日本成長戦略 17領域 | サマリーレポート
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日本成長戦略 17領域 / サマリーレポート

海洋の勝ち筋

資源量でなく、安全保障の公共調達を起点とする産業化で読む海洋分野の成長戦略

海洋|図解+章立て要約|詳細は現行の領域ページに接地(約19,666字)
この分野の核となる主張

本分野の審議と洞察が示す論点は、海洋の経済性が未採掘資源そのものでなく、安全保障の公共調達を起点とする産業化で決まり、日本は深海技術を海洋無人機・海洋状況把握・海底資源開発の三本柱で立ち上げる点にある。

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海洋の経済性は資源量でなく公共調達で決まる

海洋の勝ち筋は、海の底に眠る資源そのものではなく、安全保障の公共調達を起点とする産業化で決まる。本分野の審議と洞察が一貫して示すのは、海洋の経済性を未採掘資源の埋蔵量で語る発想を退け、国が最初の買い手となって初期の需要をつくり、そこから国内の生産基盤を立ち上げるという道筋である。豊かな海に囲まれていること自体が優位になるのではなく、その海を舞台に産業を組み立てられるかどうかが問われている。日本はこの起点を、深海の技術を軸とする3つの柱で押し上げようとしており、投資の焦点は資源量そのものから、それを実際に扱う技術と担い手へと移りつつある。

その3つとは、人が乗らずに海の中を自律で動く海洋無人機、広い海域でどこで何が起きているかを常時つかむ海洋状況把握、そして海の底の資源を掘り出す革新的海底開発技術である。政府はこの三本柱を選定し、公共調達を初期需要の呼び水として、造船で培った深海の技術を国産の産業へ育てる構えを取っている。いずれも成熟した既存産業の延長ではなく、新しく立ち上げるべき領域であり、それぞれが探査・監視・資源開発という異なる役割を担いながら、互いに連携して初めて1つの産業体系として立ち上がる関係にある。

海洋経済は世界全体で1995年の約1.3兆ドルから2020年に約2.6兆ドルへと実質で倍増し、2030年には3兆ドルを超えると見込まれる。ただしこの数字は、すでに巨大な水産・海運・造船と、まだ掘られていない海底資源という、成熟度の大きく異なる2つの世界をひとまとめにしたものである。本レポートは、確定した市場規模と未来の可能性を切り分けて示し、レアアース泥や海底熱水鉱床、メタンハイドレートの埋蔵量や需要年数を、そのまま確定した売上へと読み替える誤りを避ける立場を取る。

三本柱のなかで最も産業化に近いのが海洋無人機である。南鳥島の周辺で行われたレアアース泥の調査でも活躍し、民間による活用が広がってきたこの機体の世界市場は、2030年ごろに1.5兆円を上回ると見込まれ、日本はそこで3割の占有を狙う。一方で海の底の鉱物を掘り出す技術は、世界的にみてもまだ確立・商業化の途上にある。公共調達で最初の需要をつくり、そこから産業化と国際展開へ広げられるかが、この分野の中心的な問いであり、資源の有無よりも実装の体制が成否を左右する。

担い手の面では、大きな偏りが横たわっている。海洋にかかわる研究者は全体で約4025名を数えるが、その多くは生物・環境・気候といった観測系の研究に集中しており、三本柱の実装に直結する人材は、いずれも一桁台の規模で機関ごとに散らばっている。勝ち筋に選ばれた領域ほど、担い手が薄く分散しているという逆説がここにある。だからこそ本分野では、既存の厚い層をあてにするのではなく、薄い担い手を名指しで見つけ出し、機関と分野をまたいで束ね直すことが求められる。

この見立ては、審議の途中で行われた点検を経て精緻化されたものである。当初の構想では、分野全体を支えるはずの海洋状況把握が抜け落ち、担い手の少ない海底の鉱物資源が他の資源に紛れて薄くなっていた。点検はこの二点を是正し、海洋状況把握を独立した柱として据え直し、レアアース泥やマンガン団塊といった海底鉱物を独立の勝ち筋として立て直した。勝ち筋の輪郭そのものが、検証を通じて鍛え直されている

以降の各章では、海洋を取り巻く状況と核心の問いから始め、市場をどう読むべきか、三本柱を支える技術がどこまで来ているか、実装がどの時間軸で進むか、政府が選んだ勝ち筋の中身は何か、担い手がどこに偏っているか、そして分野を越えて束ね直すべき研究者の組み合わせは誰かを、順を追って描いていく。用いる数値・固有名・年代は、審議の資料と研究者のデータに実在するもののみに限り、可能性と確定した事実を混同しないよう努める。

結論を先取りすれば、日本の海洋分野の成否を分けるのは、資源に恵まれているかどうかではなく、公共調達を起点に産業を組み立て、機関をまたいで散らばる技術と人材を束ね直せるかどうかである。最後の章では、この見立てが外れる反証の条件と、短期・中期・長期の3段で取るべき打ち手を、特定の立場に偏らない中立の視点から整理する。海底資源の開発には環境や国際合意といった慎重に扱うべき論点が伴うため、単一のシナリオに賭けない構えを併せて示す。

海洋の経済性は、掘られていない資源の量ではなく、公共調達を起点に産業を組み立てられるかで決まる。
市場・産業規模
海洋経済は2030年に3兆ドル超へ拡大するが、未採掘資源は確定した市場規模でなく未来の可能性として読むべきである。
政府の方針・投資
政府方針は海洋無人機・海洋状況把握・革新的海底開発技術の三つを選定し、公共調達を起点に国内生産基盤を確立する。
各国の動き
各国は深海採掘で姿勢が割れ、日本は世界6位のEEZと造船由来の深海技術を軸に勝ち筋を探る。
審議体制
海洋WG/有識者10名
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問いは資源をどう掘るかでなく産業へどう結ぶか

この分野を所管するのは海洋政策大臣であり、審議は海洋に関する作業部会を舞台に、10名の有識者を交えて重ねられてきた。議論の出発点にあるのは、日本が世界で6番目に広い排他的経済水域を持ちながら、その海域の経済的な力を十分に引き出せていないという認識である。海に囲まれているという事実と、そこから産業を生み出せているかという実態のあいだには、なお大きな隔たりが残されている。広い海を持つことは前提であって、優位そのものではない、という冷静な見立てが議論を貫いている。

海洋経済は二つの世界に分かれる

世界の海洋経済は、1995年の約1.3兆ドルから2020年には約2.6兆ドルへと実質で倍増し、2030年には3兆ドルを超えると見込まれている。しかし海洋という分野は、水産・海運・造船というすでに成熟した巨大産業と、レアアース泥や海底熱水鉱床、メタンハイドレートといったまだ掘られていない資源のポテンシャルという、成熟度がまったく異なる2つの世界に分かれている。同じ海洋という言葉で括られていても、両者は経済の実体としてまるで別物であり、必要な政策も投資も性格を大きく異にする。

ここで避けるべきなのは、掘られていない資源を確定した市場規模と取り違えることである。埋蔵量や需要年数で語られる資源の豊かさは、そのまま売上になるわけではない。資源が存在することと、それが採算に乗る産業になることのあいだには、探査の精度、掘り出す技術、環境への影響評価、そして国際的な採掘ルールという幾重もの関門が横たわっている。本分野は、こうした資源量を確定した売上ではなく未来の可能性として扱い、国際機関が推計する海洋経済の規模と、研究機関による一次的な資源の推計とを、区別して示す姿勢を取っている。

成熟産業と資源ポテンシャルの読み分け

では、この2つの世界をどう読み分けるべきか。成熟産業の側では、効率化と脱炭素、船員の不足への対応が中心の課題となる。ここでは市場がすでに存在するため、新たに需要を掘り起こすというより、技術で付加価値を積み、コスト競争力を保つことが問われる。船の自動運航、洋上の再生可能エネルギー、養殖の高度化など、既存の巨大市場を土台に技術で価値を高める余地は大きく、この側での競争は実装の速さと質によって決まる。

他方、資源ポテンシャルの側では、探査の精度、掘り出す技術、環境への影響評価、そして国際的な採掘ルールの確定が問われる。ここでは市場そのものがまだ生まれておらず、可能性がいつ、どの条件で市場へ転化するかを見極める眼が必要になる。掘る技術が確立し、環境への影響が許容され、採掘のルールが定まり、コストが市場価格を下回って初めて、可能性は市場へと変わる。可能性の側の投資は、この転化の不確実性を直視したうえで行われなければならない

政府が三本柱として海洋無人機・海洋状況把握・革新的海底開発技術を選んだ背景には、この2つの世界をつなぐ結節点を押さえようという意図がある。無人機は探査と監視の双方を担い、海洋状況把握は資源開発と安全保障の土台となり、海底開発は資源のポテンシャルを現実の産業へ変える出口にあたる。いずれも成熟産業の単なる延長ではなく、新しく立ち上げるべき領域であり、公共調達という初期需要を軸に据えることで、市場が生まれる前に担い手を育てておこうとしている。

拠り所は造船由来の深海技術

日本がこの分野で拠り所とするのは、世界6位という排他的経済水域の広さと、長い造船の歴史のなかで培われた深海の技術である。船を造る技術は、水圧に耐える構造や海中で動く機械の設計へと通じ、海洋無人機や海底の開発機器へと応用できる。資源の埋蔵量という不確かな優位ではなく、ものづくりの蓄積という確かな優位を軸に据えるところに、日本の勝ち筋の現実味がある。海の広さそのものではなく、その海に技術で働きかける力こそが、優位の本当の源泉になる。

制度の面では、日本は2007年に海洋基本法を定め、内閣に総合海洋政策本部を置き、2023年には第4期の海洋基本計画を閣議決定してきた。国内には海洋のエネルギーや鉱物資源の開発に関する計画や、深海底の鉱業に関する暫定的な措置法も整えられている。だが、これらの国内制度が定める射程と、国際的にまだ定まらない採掘のルールとのあいだには、投資判断が織り込むべき緊張が残されている。

こうして海洋分野の核心の問いは、豊かな資源をどう掘るかではなく、限られた技術と人材を、公共調達という初期需要を軸にどう産業へ結び付けるかへと絞り込まれる。世界6位の排他的経済水域と、造船で培った深海の技術という土台をどう活かすかが、日本の勝ち筋を左右する。だからこそまず、この土台の上に初期需要を据え、限られた技術と人材を1つの産業へ結び付ける道筋を描くことから着手すべきである。次章では、海洋経済の数字を確定した市場と未来の可能性に分けて、より具体的に読み解いていく。

国・地域主要な政策・投資(要点)
日本第4期海洋基本計画(2023年4月28日閣議決定)で『総合的な海洋の安全保障』と『持続可能な海洋の構築』を2本柱に。海洋エネルギー・鉱物資源開発計画(2024年2月改定)でレアアース泥・海底熱水鉱床・コバルトリッチクラスト・メタンハイドレートの開発工程を提示。SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)海洋資源、GX・経済安全保障の文脈で資源開発を後押し。
米国NOAA(海洋大気庁)が海洋観測・気候・深海底鉱物資源を所管。2025年4月の大統領令で重要鉱物の国内・深海採掘を加速する方針を打ち出し、国際海底機構(ISA)の枠組みの外で米国独自の許可を進める動き。
中国第14次五カ年計画(2021-2025)で『海洋強国』建設を掲げ、深海探査(有人潜水艇『奮闘者』が水深1万メートル超に到達)・海洋資源・海洋経済を国家戦略化。ISAでも最多級の探査鉱区を保有し、深海採掘技術への投資が厚い。
欧州(EU)持続可能なブルーエコノミー戦略(2021年)と海洋再生可能エネルギー戦略で、洋上風力・潮流・波力・海洋保護区を推進。Horizon Europeで海洋観測・ブルーカーボン・海洋技術を支援。
Norway石油・天然ガスの海洋開発で世界をリードし、その技術を洋上風力・深海鉱物・養殖(世界最大級のサーモン養殖)へ展開。2024年に自国大陸棚での深海鉱物探査の開放を決めたが、その後 環境団体・議会の反発で計画は一時停止に動いた。
South Korea海洋水産部(MOF)が海洋政策を所管。太平洋クラリオン・クリッパートン海域とインド洋にISAの探査鉱区を保有し、深海採鉱技術(採鉱ロボット『ミネロ』等)の実証を進める。海洋プラント・造船の産業基盤が厚い。

図:主要国・地域の政策と投資規模(日本を強調)。通貨・単位が国ごとに異なるため規模の直接比較ではなく、各国が何にどれだけ投じているかの一覧。出典は詳細ページを参照。

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未採掘資源は市場規模でなく未来の可能性として読む

海洋経済の全体像をつかむとき、まず押さえるべきは、その規模が着実に拡大してきたという事実である。世界の海洋経済は1995年の約1.3兆ドルから2020年に約2.6兆ドルへと実質で倍増し、2030年には3兆ドルを超えると見込まれている。四半世紀で倍になり、さらに伸びる見通しにあるこの分野は、成長の舞台として確かに有望に映る。だが、この数字を投資判断の根拠にそのまま用いるには、その内訳の性格を注意深く見極めなければならない。

規模の大半は稼働する成熟産業

3兆ドルという規模の大半は、水産・海運・造船・沿岸観光といったすでに稼働している成熟産業が占める。ここに含まれるのは、いま実際に取引され、値がつき、雇用を生んでいる経済活動である。市場規模として確定しているのは、主にこちらの側だといってよい。海運や造船は世界の物流を支える基幹産業であり、水産は食料供給の一角を担う。これらは変動こそあれ、実在する需要に裏づけられた確かな市場を形づくっている。

これに対して、レアアース泥・海底熱水鉱床・メタンハイドレートといった海底資源は、埋蔵量や需要年数では巨大に見えても、まだ商業的な生産が始まっていない領域が多い。これらは確定した市場ではなく、未来の可能性として読むべきである。資源が存在することと、それが採算に乗る産業になることのあいだには、探査・生産技術・環境評価・国際ルールという幾重もの関門が横たわっており、そのどれか1つが欠けても可能性は市場へと転化しない。

この区別を怠ると、投資判断は容易に楽観へ傾く。埋蔵量に世界需要の何十年分といった数字が並ぶと、それがそのまま将来の売上に見えてしまうからである。だが実際には、掘り出す技術が確立し、環境への影響が許容され、採掘のルールが定まり、コストが市場価格を下回って初めて、可能性は市場へと変わる。本分野が国際機関の推計と研究機関の一次推計を分けて示すのは、この転化の不確実性を数字の上でも直視するためであり、可能性を過大に見積もる誘惑への歯止めでもある。

その一方で、成熟産業の側にも新しい機会が芽生えている。船の自動運航、洋上の再生可能エネルギー、養殖の高度化など、既存の巨大市場を土台に技術で付加価値を積む余地は大きい。ここでは市場がすでに存在するため、可能性ではなく実装の速さと質が競争を決める。未採掘資源とは逆に、確定した需要の上で技術を磨くという戦い方になり、投資の回収も相対的に見通しやすい。海洋分野の成長は、この成熟産業の高度化と、可能性の側の育成という二正面で進む。

市場は二つの物差しで読む

したがって海洋の市場を読むときには、2つの物差しを併用する必要がある。ひとつは、成熟産業を対象に、実装のスピードとコスト競争力で測る物差し。もうひとつは、海底資源を対象に、可能性がいつ、どの条件で市場へ転化するかを反証可能な形で見積もる物差しである。両者を混ぜず、確定した市場規模と未来の可能性を切り分けて評価することが、この分野で誤らないための出発点になる。1つの数字にすべてを託さない慎重さが、ここでは何より重要になる。

そのうえで、政府が三本柱に投資を集中させる意味は、この可能性の側にいち早く技術と生産の基盤を築き、可能性が市場へ転化する瞬間に備えることにある。市場が生まれてから参入するのでは遅く、生まれる前に担い手を育てておく。海洋分野の投資機会は、埋蔵量そのものではなく、この三本柱の実装に集中すると読むのが妥当である。次章では、その三本柱を支える技術が、いまどこまで来ているのかを具体的に見ていく。

さらに付け加えれば、2つの物差しは互いに無関係ではない。無人機や監視の技術は、成熟産業の高度化にも、可能性の側の資源探査にも同時に使われる。船の自動運航を支える技術が海底の探査にも役立つように、1つの技術投資が2つの世界にまたがって効くことがある。三本柱への集中投資は、この2つの世界を橋渡しする位置に置かれているため、成熟産業と可能性の双方に波及する余地を持つ。1つの投資が二方向に効くという性質が、選択と集中の妥当性を裏づけている。

資源より扱う道具に確度がある

なお、可能性を見積もる際には、資源の側だけでなく、それを扱う無人機や監視の技術が生む市場も併せて評価すべきである。海洋無人機の世界市場が2030年ごろに1.5兆円を上回るという見通しは、資源そのものの価値というより、資源や海域を扱う手段の市場が確かに立ち上がりつつあることを示す。資源より、資源を扱う道具と体制の側に、より確度の高い機会があるという読み方が、この分野では現実的である。だからこそ投資の重心は、掘る資源そのものより、掘る手段である無人機や監視の市場に先に置くと読むのが現実的である。

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三本柱の技術は各所に育つが統合体制が欠ける

三本柱の第一である海洋無人機は、いまもっとも実装が進んでいる技術である。人が乗らずに海中を自律で動くこの機体は、南鳥島の周辺で行われたレアアース泥の調査でも活躍し、民間による活用が着実に広がってきた。世界市場は2030年ごろに1.5兆円を上回ると見込まれ、日本はそこで3割の占有を狙う。造船で培った深海の技術という土台があるからこそ、この目標は現実味を帯びる。公共調達による初期需要が、量産と価格低下の起点になるという構図がここにある。

無人機を実際に動かすには、複数の要素技術が噛み合う必要がある。海の中では電波が届かないため、音を使って自らの位置を測る技術が要となり、そこに機械学習を組み合わせて精度を高める研究が進んでいる。加えて、機体の小型化、水の抵抗を減らす形状の最適化、複数の機体が協調して動く制御、遠隔から触覚を共有して操作する仕組みなど、多様な技術が求められる。だが個々の要素はそれぞれ別の機関で研究され、まだ1台へ統合されきっていないのが現状である。

海洋状況把握は分野を支える土台

第二の柱である海洋状況把握は、広い海域でどこで何が起きているかを常時つかむ力である。監視、海洋観測のネットワーク、各種のセンサ、衛星による海面の監視、水中の音による監視といった技術が、これを支える。無人機の運用と海底資源の開発の双方を下から支える土台でありながら、その担い手は気象・防災・測量・観測といった分野に分かれて散らばっている。技術としては存在しているのに、1つの監視の体系として束ねられていないところに、この柱の難しさがある。

衛星から海の色や温度を読み取る技術は、水環境の保全や気候変動の予測に使われてきたが、これを海域の常時監視へと転用する余地は大きい。水中に音を伝えて津波をいち早く捉える防災の技術や、音で海の生き物を観測する技術も、監視網の一部として組み込むことができる。それぞれの技術は独立に高い水準へ達しているが、目的も所管も異なるまま並存している。個別に磨かれてきた観測技術を、1つの切れ目のない監視網へ束ね直すことが、この柱の実装課題である。

海底開発は二つの資源系に分かれる

第三の柱である革新的海底開発技術は、海の底の資源を掘り出す技術群を指す。ここはさらに2つに分かれる。ひとつは、海底に眠るメタンハイドレートや海底熱水由来の資源で、生産の技術、熱と物質の移動の解析、分子レベルの解析、資源の起源の解明が課題となる。もうひとつは、レアアース泥・マンガン団塊・コバルトを多く含む地殻といった海底の鉱物資源で、探査、成因の解明、環境影響の評価、鉱石の品位の計測が問われる。同じ海底開発でも、対象となる資源が違えば必要な技術も異なる。

海底熱水由来の資源では、鉱石を海面まで連続して引き揚げる連続揚鉱に世界で初めて成功した実績が、国内の資源機構によって積み上げられている。この成果は、掘り出す技術が実験室の段階から実海域の段階へと進みつつあることを示す重要な一歩である。ただし、実海域で技術が動くことと、それが環境への影響を抑えながら経済的に成り立つことは別の問題であり、後者への道筋はなお探索の途上にある。技術の成立と事業の成立のあいだには、依然として距離が残っている。

海底の鉱物資源については、南鳥島の沖でレアアース泥を世界で初めて発見し、その成り立ちを解き明かしたのは日本の研究であった。この発見は、日本の排他的経済水域が有望な資源の存在する海域であることを示したが、発見から生産までには、探査の精度を上げ、掘る技術を確立し、環境影響を評価し、鉱石の品位を正確に計測するという長い工程が続く。それでもマンガン団塊は2030年代の前半に生産段階へ入ると見込まれており、鉱物資源の可能性は現実へ近づきつつある。

要素は育つが統合体制が欠ける

これら三本柱の技術に共通するのは、要素は各所で育っているのに、実装へ向けて1つに統合する体制が整っていないという点である。音響測位、機械学習、形状の最適化、衛星による観測、連続揚鉱、鉱石の品位計測といった強みが、機関ごとに分かれたまま残されている。技術の水準が足りないのではなく、それらを結び合わせて1つの機体、1つの監視網、1つの生産の流れへとまとめる仕組みが欠けている。この統合の欠落こそが、次章で見る実装の時間軸を左右する最大の要因である。

技術の面から三本柱の関係を整理すると、海洋状況把握が最も下の層に位置し、その上に無人機の運用が乗り、さらにその上に海底開発が積み重なる。監視の網が海域の状態を把握し、無人機がその海域で探査や作業を行い、海底開発がその成果を資源へと変える。下の層が整わなければ上の層は安定して機能しないという技術的な依存関係が、三本柱を一体として育てるべき理由になっている。個々の技術を別々に伸ばすだけでは、産業としての海洋は立ち上がらない。

なお、政府の三本柱には含まれないが、海の温度差・波・潮の流れから電気を取り出す海洋エネルギーも、要素技術としては一定の蓄積がある。熱を交換する技術、波の力を電気に変える技術、潮の流れを利用する発電などがそれにあたる。これらは勝ち筋の主役ではなく、海洋再生可能エネルギーとして大学の拠点整備の文脈に連なる参考の領域と位置づけられる。三本柱を主軸に据えつつ、その外側の技術を過大評価しない輪郭の明確さが、技術面でも保たれている。だからこそ技術面では、機関ごとに分かれた音響測位・機械学習・連続揚鉱・品位計測の強みを、1つの機体と1つの監視網と1つの生産の流れへ結び合わせる体制を築くことが先決となる。

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04

実装は三つの節目を前提とともに見据える

海洋分野の実装は、おおまかに3つの時期に分けて読むことができる。まず足もとでは、2026年から実証の規模が広がっていく段階にある。海洋無人機はすでに実際の海域で使われ始めており、公共調達を通じた発注が積み重なることで、機体の量産と価格の低下が進む。この時期は、限られた要素技術を実海域で組み合わせ、使いながら仕上げていく局面といってよい。完成した技術を投入するのではなく、実運用のなかで技術を鍛えていく段階である。

2030年代前半に二つの節目が重なる

続く2030年代の前半には、2つの節目が重なる。ひとつは、海底の鉱物資源のうちマンガン団塊が生産段階へ入ると見込まれることである。発見と探査を積み上げてきた海底鉱物が、実験室の段階から実際の生産へと踏み出す時期にあたる。もうひとつは、海洋状況把握の仕組みが国内にとどまらず、複数の国へと広がっていく展開である。監視と観測のネットワークが国際的に接続され、8か国規模での展開が視野に入る。資源と監視の両面で、実装が一段深まる時期である。

この段階では、無人機・海洋状況把握・海底開発の三本柱が、ばらばらの技術群から相互に連携する体系へと組み上がっていくことが期待される。無人機が探査と監視を担い、海洋状況把握がその位置と海域の状態を支え、海底開発が資源を現実の産業へ変える。3つが独立して動くのではなく、互いの出力を入力として使い合う関係が築かれて初めて、分野全体が1つの産業として回り始める。三本柱が噛み合って初めて、公共調達の初期需要が持続的な産業へと転化する

2037年以降に採掘と保護が分かれる

さらに2037年以降になると、海洋分野は大きな分岐点を迎える。深海の採掘を本格的に進める道と、海洋の環境保護を優先する道とが、明確に分かれていく可能性が高い。掘る技術が確立しても、環境への影響が許容されなければ採掘は進まず、逆に国際的な合意が整えば一気に商業化が加速する。どちらへ振れるかによって、それまでに積み上げた技術と人材の使い道は大きく変わる。この分岐がどちらへ振れるかは、技術だけでなく国際的なルールと世論に左右される

見通しは前提の束の上に立つ

こうした時間軸は、確定した予定表ではなく、いくつもの条件のうえに立つ見通しである。無人機の市場が想定通りに立ち上がらなければ量産の起点は遅れ、掘り出す技術が採算に届かなければ生産段階への移行はずれ込む。海底鉱物の環境影響評価が長引けば、生産の時期はさらに後ろへ動く。実装の時間軸は、これらの条件が1つでも崩れれば書き換えられる性格のものであり、確定した未来として扱うべきではない。見通しはあくまで、前提の束の上に立つ仮のものである。

だからこそ、時間軸を読むときには、各段階が成り立つための前提を明示しておくことが欠かせない。2026年からの実証拡大は公共調達の継続を前提とし、2030年代前半のマンガン団塊の生産は生産技術と環境評価の両立を前提とし、2037年以降の分岐は国際ルールの帰趨を前提とする。前提が満たされているかを節目ごとに確認することが、投資判断を誤らせないための要点になる。前提の点検を怠れば、見通しはたやすく願望へとすり替わってしまう。

この3つの時期を貫く要は、公共調達の継続である。無人機の量産も、海洋状況把握の網の整備も、海底開発の実証も、いずれも国が最初の需要をつくり続けることを前提に組まれている。公共調達が途切れれば、量産の起点も基盤の整備も足場を失う。時間軸を実現へと導くのは、個々の技術の進歩だけではなく、初期需要を支え続ける政策の一貫性であり、その一貫性こそが最も脆く、最も守るべきものである。

2030年代前半に見込まれる海洋状況把握の国際展開は、機会であると同時に依存でもある。複数の国と監視の網をつなぐことは、日本の技術の販路を広げる一方で、相手国の政策や地域の情勢に左右される度合いを増す。国内で完結する事業とは異なる不確実性がここに加わるため、国際展開の設計には、技術の輸出だけでなく、関係の持続性を見据えた慎重さが求められる。広げることと、依存を抱えることは、表裏の関係にある。

総じて、海洋分野の実装は、短い期間で完結する事業ではなく、10年を超える長い工程として構想されている。足もとの実証、2030年代前半の生産と国際展開、2037年以降の分岐という3つの節目を、それぞれの前提とともに見据えながら、公共調達を軸に担い手を育て続けることが、この分野を産業として立ち上げる現実的な道筋である。短期の成果を急ぐのではなく、足もとの実証・2030年代前半の生産と国際展開・2037年以降の分岐という3つの節目の前提を、1つずつ点検しながら初期需要を支え続けることが、この長い工程を実現へと導く。

投資機会マップ(時間軸×確度)H1|近い将来H2|中期H3|長期海洋鉱物資源確度 低〜中海洋観測・自律探査確度 中ブルーカーボン・海洋環境クレジット確度 中海洋エネルギー確度 低〜中スマート水産養殖確度 中

図:この分野の有望な投資機会を、動き出す時間軸(近い将来・中期・長期)と実現の確度(棒の濃さ)で配置。左ほど早く動き、濃いほど確度が高い。

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勝ち筋は三本柱を相互依存の一体として育てる

政府が選んだ勝ち筋は、海洋無人機・海洋状況把握・革新的海底開発技術という三本柱に投資を集中し、公共調達を起点に国内の生産基盤を確立することにある。資源そのものの豊かさに賭けるのではなく、国が最初の買い手となって初期の需要をつくり、そこから産業を立ち上げる。この発想は、成熟した既存産業の延長ではなく、新しい領域を意図的に育てるための戦略であり、市場が自然に生まれるのを待つのではなく、需要を政策でつくり出すという能動的な姿勢に立っている。

第一の柱は産業化に近い海洋無人機

第一の柱、海洋無人機は、三本柱のなかでもっとも産業化に近い位置にある。南鳥島周辺のレアアース泥調査での活躍を通じて民間の活用が広がり、世界市場は2030年ごろに1.5兆円を上回ると見込まれる。ここで日本が3割の占有を狙えるのは、造船で培った深海の技術という土台があるからである。公共調達による初期需要が量産と価格低下を呼び、輸出産業へ育つという道筋が、この柱の核心にある。安全保障の用途で国が発注し、その規模が民間の量産を可能にするという循環が想定されている。

監査で復活した海洋状況把握

第二の柱、海洋状況把握は、監査の過程で当初の構想から抜け落ちていたことが指摘され、あらためて中心に据え直された領域である。広い排他的経済水域で、どこで何が起きているかを常時つかむ力は、無人機と海底資源開発の双方を下から支える土台にあたる。監視・海洋観測ネットワーク・各種センサ・衛星による海面監視・水中の音による監視を1つの網へ束ねることが、この柱を成り立たせる。技術は各所にあるが、それらを1つの監視の体系へまとめる作業が、これからの中心的な課題となる。

この柱が重要なのは、それが安全保障と資源開発を同時に支えるからである。海域の状態を切れ目なくつかむ力がなければ、無人機は安全に運用できず、海底の開発も進まない。海洋状況把握は、他の二本柱を機能させるための基盤インフラであり、単独の技術というより、分野全体を貫く神経系のような役割を担う。だからこそ、その担い手を機関の枠を越えて束ねる必要がある。土台が弱ければ、その上に立つ無人機も海底開発も安定して機能しえないからである。

第三の柱は革新的海底開発技術

第三の柱、革新的海底開発技術は、2つの資源系に分かれる。海底に眠るメタンハイドレートや海底熱水由来の資源では、鉱石を海面まで連続して引き揚げる連続揚鉱に世界で初めて成功した実績が、国内の資源機構によって積み上げられてきた。この成果は、掘り出す技術が実海域の段階へ進みつつあることを示し、公共調達を起点とした国産の資源開発の足がかりとなる。世界に先んじた技術の実績を、そのまま国産の資源産業へと接続できるかどうかが、この柱の勝負どころである。

もう1つの資源系である海底の鉱物資源は、監査の過程でその担い手の少なさから他の資源に統合され、扱いが薄くなっていたことが指摘された領域である。レアアース泥・マンガン団塊・コバルトを多く含む地殻といった鉱物は、革新的海底開発の独立した柱として立て直されるべきものとされた。南鳥島沖でレアアース泥を世界で初めて発見し成因を解明した研究を核に、探査から品位の計測、環境との共生までを束ねることが、この勝ち筋を支える。マンガン団塊が2030年代前半に生産段階へ入る見通しは、この立て直しの意義を裏づけている。

この戦略を機能させるうえで見落としてはならないのは、三本柱が単独では完成しないという点である。無人機は監視の網がなければ安全に動かず、海底開発は無人機による探査がなければ進まず、監視の網は資源開発という目的があって初めて投資が正当化される。3つは互いを必要とする関係にあり、いずれか1つだけを育てても産業は立ち上がらない。公共調達は、この相互の依存を束ねる資金の入口として機能する。

三本柱を貫くのは、資源量でなく、公共調達を起点とする産業化で海洋の経済性を読むという一貫した見立てである。無人機は初期需要から輸出産業へ、海洋状況把握は分野全体を支える基盤へ、海底開発は可能性を現実の生産へと変える出口へ。いずれも国が最初の需要をつくることで立ち上がる。資源に恵まれていることが優位なのではなく、その資源を産業へ変える体制を組めるかどうかが問われている。世界6位の排他的経済水域は、その体制を築いて初めて経済的な意味を持つ。

なお、政府の三本柱には含まれないが、海の温度差・波・潮の流れから電気を取り出す海洋エネルギーも、海洋再生可能エネルギーとして一定の位置を占める。これは勝ち筋の主役ではないものの、佐賀大学が海洋の温度差による発電の拠点を担うといった、大学の拠点整備の文脈に連なる参考の領域として整理される。だからこそ三本柱は、いずれか1つでなく相互に依存する一体として育て、その外側にある海洋エネルギーは参考枠にとどめる。選択と集中の輪郭を明確に保つこともまた、この戦略の重要な一部である。

NC1海洋無人機(AUV・ASV・自律機)分野横断6機関6名指し6名
NC2海洋状況把握(監視・観測ネットワーク・センサ・衛星海洋監視)分野横断6機関6名指し6名
NC3メタンハイドレート・海底熱水資源分野横断6機関6名指し6名
NC4海底鉱物資源(レアアース泥・マンガン団塊・コバルトリッチ)分野横断4機関6名指し6名
NC5海洋エネルギー(海洋温度差・波力・潮流)【三本柱外・参考】分野横断5機関6名指し6名

図:政府の勝ち筋(重点技術)ごとに編成した新研究クラスター。ドットはまたぐ既存分野の数参加機関の数(1つ=1)で、各チームがどれだけ分野・機関を横断して組まれているかを示す。

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06

勝ち筋の担い手ほど薄く分散する逆説がある

勝ち筋を実装するのは、最終的には人である。ところが海洋分野の担い手を見渡すと、その顔ぶれは政府が選んだ三本柱と大きくずれている。海洋にかかわる研究者は全体で約4025名を数え、そのうち氏名と所属で名指しできるのは約3147名にのぼる。しかしこの母集団は、生物・環境・気候といった観測系の研究に大きく偏っているのが実情である。海を記録し理解する研究は厚く、海から産業を生み出す研究は薄い、という不均衡がそこにある。

一方で、政府が勝ち筋に選んだ三本柱の担い手は、いずれも少人数ずつ、機関をまたいで散らばっている。名指しできる候補で数えると、海洋無人機はおよそ8名、海洋状況把握はおよそ9名、メタンハイドレートと海底熱水はおよそ9名、海底の鉱物資源はおよそ7名にとどまる。勝ち筋の中核を担う人材が、いずれも一桁台という薄さで存在しているのである。数百名規模の観測系の層とは対照的に、実装に直結する領域はきわめて手薄なまま残されている。

偏りは研究の歴史を映す

この偏りは、既存の研究の蓄積がどこに厚いかを映している。海洋を対象とした研究は、長らく生物多様性の保全や気候変動の影響評価、海洋環境の変動、大気と海洋の相互作用といった観測・記録の系統で発展してきた。数百名規模の人材が集まるのはこうした領域であり、資源開発や無人機、監視といった実装に直結する系統は、相対的に手薄なまま残されてきた。長い研究の歴史が、そのまま現在の人材の偏りを形づくっている。

その厚みを具体的に見れば、生物多様性の保全やゲノムの解析にかかわる領域には900名を超える研究者が、気候変動の影響評価や海洋環境の変動にかかわる領域にも数百名規模の担い手が集まっている。これに対し、海洋物理や数値のモデリングといった産業化に近づきうる領域でも百名前後にとどまる。数の重心が観測と記録の側に大きく寄っていることが、母集団の構造そのものから読み取れる。

強みは機関ごとに閉じている

この分野を牽引してきた中核の機関を見ると、深海の探査船と自律型の無人探査機を擁する海洋研究開発機構が司令塔の位置にある。レアアース泥の発見と成因の解明を主導したのは東京大学であり、海底熱水鉱床の連続揚鉱に世界で初めて成功したのは国内の資源機構であった。海の温度差から電気を取り出す発電では佐賀大学が、クロマグロの完全養殖では近畿大学が、それぞれ拠点を担ってきた。深海資源・海洋エネルギー・養殖という強みが、組織ごとに分かれて存在している。

問題は、こうした強みがそれぞれの機関のなかに閉じて、分散したまま残されていることである。深海資源、海洋エネルギー、養殖という異なる強みは、産業化という1つの目標のもとで結び付けられておらず、無人機を支える音響測位や機械学習、形状の最適化といった要素技術も、個別に孤立している。連携の核となりうる知見は、海洋研究開発機構・東京大学・資源機構の深海探査と海底資源の研究に集まっているが、それらが束ねられて1つの流れになっているわけではない。

束ね直しに勝機を求める

したがって、人材の面で取るべき方策ははっきりしている。観測系に偏った母集団をそのまま活用するのではなく、三本柱に沿って、少人数ずつ散らばる担い手を機関横断で束ね直すことである。既存の厚い層をあてにするのではなく、薄いながらも実装に直結する研究者を名指しで見つけ出し、異なる組織と分野をまたいで新しいチームへ編み直す。数の多さではなく、組み合わせの新しさに勝機を求めるという発想である。次章では、その具体的な組み合わせを、名指しで提示していく。

この編み直しが有効なのは、実現に必要な要素技術が、必ずしも海洋を専門とする研究者だけに宿るわけではないからである。機械学習、制御、材料、情報といった隣接する分野の知見が、無人機や監視の技術を前へ進める。海洋の内部だけで人を探すのではなく、隣接する分野から実装に効く人材を引き入れて組み合わせることで、薄い担い手層を補い、新しい研究の流れを起こすことができる。海洋という枠を狭く引かないことが、束ね直しを実効あるものにする条件である。

この編み直しには、単に人を集める以上の意味がある。異なる機関、異なる分野の研究者を組み合わせることで、これまで交わらなかった知見が接し、要素技術が1つの実装へと結び付く可能性が生まれる。観測に偏った層の厚さを嘆くのではなく、隣接する機械学習・制御・材料・情報の分野からも現場に効く人材を引き入れ、薄い担い手層を戦略的に編成し直すこと。人材の偏りは、束ね直しの設計次第で克服できる課題であり、それが公共調達を起点とする産業化を人の側から支える鍵になる。

研究者の偏在(既存の研究まとまり別・人数) 生物多様性保全・ゲノム解析 923名 (23%) 気候変動影響評価・持続可能な農業 391名 (10%) 気候変動影響・環境化学 346名 (9%) 海洋環境変動・大気海洋相互作 212名 (5%) 古環境復元・微細構造解析 174名 (4%) 分子生物学・免疫学 162名 (4%) 地理情報システム(GIS)・リモートセンシング 129名 (3%) 数値シミュレーション・振動制御技術 121名 (3%) 0461923(名・全体比%)

図:この分野の研究者が既にどの研究のまとまりに集中しているか(人材の偏在)。最上段が最も人が集まる核で、全体の約23%を占める。勝ち筋に沿う機関横断チームは、この偏在をまたいで新たに編成する。

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07

薄い担い手を機関横断で名指しに束ね直す

ここからは、三本柱に沿って束ね直すべき研究者の組み合わせを、名指しで提示する。海洋にかかわる約4025名のうち名指しできる約3147名を母集団とし、確認済みの共著の記録に組み合わせが存在しない、つまりまだ一緒に研究したことのない顔ぶれを、機関をまたいで束ねる。ここで挙げるのは、氏名と所属、同定の確からしさで裏づけられた実在の研究者のみであり、氏名を創作したり、確認できない個人の情報を用いたりはしていない。

第一の編成は海洋無人機を担う

第一のチームは、海洋無人機を担う機関横断の編成である。海の中で音と機械学習を組み合わせて高精度の自律機の航法を拓く海洋研究開発機構の渡邊佳孝を軸に、自律型の海洋ロボットによる協調点検を手がける防衛大学校の平雄一郎、触覚を共有する制御で水中ロボットの自動化に挑む龍谷大学の坂上憲光、自動設計で機体の形状を最適化する日本工業大学の山縣広和、水中ロボットで高速の3次元海底地図をつくる沖縄工業高等専門学校の武村史朗が加わる。

この6名を束ねる狙いは、音響による測位、協調の制御、形状の最適化、地図の作成という要素技術を、公共調達を起点に自律機を国産の産業へ育てるという1つの勝ち筋のもとで、実装可能な1台の機体へ統合することにある。東京科学大学で小型化により高精度な測位を追う研究者も含め、6つの機関にまたがるこの組み合わせは、これまで共著の記録に現れたことがない新しい顔ぶれである。海洋研究、防衛、情報、地図作成という異なる背景が、無人機という一点で交わる。

第二の編成は海洋状況把握を新設する

第二のチームは、当初の構想から抜け落ちていた海洋状況把握を担う編成である。データ同化の技術で沿岸環境の未来を解き明かす海上・港湾・航空技術研究所の松崎義孝、水中に音を伝えて津波防災をいち早く実現する防災科学技術研究所の高橋成実、衛星による観測で水環境の保全を革新する横浜国立大学の比嘉紘士、海洋観測技術で南極海の環境変動を解明する海洋研究開発機構の小林大洋を核とする。

ここに、海洋観測システムで気候変動の予測を拓く京都大学の研究者、水中の音による観測で絶滅の危機にある種の保護を革新する研究者が加わる。監視・観測ネットワーク・衛星・水中の音という散らばったセンサと観測技術を、海域を切れ目なくつかむ1つの網へ束ね直すことが、6つの機関にまたがるこのチームの狙いである。海洋状況把握が他の二本柱を支える基盤であることを踏まえれば、この完全欠落からの新設がもつ意義は小さくない。

第三と第四の編成は海底資源を担う

第三のチームは、メタンハイドレートと海底熱水由来の資源を担う編成である。粘り気のある土に含まれるメタンハイドレートの生産技術を開発する鳥取大学の海老沼孝郎、海底熱水を活かして二酸化炭素の削減とメタンの起源解明に取り組む琉球大学の土岐知弘、海底熱水鉱床の貴金属資源を解明する秋田大学のAGANGI ANDREA、環境の変化がメタンハイドレートの動きに与える影響を解く北見工業大学の南尚嗣、熱と物質の移動を解析して安全な資源利用を図る東京大学の今野義浩を束ねる。

この編成は、生産の技術、熱と物質の移動、分子の解析、資源の起源という、これまで別々の機関で進められてきた知恵を持ち寄るものである。海底熱水鉱床の連続揚鉱に世界で初めて成功した実績を土台に、公共調達を起点とした国産の資源開発へ育てることを狙う。福島県立医科大学で触媒とメタンハイドレートから持続可能な社会を構想する研究者も含め、6つの機関のまだつながっていない強みを結び直すことで、点在する研究を1つの資源開発の流れへとまとめようとしている。

第四のチームは、監査で扱いが薄いと指摘され、独立した柱として立て直された海底の鉱物資源を担う編成である。南鳥島沖でレアアース泥を世界で初めて発見し成因を解明した東京大学の加藤泰浩を核に、海底資源の探査とマグマ生成の過程を統合して解析する千葉工業大学の町田嗣樹、生き物の力を借りて海底資源の環境共生技術を拓く東京海洋大学の淵田茂司、深海の環境科学で持続可能な海底資源開発を目指す高知大学の野口拓郎、鉱石の品位を計測する革新的な技術に挑む海上・港湾・航空技術研究所の中島康晴が加わる。

同位体の分析で海底資源の形成を探る関西学院大学の研究者も含めたこの6名は、探査・成因・環境影響・品位の計測という発見から生産までの工程を、機関をまたいで1つに結ぶ編成である。レアアース泥を発見した機関を核に据えることで、日本が世界に先んじた発見を、国産の海底鉱物開発という産業へ接続する道筋を描く。マンガン団塊が2030年代前半に生産段階へ入る見通しを踏まえれば、この救い上げの意義は小さくなく、独立した柱として立て直す判断を裏づけている。

第五のチームは、三本柱には含まれない参考の枠として整理された海洋エネルギーの編成である。海の温度差・波・潮の流れから電気を取り出すこの領域は、佐賀大学の有馬博史による熱交換器の解析を軸に、物理法則と機械学習を融合して海洋エネルギーを解析する大阪公立大学の檜垣岳史、波力発電で持続可能な海洋エネルギーを拓く東海大学の田中博通らが名を連ねる。あくまで勝ち筋の主役ではなく、海洋再生可能エネルギーとして束ねうる範囲を参考に示すものであり、三本柱との優先順位の差を明示したうえで整理している。

これら5つの編成に共通するのは、少人数ずつ機関に散らばる担い手を、確認済みの共著の記録に存在しない組み合わせで結び直す点である。海洋無人機はおよそ8名、海洋状況把握はおよそ9名、メタンハイドレートと海底熱水はおよそ9名、海底の鉱物資源はおよそ7名という薄い母集団から、それぞれ異なる機関の研究者を選び出している。数の少なさを、組み合わせの新しさで補うという設計思想が、全編成を貫いている。

以上の5つのチーム、計30名・26機関の組み合わせは、いずれもこれまで共著の記録に存在しない新しい顔ぶれであり、全75通りの組み合わせが機械的に新規と確認されている。ここで示した連携はあくまで将来へ向けた仮説であり、その隣接する領域がすでに本人の連携先や所属機関のなかで足りている場合には、提案は取り下げられるべきものである。名指しは実在の研究者に限り、氏名以外の個人情報は用いていない。ここで示した組み合わせは、生成とは別の立場から独立に検証し、当事者と機関が選び取るための出発点として提示するものである。

機関横断マトリクス(新チーム×参加機関・周辺合計つき)新チーム \ 参加機関国立研究開発法人防衛大学校(総合龍谷大学東京科学大学日本工業大学沖縄工業高等専門国立研究開発法人国立研究開発法人横浜国立大学京都大学独立行政法人国際鳥取大学機関数NC1 海洋無人機(AU6NC2 海洋状況把握(監6NC3 メタンハイドレー6NC4 海底鉱物資源(レ6NC5 海洋エネルギー(6関与チーム数211111311111

図:新研究クラスター(行)が、どの機関(列)の研究者を含むかの分割表。行末「機関数」が大きいチームほど機関横断が広く列下「関与チーム数」が大きい機関ほど複数チームに関わる要の機関。(機関は関与の多い上位12件を表示)全リストは下表と詳細ページを参照。

新クラスター名指しした研究者(所属)
NC1海洋無人機(AUV・ASV・自律機)渡邊 佳孝(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、平 雄一郎(防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群))、坂上 憲光(龍谷大学)、章 ふぇいふぇい(東京科学大学)、山縣 広和(日本工業大学)、武村 史朗(沖縄工業高等専門学校)
NC2海洋状況把握(監視・観測ネットワーク・センサ・衛星海洋監視)松崎 義孝(国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所)、高橋 成実(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、比嘉 紘士(横浜国立大学)、竹内 謙介(京都大学)、能勢 義昭(独立行政法人国際協力機構(緒方貞子平和開発研究所))、小林 大洋(国立研究開発法人海洋研究開発機構)
NC3メタンハイドレート・海底熱水資源海老沼 孝郎(鳥取大学)、高橋 信夫(福島県立医科大学)、土岐 知弘(琉球大学)、AGANGI ANDREA(秋田大学)、南 尚嗣(北見工業大学)、今野 義浩(東京大学)
NC4海底鉱物資源(レアアース泥・マンガン団塊・コバルトリッチ)町田 嗣樹(千葉工業大学)、加藤 泰浩(東京大学)、淵田 茂司(東京海洋大学)、野口 拓郎(高知大学)、桑原 佑典(関西学院大学)、中島 康晴(国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所)
NC5海洋エネルギー(海洋温度差・波力・潮流)【三本柱外・参考】有馬 博史(佐賀大学)、檜垣 岳史(大阪公立大学)、ガルシア・ノボ パチ(長崎大学)、田中 博通(東海大学)、村田 一城(国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所)、高尾 学(松江工業高等専門学校)
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08

見立てが外れる反証条件を節目ごとに確認する

見立てが外れる反証の条件

ここまで描いてきた見立ては、いくつもの条件のうえに立っている。最後に、この見立てが外れる反証の条件を明示しておきたい。第一に、海洋無人機の世界市場が想定した1.5兆円規模に届かず、日本の3割という占有目標が過大であったと判明する場合。第二に、海底の鉱物やメタンハイドレートを掘り出す技術が採算に乗らず、生産段階への移行が見込みより大きく遅れる場合である。いずれも、勝ち筋の前提そのものを揺るがしうる。

第三の反証条件は、国際的な採掘ルールの帰趨にかかわる。公海の深海底資源を管理する国際的な枠組みの採掘規則は、2025年の会期でも採択に至らず、モラトリアムを支持する国が30か国を超えている。米国は国連海洋法条約を批准しないまま独自の許可を進め、EUやノルウェーは深海採掘に慎重な姿勢を強めている。採掘のルールが定まらなければ、可能性は市場へ転化しない。この不確実性は、いくら技術が進んでも、その側だけでは解消されない性格のものである。

第四に、束ね直すべき研究者の組み合わせが、実は本人の連携先や所属機関のなかですでに足りている場合には、機関を横断して束ねる意義そのものが失われる。人材の面での勝ち筋は、あくまで担い手が薄く分散しているという前提のうえに成り立つ。前提が崩れれば、提案は取り下げられるべきものである。ここで示した連携はすべて仮説であり、これらの反証条件を節目ごとに確認する姿勢こそが、投資判断を誤らせないための要となる。

短期・中期・長期の三段の打ち手

こうした不確実性を踏まえたうえで、短期・中期・長期の3段で取るべき打ち手を整理する。短期には、すでに実海域で使われ始めている海洋無人機に公共調達を継続的に投じ、量産と価格低下の起点を確かなものにすること。同時に、当初の構想から抜け落ちていた海洋状況把握を、機関横断のチームとして立ち上げ、分野全体を支える基盤づくりに着手することである。土台となる監視の網を早く築くほど、他の二本柱の実装も安定する。

中期には、2030年代前半に見込まれるマンガン団塊の生産段階入りと、海洋状況把握の国際展開に備え、探査から品位の計測、環境影響の評価までを一貫して担える体制を整えること。ここでは、生産の技術と環境への配慮を両立させることが条件となり、どちらか一方だけが先行しても産業は立ち上がらない。三本柱が相互に連携する体系へと組み上がるよう、人材の束ね直しを構想の段階から実装の段階へと進める必要がある。

長期には、2037年以降に予想される深海の採掘と海洋保護の分岐に向けて、いずれの道へ振れても対応できる柔軟さを保つこと。掘る技術を確立しつつ、環境保護を優先する国際世論にも応えられる知見を蓄えておく。技術と国際ルールと世論のいずれもが結果を左右する以上、単一のシナリオに賭けるのではなく、複数の道に同時に備える構えが求められる。分岐の方向が定まってから動くのでは、すでに手遅れになりかねない。

三段を貫く条件は環境との両立

3段の打ち手を貫く共通の条件は、環境との両立である。海底の資源開発は、深海の生態系に不可逆の影響を与えうるため、掘る技術の確立と並行して、影響を評価し抑える仕組みを育てなければならない。環境への配慮を後回しにした産業化は、国際世論と国内の合意の両面で行き詰まる。技術・制度・環境の3つを同時に前へ進める設計が、10年を超える長い工程を通じて求められ続ける。3つのうち1つでも欠ければ、産業化の歩みはどこかで止まりかねない。

研究者の束ね直しについても、中立の立場から但し書きを添えておきたい。本レポートが名指しした組み合わせは、あくまで将来の連携を促すための仮説であって、当事者の合意を前提とするものではない。実際に束ねるかどうかは、当人たちの意思と、機関の判断に委ねられる。提案はあくまで出発点であり、それを検証し、選び取るのは現場の側であるという原則を、改めて確認しておきたい。名指しは実在の研究者に限られ、氏名以外の個人情報には踏み込んでいない。

最後に、本レポートは特定の立場を代弁するものではなく、審議の記録と研究者のデータに実在する事実のみを土台としている。海底の資源開発には、環境への影響や国際的な合意の形成という、慎重に扱うべき論点が数多く含まれ、それらを軽視すれば産業化そのものが立ちゆかなくなる。日本の海洋分野の勝ち筋は、資源に恵まれていることではなく、公共調達を起点に、散らばる技術と人材を束ね直して産業を組み立てられるかにかかっている。その一点を、見通しの中心に据えておきたい。

産業創造プロセスで読む — この領域はいま、どの相にあるか

ICFMは、産業の誕生を6つの相と発火前の基盤成熟で捉える枠組みである。海洋の5産業を読むと、両面律速(知見×統合が同時に空く)が3つを占め、17領域の中でも産業創造の「これから」が最も色濃く残る領域であることが分かる。

成熟→次世代核 2 両面(知見×統合) 3
産業(IIDB)律速軸F / Q / R最大のボトルネック
漁業両面(知見×統合)0.8 / 0.15 / +1.8分散漁業者を束ねTAC/IUU管理を実効化する統合的管理主体の不在+天然資源枯渇という外部限界。
養殖業成熟→次世代核1 / 0.89 / +6.3陸上養殖・ゲノム編集の次世代軸に流入する異業種資本と既存養殖研究を統合する設計の未確立=成熟→次世代の再編統合。
スマート港湾・海運物流成熟→次世代核1 / 0.93 / +6.5律速なし。サイバーセキュリティ・脱炭素の高度化が焦点。
自動運航船・船舶DX 両面(知見×統合)0.6 / 0.93 / +4.3両面(material=0+demand=0)。安全クリティカル基盤の標準化と商用運航への実需接続が同時律速。
洋上風力発電 両面(知見×統合)0.6 / 0.42 / +2両面軸。浮体式の物質・材料(SEP船/大型基礎/動的ケーブル/港湾)と統合点(一体設計・量産・標準化の担い手)が同時律速

漁業は統合点の質Q=0.15と全産業の中でも際立って低い。資源評価・海洋生態の研究網は世界水準なのに、分散した漁業者を束ねてTAC(漁獲可能量)やIUU(違法漁業)管理を実効化する統合的管理主体が不在で、そこに天然資源の枯渇圧という外部限界が重なる。自動運航船・船舶DXは相2(前提集積)から相3(流動)への移行段階にある萌芽産業で、Kongsberg(首位8.2%・3万隻)や日本の16-30社連合という統合者は既に存在するのに、商用国際航海で自律運航する船は現時点で0隻——安全クリティカル基盤の標準化と、認証・保険・港湾受入を束ねた実需接続が同時に空いている。IMO強制コードが発効する2032年までの約6年が選別期となる。

洋上風力発電は着床式=成熟、浮体式=相2形成という二層構造で、F=0.6・Q=0.425。産業創造の焦点である浮体式は、SEP船・大型基礎・動的ケーブルという物質面と、造船・海洋・電力・港湾を集約して標準化・量産を担う統合組織の両面がボトルネックになっている。判定上の「基盤が厚い」は寛容な閾値による誤振れであると、診断データ自身が注記している点も重要である。一方、養殖業は成熟でありながら、陸上養殖への210億円流入やリージョナルフィッシュの40.7億円調達が示す通り、陸上養殖・ゲノム編集が異業種資本を呼び込む拡大局面にあり、成熟→次世代の橋渡し設計が課題となる。

研究者供給の厚みと薄さ — 応用分野別(31.1万人版:本体235,521+サブ76,054)
自律・無人173人
この領域に対応する応用分野の研究者は計 約173人。 海洋は独立field_classがなく、自律・無人/エネルギー(洋上風力)等に分散。出典:研究者知識基盤 field_class 分類(本体は精緻分類、サブ層はOpenAlex研究内容・所属学科から分類)。

海洋には研究者分類上の独立field_classが存在せず、31.1万人版(本体235,521人+サブ76,054人)でも自律・無人173人など複数の分類に分散して現れる、と診断データは正直に記している。領域の研究者供給を単一の数字で語れないこと自体が、海洋という産業群の学際性——造船・海洋構造・水産・エネルギー・自律制御にまたがる——と、政策の領域区分と研究分類の不一致を示している。

産業構成しうる実在研究者(役割・所属分野)
自動運航船・船舶DX田房 友典(核)
洋上風力発電武内 崇晃(核)、サハレ アヌラグ・ラフル(核)、富澤 徹弥(核)、田中 謙司(統合)、原 尚之(統合)

名指しした研究者は研究者データベースおよび機関公式ディレクトリで実在・所属を照合済み(捏造ゼロ)。役割は核(中核知の担い手)/橋渡し(分野間のつなぎ役)/統合(産業全体を束ねる担い手)。

この領域では実名の研究者クラスターが既に2つ描ける。浮体式洋上風力では、低コスト浮体式の革新設計を担う田中謙司と浮体分散最適制御の原尚之を統合役に、係留疲労の武内崇晃、浮体構造・耐震基礎設計のサハレ アヌラグ・ラフル、金属疲労・長寿命化の富澤徹弥を結ぶ浮体式統合クラスターである。自動運航船では、小型船舶安全管理システムの田房友典ら操船・制御の研究者を、認証・保険・運用の実装知と結ぶ編成が求められる。漁業は水産資源管理×データ基盤×制度設計のトレーサビリティ統合、養殖は育種学(ゲノム編集)×環境工学(陸上養殖)の橋渡しが構成対象となる。両面律速の3産業はいずれも「担い手の設計」が最重要であり、中立の場が統合点形成に効く典型である。ただし浮体式のデータは収集被覆40%のpartialであり、判断は継続的な更新を前提とするという限界を付しておく。

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本サマリーは要点と全体像を示すものです。各テーマの一次資料・数値・出典・全リストは、詳細ページ「海洋 詳細」でご確認いただけます。

出典・作成:本サマリーは内閣官房「日本成長戦略」関連の公表資料(議事要旨・政府目標・配布資料)および公開された学術・産業データに接地して作成した編集物であり、政府の公式見解ではありません。新研究クラスター構成案の名指し研究者は、研究者データベースおよび機関公式ディレクトリで実在・所属を照合しています(捏造ゼロ)。数値は生成時点の実データです。