果の見える基盤整備から着手し、勝ち筋の中心から担い手を組み替えていくことが、限られた資源を最も効かせる順序である

総じて、量産で競わず不可欠性を握るこの戦略は、規模で劣る日本にとって有力な選択である。だがそれは前提が変わらないことを保証しない。だからこそ打ち手と並べて、外れる条件を先に決めておく。コストの崩落と規模の非対称がどこまで進むかはまだ検証しきれておらず、確実さによる差別化が価値を失った時点で、速やかに設計を組み替える。戦略を固定した信念でなく、反証に開かれた仮説として運用し続けることが、航空・宇宙という不確実性の高い分野で日本が主導権を握るための条件である。

産業創造プロセスで読む — この領域はいま、どの相にあるか

この領域を産業創造プロセス(ICFM)の視点で読むと、航空・宇宙の大半が離陸を終えた成熟産業であり、価値創造の焦点が「新産業の立ち上げ」でなく「既存の統合体制への次世代技術の橋渡し」に移っていることが見えてくる。ICFMとは、産業が生まれる過程を6つの相(前提集積→触媒発火という死の谷→流動→支配的設計→離陸→淘汰)と、発火の前に観測できる基盤の成熟度で捉える枠組みである。

成熟→次世代核 6 両面(知見×統合) 3 セクターの動き 1
産業(IIDB)律速軸F / Q / R最大のボトルネック
航空宇宙・防衛機器成熟→次世代核1 / 0.93 / +6.5律速なし(成熟)。実務的律速はセクター動き側の供給能力。
一般・ビジネス航空機製造成熟→次世代核1 / 0.93 / +6.5律速なし(成熟)。焦点はeVTOL量産・認証の学術核。
航空機MRO・アフターマーケット成熟→次世代核1 / 0.93 / +6.5律速なし(成熟)。焦点は予知保全・デジタルMROの学術核。
衛星製造・バス/ペイロード成熟→次世代核1 / 0.96 / +6.7律速なし。焦点は光通信/オンボードAI/量産設計の学術核。
宇宙輸送・打上げサービス成熟→次世代核1 / 0.93 / +6.5律速なし。焦点は完全再使用/軌道給油の次世代推進学術核。
宇宙経済・宇宙産業両面(知見×統合)1 / 0.93 / +6.5下流利用層の統合を担う分野の薄さと支配的設計の未収斂(上位4社10.9%の断片化)。
SAF・航空脱炭素燃料 両面(知見×統合)0.6 / 0.39 / +1.8has_material=0(原料供給制約)+has_integration=0(CR4 17%断片化)の両面。
持続可能航空燃料・合成燃料両面(知見×統合)0.4 / 0.39 / +0.71両面(HEFAは材料=廃食油上限、PtLは核+材料、共通して需要の政策義務依存・経路未収斂)。
衛星サービス・衛星通信セクターの動き0.8 / 0.42 / +3.1has_integration=0(HHI約170断片化・統合者未確立)。
衛星地上機器・GNSS端末成熟→次世代核1 / 0.93 / +6.5律速なし(成熟)。焦点はフラットパネルアンテナ・高精度測位の学術核。

この領域に対応する10産業のうち6つが律速軸「成熟→次世代核」、3つが「両面」、1つが「セクターの動き」に分布する。航空宇宙・防衛機器、一般・ビジネス航空機製造、航空機MRO、衛星地上機器・GNSS端末などはいずれも基盤完全性F=1.0の離陸・自己増殖相(相5)にあり、予測核Rは6.527から6.7の高帯に並ぶ。衛星製造・バス/ペイロード(R=6.7・Q=0.962)を筆頭に、核・素材・需要・統合者が全て揃った成熟の姿である。ここで注意すべきは、ICFMのR閾値では既存の健全産業はほぼ全て「基盤が厚い」と出る(産業が既に成立している当然の帰結)ため、判別はverdictでなくF/Qとmissing_positionsで読む点である。

他方、「両面」軸のSAF・航空脱炭素燃料(F=0.6・Q=0.388・R=1.812)や宇宙経済・宇宙産業(相4)、「セクターの動き」の衛星サービス・衛星通信(F=0.8・Q=0.425・R=3.087)は、核や需要はあっても統合点や材料が欠ける流動局面にある。SAFの最大のボトルネックは物質・材料と統合点——HEFA経路はTRL9・ASTM認証済で核は確立しているのに、廃食油の物理的供給制約で量産材料が未確立、市場はCR4 17%と断片化し、需要が確定しているのに供給が2050年目標に250倍不足する。宇宙経済も上流(輸送・製造)は寡占で組み上がるが、上位4社シェア10.9%という下流(地球観測・衛星データ利活用)の断片化が続く。「両面」「セクター動き」の産業ほど、統合の担い手や量産材料をどう構成するかに産業創造の余地が集中している。

研究者供給の厚みと薄さ — 応用分野別(31.1万人版:本体235,521+サブ76,054)
宇宙2,938人
この領域に対応する応用分野の研究者は計 約2,938人。出典:研究者知識基盤 field_class 分類(本体は精緻分類、サブ層はOpenAlex研究内容・所属学科から分類)。

この領域に対応する応用分野の研究者供給は、宇宙が2,938名である(31.1万人版=本体235,521名とサブ76,054名を合わせた母集団に基づく)。防衛・航空機・MROなど成熟産業の多くはFFRDC/UARC網やプライムのR&Dに実在クラスターを持つ一方、SAFのように分野固有の学術核がRID上で谷になり企業R&Dに偏在する産業もある。分野が薄い場合はRMPM連携のLayer2bで分野接地する設計になっている。

産業構成しうる実在研究者(役割・所属分野)
SAF・航空脱炭素燃料大屋 正義(核)、堀部 直人(橋渡し)、伊藤 博視(橋渡し)、金井 保(橋渡し)

名指しした研究者は研究者データベースおよび機関公式ディレクトリで実在・所属を照合済み(捏造ゼロ)。役割は核(中核知の担い手)/橋渡し(分野間のつなぎ役)/統合(産業全体を束ねる担い手)。

この領域で欠けているのは、成熟産業では新しい研究者クラスターではなく、TRLの谷にある個別技術(極超音速迎撃・完全再使用・軌道給油・光衛星間通信・オンボードAI)を既存の統合体制へ橋渡しする力である。名指しできる研究者クラスターとしては、SAF・航空脱炭素燃料で液体水素・超電導推進の大屋正義、水素混焼燃焼の堀部直人、超音速水素燃焼の伊藤博視、高温微生物水素生産の金井保が挙がる。研究者連携で解けるのは、SAFでは多経路(AtJ/FT/PtL)の量産化を担う触媒・化学工学クラスターと原料〜認証を束ねる統合者の構成、宇宙経済では下流の衛星データを社会実装へ束ねる地理空間データ科学・プラットフォーム工学の集約である。ただし宇宙経済は市場の8割が政府依存で民間資金12%横ばいという現実にあり、SAFの供給ギャップも未解決である。この領域の価値創造は、公需と制度に支えられた段階を冷静に見極めたうえで判断する必要がある。

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本サマリーは要点と全体像を示すものです。各テーマの一次資料・数値・出典・全リストは、詳細ページ「航空・宇宙 詳細」でご確認いただけます。

出典・作成:本サマリーは内閣官房「日本成長戦略」関連の公表資料(議事要旨・政府目標・配布資料)および公開された学術・産業データに接地して作成した編集物であり、政府の公式見解ではありません。新研究クラスター構成案の名指し研究者は、研究者データベースおよび機関公式ディレクトリで実在・所属を照合しています(捏造ゼロ)。数値は生成時点の実データです。